夢の話(736文字)
火葬場にいた。扉を開けてお祓いをした。これから遺体を寝かせるところだった。
別の扉を開けると仰向けに横になっている人の頭が見えた。前髪が少しだけ燃え残っていた。口はわずかに開いていて前歯を覗かせていた。上の前歯は前後にずれていて歯並びが悪いように見えたが、それは焼かれた時の高熱によるものなのかもしれない。
なぜなら、自分の前歯は揃っていたからだ。これは死んでしまった自分。それを見ているこの自分は何なんだろうと不思議に思った。
前を見ると、誰だろう、知らない誰かが優しく頷いたようだった。その瞬間、自分が死んだことを再認識して急に涙が出てきた。あぁ、自分はもう死んでいるんだ。なんで死んでしまったのか分からないけれど、もうどうにもならないんだ。
溢れる涙を手で拭ったところで目が覚めた。あ、生きてる。夢だったんだ。しかも今日は土曜日。特に急ぎの用事もない。布団から起き上がらずに、しばし今見た夢を思い返していた。しかし意味が分からない。死んだ自分をもう一人の自分が見て悲しむなんて…
************
今日は一日パッとしない天気だった。昼間はショッピングモール内を練り歩き、夕方になってからスーパーマーケットに買い物に出かけた。また雨が降り出してきたところだった。
帰り道、公園内を歩きながらまた夢を思い出していた。怖くはないけど、楽しい夢ではなかった。でも、現実ではこうしていつもと同じ週末を過ごしている。ある意味、生きていること、まだまだこれからなんでもできるんだという恵まれた環境を再認識する良い機会になったのではないかと感じた。
家に帰ってからネットで夢の意味を調べてみた。なんと、自分が死ぬ夢は運気アップの吉夢なんだそうだ。これはもう、人生ポジティブに楽しむしかない。