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「かんがへて」

かんがへて飲みはじめたる一合の
二合の酒の夏のゆふぐれ


平井康三郎の歌曲集
《酒の歌四章》の二番目の曲。

この歌はチクルス全四曲の中でも
一番私の好きな曲だったりする。

「うーん、酒は飲みたいけど
 健康も気になるしなあ、
 ちょっと身体も重たいし
 今日は一合にしておくか
 明日も仕事あるしね」

などと殊勝なことを考えていても
いざ酒を飲み始めると
どうもこれだけじゃ収まり切れない。

一応、飲みだした時は
「今日は一合!それっきり!!」
と固く決心しているのだが、
それで終わらないのが
「呑んべ」というもの。

「ううむ」と唸りながら
一合の酒を呑みきり

「ああ、飲み切ってしまった!
 しかも変にセーブして飲んだから
 美味しさも半減してしまった!!
 これはイカン!
 仕切り直さねば!!」

・・などと自分に言い訳しつつ
次の一合に手を出してしまう。

・・・ワハハ、
典型的な「ダメダメ親父」です。
克己心も何もあったもんじゃない。

でも、
二合めに手を出した時の
幸福感というか何というか・・

「やっぱ酒量とか健康とか、
 そんなチマチマしたことは
 全て綺麗に捨て去って、
 大らかに、
 ただ一念に飲んでこその
 酒というものだ!
 漢というものだ!」

・・・などという居直りが
カッコよかったりするものなのだ。
(あくまで呑んべ視点において)

曲の前半の苦渋感、

そして後半、
二合めに手を出してからの
この開放感!

平井康三郎の技というか
才の凄さが際立っている一曲である。

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