にっぽんの知恵「サル学⑥サルは人間のような無駄な権力争いはしない」
写真:京都市動物園の猿山(京都市動物園より)
さて、動物園に行くとします。たいていサルの周辺、とくに、いわゆる「猿山」には人だかりができているのではないですか。
サルは人気者なのです。
しかし、サルの世界への人間の誤解も少なくはないようです。
たとえば、ニホンザルの群れといえば、1匹の雄ザルが多数のサルを統率しているというイメージが強いようです。そのイメージをもとに「日本のタテ型社会」や「派閥のボスの後継争い」などが説明されたこともあります。
しかし、斎藤さんによると「ボスザル」が群れを支配しているわけではないのだそうです。そういうことが近年の研究で判明したといいます。
だから日本のサル学発祥の地の一つ、大分県の高崎山自然動物園でも、群れの序列1位の雄ザルを「ボスザル」とは呼ばなくなりました。かわりに「α(アルファ)オス」と呼ぶのだといいます。
斉藤さんの言葉を借りると、
「サルは人間のような無意味な権力争いはしません」
というのです。
このようにサル学は、今も着実な発展を続けています。
その第一線で活躍する山越さんは当時、西アフリカ・ギニアのボッソウ村などで野生チンパンジーの群れの研究を続けていました。その成果の一部を紹介しておくことにします。
食べ物が手に入りにくい季節になると、チンパンジーは、ふだんはあまり食べない木の実を石の道具で割って食べるといいます。
従来、眠るのは木の上だと考えられてきたのですが、地上に巣をつくる集団もいるようです。
ほかの群れから嫁いできたメスが、嫁ぎ先に「異文化」を伝えることもあるといいます。
このように、山越さんの研究は、つぎつぎに新しい貴重な発見を積み上げていました。
そのチンパンジーとアフリカの人々との関係も、さまざまです。
たとえば、
「ボッソウ村の人々は、チンパンジーに親近感を持っていて、彼らを保護します。でも、他の村では、チンパンジーは大きなヘビと同様、人間に危害を加える邪悪で怖い動物だというイメージが強いですね」
このように、現地では必ずしも親しまれている存在ではないと山越さんは指摘しました。
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