見出し画像

小言

私の息子はただいま中学3年生である。受験受験とハッパをかけたり小言を言ったりしたほうがよいのかもしれないのだが正直なところ毎日が慌ただしい家庭なのでお構いなしである。週末の予定をアナウンスすると時たま「忘れてるかもしれんけどボク受験生やけん」と言われる始末。「そりゃごめん。移動中とか空いた時間に勉強してくれ。あ、ついでにご飯四合炊いといてー」と誰もそんなの配慮しない家庭環境である。

上の娘の受験時も同じだったが我が家は定期テストの前でも模試の前でも夏期講習の途中でも演奏会やリハーサルがあればそちらが優先になるし、演奏旅行へももちろん行く状態である。子ども達に勉強道具を持っていけと言っても息子は持って行くがやらない。娘は忘れたフリで持っていかなかったり実際のところそんな時間があればバイオリンを弾くか友人と過ごすかなので意味なし、である。

そんな姉を見ているせいか、息子も我が道を行く態度を今の所貫いている。先日、定期テスト前日に中身いっぱいの重い紙袋を持って帰ってきたので何事か、と問うと友人がマンガを貸してくれたという。もちろん勉強そっちのけでマンガに「ボクまっしぐら」である。ああなんと良いタイミングで貸してくれたものよ。と思ったがこれがなかったら別のマンガに走るだけなのでおんなじだな、と思いつつ一応「テスト明日からやけんね」と小言だけは言っておいた。

マンガといえば彼はバレエもやっているので、男子が主役のバレエマンガも好きである。マンガを読んで研究し、レッスンに行ったりするので、あれは教科書だと思って小言を控えめにしている。先週末に舞台で踊っているのを見たのだが読み込んだ成果が表れていた。「かっこええなあ、手足が長くみえて釜爺みたいだったわ」とベタ褒めしたが言葉選びを間違えていたようで「その例えは嬉しくないわ」とのこと。菅原文太の声だそ、いい役だぞ、と思ったのだが相手の望むように褒めるのは難しい。

これもまた舞台に出るにあたって勉強そっちのけでマンガを読む、みたいな状態だったが、今回は勉強の小言の出る幕なし。言われる前に終わらせていたのは珍しいことだった。ちょっと物足りなかったので「その本、全部本棚に戻しときなさいよ」と言っておいた。

結局のところ小言なんてノイズでしかない、という話である。特に高校生の娘を見ていると好きなことを好きなようにやって小言も適当に聞き流す能力を身に付けた最強女子である。大学受験に臨む時が来てもこの感じなんだろう。勉強云々の小言はもう終わりだ。残るは「早く寝なさい」「お弁当箱出しなさい」「体操服出しなさい」ぐらいしか残っていない。

ものたりない。

では、また。ごきげんよう。