105 旅人たちは神仏に出会ってみたいと思うようだ
写真:「天使にラブ・ソングを」ジャケットと
シャルトル大聖堂(Wikipediaより)
マルチメディアとしてのキリスト教会の楽しみは、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画「天使にラブ・ソングを」が教えてくれました。
数十人が全身を揺らして大声で聖歌を合唱するゴスペルの場面では歌う側、聴く側の人々が皆、涙を流し歓喜の表情を浮かべ始めます。
普段の貧しく苦しい生活から解き放たれて軽いトランス状態にたゆたいながら「神の国」を目の当たりにしているのでしょう。
それは貧しい黒人街の週末の最大の楽しみに違いないのだと思います。
これとは異なりますが、さまざまな宗教的法悦は、禅寺での座禅体験、密教の護摩法要、僧侶の説法、漆黒の闇の中で神々に奉納される神楽のクライマックスなどでも感じられそうです。
それだけではありません。
天に向けて屹立する宗教塔、金色の千木(ちぎ)と鰹木(かつおぎ)を頂く白木造り、端正で豪壮な仏教伽藍や仏像などを目にしたときにも、人は非日常の「聖なる情動」を覚えるのではないでしょうか。
それをドイツの宗教学者ルドルフ・オットーは『聖なるもの』と題した著作のなかで「ヌミノーゼ」と呼びました。
そこで翻ってみましょう。
すると、山頂で眺める雲海から姿を現わす太陽、深い森にこだまする鳥の声、摩天楼が建ち並ぶ大都会に沈む真っ赤な夕陽、壮大なオーケストラの演奏のフィナーレなどにも人は「ヌミノーゼ」に似た情動に揺さぶられるという気がします。
そうなのです。美しい自然や優れた文化に触れたいと思って出かける旅や観光は、どこかに宗教的法悦に通じる要素をはらんでいるように思います。
寺や神社や教会などの宗教施設が旅や観光の重要な目的地であり続けているのは、そのためなのかも知れないのだと思います。
この記事とは、余り関係がないのですが、ぼくは、こんなキンドル本を出版しています。
無論、Kindle Unlimited なら、無料でダウンロードできます。お読みいただけると、大喜びします。
21世紀になって、好ましいことの少ない日本の現状を、少し別の角度から考えてみるキッカケにならないかと思い、こんな本をまとめた次第です。
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