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100 『宗教年鑑』の数値の不思議と権力の神仏への愚かな干渉

 写真:伊勢神宮の門前町おかげ横町のおかげ座前風景(Wikipediaより)

 少し前まで、日本政府が発表する統計資料は種類が多く、かつ信頼性が高いと言われたものです。
 世の中の移り変わりを考える際に、それらは大いに役立つように思います。

 ところで、文化庁所管の『宗教年鑑』には不思議な数値が並んでいるのをご存じでしょうか。

 いま手元にあって容易に検索できる1994(平成6)年と2017(平成28)年の人口統計と『宗教年鑑』の信者数の数値(千の桁で四捨五入)を比較してみました。

 すると、この四半世紀たらずの間に、総人口は1億2500万人から200万人増加していることが分かります。
 それに対して総信者数は2億2000万人から300万人も減少したとのことです。結果、総信者数と総人口の差は9500万人から6300 万人へと3200万人も減少したことになります。

 ずいぶんダイナミックな変化なのだと思う。が、何故こんなことが起こったのかの説明は行なわれていません。
 こんな点にも宗教の神秘性が顕現しているのでしょうか。

 ここで話が変わります。

 21世紀を迎えてすぐのころ、久しぶりに伊勢神宮を訪れました。五十鈴川にかかる宇治橋を渡り、玉砂利を踏んで内宮に近づきました。
 と、小学校の修学旅行と違って身の引き締まるような気がしたものです。まもなく濃緑の杉木立の中で金色に輝く千木と鰹木を頂く白木造りの本殿が目に入ってきました。

  なにごとのおわしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる

 西行の思いが実感できるようでもありました。
 あたりの空気に樹木のいい香りが満ちているからでしょうか。ふだん排気ガスに汚れた都市の空気を呼吸している気管や肺が喜んでいたのかもしれません。

 それにしても樹齢2、300年、檜材の「唯一神明造り」に不思議な懐かしさがこみあげてきます。
 太古の昔、日本列島のほとんどが樹林で覆われていた時代から連綿と続く日本の「木の文化」への親しみがよみがえるのでしょうか。
 わずかな時間の間に心身がリフレッシュされたような気がしました。

 ところで『宗教年鑑』によると、日本の宗教信者数は約1億9000万人で、不思議なことに実人口より6000万人以上も多いのです(2016年末)。

 日本人は意外に信心深いのでしょうか。それとも複数の神仏を拝んでも嫉妬を買う心配がないからでしょうか。
 そうえば、お伊勢さんに参れば、死者の霊が集う朝熊山(あさまやま)の仏寺にも足を運べというぐらい神仏は互いに近しいようです。

 コロナ禍以前の話ではあるのですが、門前町のおかげ横丁の人気もあって、かつて「鳥居=大陸侵略の象徴」を嫌ったはずの中国や韓国からの観光客も増えているということでした。
 じつに結構な話だなあ、と思わされました。

 こうした平和な状況を持続するには、国家権力が神仏の運命を左右した過去の愚だけは避けたいと思うのですが、どうなんでしょうか。

 この記事とは余り関係はないのですが、ぼくは、こんなキンドル本を出版しています。
 無論、Kindle Unlimited なら、無料でダウンロードできます。お読みいただけると、大喜びします。
 21世紀になって、好ましいことの少ない日本の現状を、少し別の角度から考えてみるキッカケにならないかと思い、こんな本をまとめた次第です。


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