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街のお店屋さん

 『和菓子のアン』のシリーズを読んでいる。そのおかげで、和菓子の持つ季節感、そのいわれ、職人さんの細かな技術などにとても興味を持つようになった。知ってる和菓子には限りがあるし、みたらし団子とか水羊羹とかは、いわゆる「和菓子屋さん」では買っていなかった。『和菓子のアン』の「みつ屋」さんのような、対面のお店で店員さんと話して買うのってどんなのかな、と試してみたい気持ちになった。

 先日、調べておいたわたしの住む街の和菓子屋さんに行ってみた。

 うわぁ💖

 ガラスのショーケースの中にご贈答用のもなかの詰め合わせ、お饅頭の箱詰め…左側にはわたしが試したかった上生菓子が数種類…その隣にはみたらしとあんこのお団子…

 もちろん、本の中の「みつ屋」さんはデパ地下の和菓子店だから、設定は街の和菓子屋さんとは違うけど…アンちゃんはショーケースを念入りに磨いたりしながらわくわくしてたんだろうなぁ…など、いろいろ思っていると、三角巾を頭に被り、白いエプロンをした女性の店員さんが出ていらした。アンちゃんの店員さんスタイルと同じだ。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」「いえ、あの、少し見せてください…」「どうぞ、ごゆっくり」…

 その後すぐ男性のお客さんが1人、「お願いしていたやつ、取りに来ました」と入ってきた。けっこうの数の箱詰め、相当額を支払って持ち帰って行った。それを見ると少し気が引けて、念のため聞いてみた。「あの…生菓子ひとつ、とかでもいいですか?」「もちろんです。どちらにしましょう?」

 結局人見知りがまた発動し、店員さんにお菓子のことを詳しく聞くことは出来なかった。そんなわたしが買ったのはこの生菓子…

 かわいい。とにかく小さくてかわいい梅の花のお菓子。かわいいし何よりも、春の到来をこれ以上に表すものってあるかしら。黒文字は前に母が持たせてくれていたもの。なぜかほんとに小枝に梅が咲いたよう。

 おいしい。あっさりしている。口溶けがいい。色も自然な餡子で丁寧なこし餡。あっという間になくなっちゃった。緑茶に合う。すてきなひとときだった。

 そういえば、街のお店屋さんってなかなか行けていない。パン屋さんもケーキ屋さんもいろいろあるけどまだまだ行ったことがないところがあるなぁ。チェーン店より少し割高な気がしてどうしても足が遠のいていた。でも行こう!そういう思いを新たにした。ときどき行って何か買おう。顔なじみになっておしゃべりする、なんて人見知りのわたしには出来そうもないけど、買って応援しよう…そんなふうに思った。

 『和菓子のアン』シリーズはわたしにいろいろなものをもたらしてくれた。シリーズを通して古典、伝統文化、日本の行事、和洋折衷、さらには食品流通や店舗経営、代替わり問題などについても知ることができた。何よりも、お店屋さんに行く小さな勇気も与えてくれた。

 いろんなところでいろんな人ががんばっていて今があるんだ。アンちゃん、わたしもがんばるね。お菓子との出会いをありがとう。そんな気持ちになっている。

ひとつのお菓子を入れてくれた袋の熱いメッセージ😆

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