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2020年夏における調査報告①

 世の中にはいろんなお仕事がある。ある人からどこどこに勤務していると聞いたとして、そのどこどこの事業内容から直接思い浮かぶそのままの職種にその人が就いているとは限らない。もっと言えばそんな職種があるの?その事業でその職種って具体的に何する仕事なの?なんて頭を捻ることも度々だ。
 
 今回お話を伺う事になった堀江さんもそのお一人である。堀江さんとは例のマクドナルドラジオ大学に関わったときに知り合った。
 彼女は美術館のスタッフだ。漠然と美術館の人という認識で接していたのが、ある日昼食をご一緒したときに彼女が何気に発した「コーディネーターやってると」という一言に、俺様は過剰に反応したのである。コーディネーター?美術館のコーディネーターってなんだ?何をコーディネートするんだ?と。
 それ以前から度々聞いていた、料理好きが高じて簡単なレシピ本を作っているというお話と共に、堀江さんの人となりに対して興味が俄然高まった。 
 しかし、そんな興味深い話題を個人的にお聞きするのもなんだかもったいない。そこで研究所だ。ドリサカ研究所である。俺様ともう一人で共同所長を務める二人だけの研究所。研究対象は「どうかしている人やもの」である。堀江さんはまさに調査研究対象としてうってつけであった。ということで、聞き取りを開始した。

 香林坊からバスに乗り、金沢駅方面を経由しておよそ30分。終点・金石のバス停で降りる。金石という町は金沢の西側海沿いに位置する。かつて宮腰と呼ばれていた頃は、北前船の発着地でもあり、鎖国政策真っただ中の江戸幕府治世下にあって、海外との貿易も行っていたと言われる豪商・銭屋五平衛の本拠地でもあった。


 バス停やバス停に隣り合うスーパーの周りを流れるどぶ川に目をやると、大勢の魚が普通に泳ぎ回っている。近頃見かけない光景に驚く。

 
 金石バス停から日本海を目指して徒歩5分。


 砂浜とフェンスで仕切られた海沿いの道路脇にこの日の目的地があった。


 金沢21世紀美術館・金石スタジオと名乗るボロ木屋があるのだ。

 そう、どう好意的に表現しようと努力しても無駄だ。ボロ木屋はボロ木屋なのである。


 そのボロ木屋然とした外観に比べ内部は幾分整理されているが、全体としてはボロ木屋という印象は拭えない。敢えてこうしているようにも思える。それは置いて今日この地にやって来たお目当てが既に姿を現していた。

 ボロ木屋もとい金石スタジオ前に張られた一基のテント。金石スタジオがこの夏からしばらくの間、企画開催する週末屋台だ。週替わりで屋台のメニューも店長も入れ替わる。この日は週末屋台企画のスタートアップのためだろう、美術館スタッフである堀江さんが屋台を担当している。堀江さんが担当する屋台は「レモン屋」。

 名前の通りレモンのバラ売りだ。サービスとして堀江さんお手製のレモンを使った料理のレシピプリントが料理のメニューごとにコピーされて渡される。

「豊島には大きい病院がなく、高齢化が進んでいるためコロナ感染の広がりを避けるため、緊急事態宣言中は豊島に観光客が入れない状況でした。レモンが実る一年の中で最もいい季節に、観光客が途絶えてしまい、レモンが収穫されないまま地面に落ちてしまっていました。
 あまりに悲しい状況を目にして、何かできることはないかな、と思って、4月にレモンを購入し始めたのがこのレモン屋さんの始まりです。」(堀江さん)
 


 ということらしい。そもそも豊島(香川県)と堀江さんの関わりはどのようにして始まったのか、という疑問も浮かんできた。次回その事について、堀江さんに伺う。



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