さやみるきー(と秋元康)が最後に仕掛けた爆弾のこと

推しの忘れられないステージってありません?

そりゃ推しの一挙手一投足はあれもこれも忘れられないんですけど
遠くからステージを見て頭がシビれるくらい感動して、帰ってもTwitterでオタクと死ぬほど盛り上がって、その夜は興奮して眠れなくて、DVDもすり減るんじゃないかってほど見て、もうこれ走馬灯に出てくるんじゃないか?っやつ。
私はこれ、2018年10月26日の山本彩卒業コンサート「SAYAKA SONIC ~さやか、ささやか、さよなら、さやか~」で、渡辺美優紀ちゃんがステージに現れた瞬間なんですよね。

山本彩ちゃんの卒業コンサート、みんなが「運命の人」みるきーの登場を期待する中、渡辺美優紀卒業シングル『僕はいない』のイントロが流れ、会場のボルテージはMAX、いつもは美優紀ちゃんが歌っていた歌い出しソロを彩ちゃんが歌い上げ「!!?????」となったところへ、天から降りてきたヴィーナスのように現れる渡辺美優紀…。

なぜこのステージが忘れられないのか。そりゃ私が渡辺美優紀推しで、さやみるきーが大好きで、この二人がもう一度並び立つのを待ち望んでいたからです。はー最高。
でもそれだけではなく、このステージには秋元康、山本彩、渡辺美優紀の三者による仕掛けがあったと思うのです
あの伝説のステージから二年、そのカラクリを紐解いていきましょう。
(以降断定的に色々書きますが全て妄想なので聞き流してください。)

1.秋元康の計略

渡辺美優紀卒業シングル『僕はいない』は、印象的な歌い出しから始まります。

僕はいない
夏の砂浜
君は誰と海を見るの?
NMB48「僕はいない」作詞:秋元康

歌詞全文はこちら

この歌い出しは渡辺美優紀ちゃんのソロなので、聴き手は「僕」=「もうすぐ卒業する渡辺美優紀ちゃん」だと認識します。
しかし、曲が進むとどうにも違和感が出てくるのです。

いくつの台風が
通り過ぎたなら
への想いは消えるのだろう?
はいない
すべて幻
夢の終わり 言い聞かせている

「君」が美優紀ちゃんじゃん!!!!

よく聴くと、この曲は恋人に去られた「僕」が、かつて二人で過ごしたビーチで「君」を虚に思い出す、というシチュエーションなのです。

どこで夏を過ごすだろう
あの日買ったTシャツ
違うビーチで同じ海を
見ているかもしれない
僕はいない
君の近くに…
いつもならばキスをしてたのに

「僕」のもとから去り、居場所も分からない「君」。今の「君」の近くにもう「僕」はいないんだ…と繰り返し繰り返し思い返してるわけですね。結構心にキテるね、大丈夫か???

じゃあなんで美優紀ちゃんが「僕は〜いな〜い〜」って歌っていたのか。
これは秋元康の「ずらし」のテクニックです。
秋元康は人の心を操る天才なので、オタクの心を揺さぶる様々な手法を持っています。
『僕はいない』では、発売時に”時間軸”と“「僕」で連想する人”をあえてずらしています。
なぜこんなことをするのか?
それは、歌詞の時間軸が現実と一致した時、オタクの心に強烈な印象を与える効果があるからです。

この「ずらし」の技は、AKB48のデビュー曲、『桜の花びらたち』でも用いられています。この曲はインディーズデビューシングルなのにも関わらず、卒業を描いた歌なのです。

卒業写真の中 私は微笑んで
過ぎる季節 見送りたい
サヨナラ
AKB48「桜の花びらたち」作詞:秋元康
涙の花びらたちがはらはら
思い出のその分だけ 美しく
目の前の大人の階段 一緒に登って手を振ろう

せっかくのデビュー曲、なぜ「これから頑張ろう!」「輝かしい未来へ!」という曲でなく、卒業がテーマなのか。これは、デビュー時にすでに「アイドルが卒業する瞬間」に最もオタクの心が震えることを見据えて仕掛けられているのではないでしょうか。
誰かの卒業時にこの曲を出しても感動はするでしょう。しかし、卒業の時に歌うこの曲がデビュー時から何度も何度も歌ってきたものだったら…?
その子が歌ってきた姿がいくつもいくつも想起され、グッと胸に迫るものがあるに違いありません。オタク、感傷の沼から抜けられません。

『僕はいない』の話に戻りましょう。これは、卒業の歌ではなく「美優紀ちゃんが去った後の僕(=オタク)」の歌なのです。時間軸が現実と一致するのは彼女が卒業した後です。
なぜこの曲を卒業直前の美優紀ちゃんに歌わせるのか。
それは、卒業後、オタクの脳内にアイドルの衣装を着て歌う彼女の姿がフラッシュバックし、想い焦がれて動けなくなる効果があるからです。
現に私は、

いくつの台風が
通り過ぎたなら
君への想いは消えるのだろう?

