推しを信じて三千里〜中編〜


※後編につながる小説だと思って読んでください。




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ある日の事でした。



私の推しが、

ヨコハマ映画祭で新人賞を受賞しました。

それはそれはめでたい出来事でした。






ヨコハマ映画祭の授賞式は、
先着順で、誰でも入れて鑑賞できる形式だったので、




もちろん、当時の琴音少女は

始発バスで家を飛び出て
始発電車で埼玉を駆け抜け、横浜に向かいました。







無事2列目センターで
授賞の瞬間を見届ける事が出来た琴音少女(17)



授賞式も終わり、



さて帰るか…、と外へ出ると







関係者入り口に群がる人、人、人。







「あぁ、出待ちか…」

出待ちはなんか、卑怯な気がするよなあ、、、と、

その場をスルーして、出口へ足を進める琴音少女。






そんな琴音少女に、

もう一人の私。

堕天使琴音が語りかけた…







「いいじゃない、みんな居るんだから、とりあえず出待ちしてみなって。大丈夫だよ、みんな居るんだから。」







ウッッッッ!!!!!!!!(頭を抱える)





琴音少女と、堕天使琴音

私の中で闘い始めたのだ…


割と闘った。

FF7の、クラウドとセフィロスくらい。
結構死闘を繰り広げたよね。。。







葛藤の末

その場の勝利を収めたのは







堕天使琴音(17)だった。





タシロス!!!!!!!!!

(通じる人には通じるFF7ネタ↑)







堕天使琴音は、
スタスタと関係者入り口まで戻り、


人の群れに紛れ込んだ。





出待ち反対派だった私が、

初めて出待ち行為をしてしまった
人生でたった一度の日となった。





人の群れに入って息苦しい時間を

30分ほど過ごした位だろうか。


ついに、スタッフらしき人が重い扉を開けた。



目に輝きが宿る人々。




だけど、
そこからしばらくは機材の搬出だった。



人々も飽きた頃だろうか、

チラホラと帰り始める人も出てきた。




琴音少女も、
正直、内心「もう帰りたい」と思っていた。





「さ、もう諦めて帰るか…」と、
踵を返そうとした瞬間、、、




人々が湧いた






キャーーー!!!!

○○○くん!!!!キャーーー!!!!!







振り返ると、そこにはがいた。


私の憧れた、
一人の少年(18)が、目の前に。居た。




圧倒されて声も出なかった私は、

その瞬間、人々に揉みくちゃにされた。




彼の姿もちゃんと認識出来ないまま、



——ああ、届かない。


私は声すら出せない。



手なんて以ての外。


——このまま人々の渦に巻き込まれて、ヲタクの沼へと引きずり込まれるのだろうか。








そんなの嫌だ!!!!!!!!






そう思った瞬間だった。












「 真宙くん!!!!! 」






声が出ていた。





周りの人々の歓声が、何故か聞こえなくなる(という都合のいい自分の世界に入り込んでいた)。




琴音少女は、勝手に急に恥ずかしくなって、



「あぁ、やってしまった…」

と思った。







その時だった。





私の目の前に、

華奢だけど男らしくガッシリとした、
大きな右手が差し伸べられた。







ふと、顔を上げると、






そこには

憧れの彼がいた。



正直、今でも、信じられない。


これは私が、勝手に捏造した妄想話だったのではないかと、今でも思う。





でも、紛れもなく現実だった。

私の右手を、両手で優しく包み込んでくれたのは





大好きで、憧れの

高杉真宙くんだった。





焦りに焦った琴音少女は、


何か言わなくちゃ…!何か言わなくちゃ…!!


と、何か言わなくちゃオバケに追われて

咄嗟にこんな事を言ったのだ。







「いつか共演できる女優さんになります!!!!」






この時ばかりは、本当に周りが静寂に包まれていた。





何故なら、

たくさんいる人の中、
彼が握手をしてくれたのは、



私だけだったからだ。






周りの事なんて気にする余裕なんてもちろんなく、

口からはそんな漠然とした夢が語られていた…





でも、私が感動したのはこれで終わりじゃなかったんです。





この、一人の夢見る少女の
突拍子も無い馬鹿げた発言に対しての、彼の返答が



一生あなたを追いかけ続けます。



と、心に誓った最大のキッカケでした。










「僕も、頑張ります。お互い頑張りましょうね!!」(私を真っ直ぐ見つめる瞳)






、、、、、、、、、、






全琴音が震えた……





その後すぐに、彼はマネージャーと共に車に乗り込んで、その場から姿を消した。



散り散りと去っていく人々。


人々は私の顔をチラチラ見ていたが、



私は、そんな事すらどうでもよくて


しばらくその場から動けなかった、
事を覚えている。








その日から。


琴音少女には、揺るがぬ夢が出来た。



それからというものの、

何か悲しい事や辛い事があっても、


「大丈夫、絶対同じ土俵に立つんだ。」
「大丈夫、わたしにはゴールがある」
「大丈夫、絶対共演できるから。」


と、自分に語りかけ続け、

色々な事に挑戦し、乗り越える事が出来てきた。





彼の背中はどんどんどんどん遠くなる一方だけど、


そのおかげで、私にとってのゴールまでの道のりも、

どんどん遠ざかって、


たくさんの喜怒哀楽、茨の道を経験することが出来ている。









簡単に叶う夢じゃ、つまらない。





推し高杉真宙を訪ねるために




琴音少女は、


これからも、走り続ける。。。






to be continued...




※夢話のようだけど、これは本当の出来事です。



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