という歌詞のせいで、台風が来るたびに美優紀ちゃんの姿を思い出し、悶え苦しみました。
こんなに心が動かされることは日常生活においてなかなかありません。こうして私たちは48沼から抜け出せなくなるわけです。

このように、『僕はいない』の歌詞と歌割りには、秋元康によって時間軸と人称代名詞の「ずらし」の技が使われていました。

2.山本彩のインスピレーション

山本彩ちゃんは卒業コンサートの後日、Showroomでセトリ解説を行なっていました。その中に、『僕はいない』の歌い出しを自分が歌った後、みるきーが印象的に登場するシーンが思い浮かんだという話がありました。
その着想通りに彼女は最初のソロパートを歌い上げ、渡辺美優紀ちゃんを登場させました。

僕はいない
夏の砂浜
君は誰と海を見るの?

お分かりでしょうか。
この時の『僕はいない』では、時間軸と「僕」が指す人物が一致しているのです!!!
先ほどは触れませんでしたが、「美優紀ちゃんに去られた後の僕」はオタクであるとともに、さやみる戦士(山本彩と渡辺美優紀の組み合わせのファンの総称)的には山本彩ちゃんでもあります。それは、えーと、すみません。
そして、このコンサートの直前、2018年の夏まで、渡辺美優紀ちゃんは芸能活動を休止していました。まさに「君は誰と海を見るの?」状態だったわけです。

もう一度見てみましょう。

僕(=山本彩)(もう君のそばに)いない
夏の砂浜
君(=渡辺美優紀)は誰と海を見るの?

と山本彩ちゃんが歌ったのです!!!!!
そして「君は誰と海を見るの?」の問いかけに応えるように、渡辺美優紀ちゃんが登場したのです!!!!
歌詞と現実の時間軸、そして登場人物がぴったりと重なった瞬間、この曲が持つ攻撃力は何倍にも膨れ上がりました。

これがオタクの心を掴まないはずはありません。会場では女オタの悲鳴とともに、地鳴りのような歓声が上がりました。あの時吹っ飛んだ3万人のみなさん、お元気ですか?

多くのファンが「卒コンでのさやみるきー」=「今ならば」を予想する中、彩ちゃんがこの着想を得たのは神からの啓示としか思えません。彩ちゃんは天才。そしてさやみるきーの神さまありがとう…。

3.渡辺美優紀の演出

最後に、この日のステージの興奮の裏には渡辺美優紀による演出のエッセンスがあったことを付け加えなければなりません。(なりません?)

彩ちゃんが卒業を発表して以降、芸能活動に復帰してSNSが動いていたにも関わらず、美優紀ちゃんは一切そのことについて触れませんでした。
当然、ファンの期待と不安は高まります。「卒コン、みるきー来るよね?いやまさか…??いやいや来るよね???」
そんな中、「運命の人」である二人は偶然鉢合わせてしてしまいます。

ああ…さやみるきーの運命よ…。
この日のことについて、後日彩ちゃんがShowroomにて「みるきーには『こんなところで会いたくなかったわ〜』と言われた。」と話しているので、美優紀ちゃんが“あえて”彩ちゃんとの接触を絶っていたことが分かります。
そう、ステージ上での、見るもの全ての魂を揺さぶる再会に向けて…!
この美優紀ちゃんの演出によって、2人の再共演のステージは更に忘れられないものとなりました。


繰り返しますが、これらは全て妄想です。(美優紀ちゃんの演出だけは当たってると思いますが…)彩ちゃんも、秋元康さんも、こんなことは考えていないかもしれません。
しかし、私はこの二年間、あのシーンを繰り返し繰り返し思い返してはこの妄想を生み出すに至ったのです。何という魔力でしょうか。ありがとうやすす…ありがとうさやみるきー。

あなたの忘れられないステージは何ですか?
何でこんなに心を掴んで離さないのか、秋の夜長にそのカラクリを想像してみるのも楽しいかも知れません。


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