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本の読める場所を求めて を読んで 「読書する時間」について考える

久しぶりに書評に戻りたいと思います。

Kindleセールで気になるタイトルの本を見つけたので、購入し、読了しました。
今回の著書は「読書する時間」の環境を整える、と言うことが大きなテーマになっていました。

まずは書籍のメタデータを貼り付けておきます。

今回も、読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。

・;キーワード
→;全文から導き出されること
※;引用
☆;小理屈野郎自身が考えたこと


書名 本の読める場所を求めて
読書開始日 2022/05/06 07:39
読了日 2022/05/08 12:43

概略・購入の経緯は?

Kindleセールで気になるタイトルの本を見つけたので購入となりました。
本を読むところについてのエッセイ。そして著者は読書カフェのオーナーとのこと。
結構ゆっくりした時間が流れそうな著書だが、どんな感じだろうか?

本の対象読者は?

読書の好きな人
読書環境をつくってみたい人
カフェの好きな人
外出先の読書環境について考えたい人

著者の考えはどのようなものか?

・本を読めるカフェのコンセプト

「今夜はあの本をひたすら読んじゃうぞ」という楽しみがその日の気持ちを明るくさせるような「今週末は読書三昧だ」という予定が日々生きていく希望の根拠となる(と考える)。

「読書ですね。かしこまりました。全身全霊でサポートします。お気兼ねなく存分にどうぞ」といえるカフェ

何にも邪魔されずにただただこの本を楽しみたい、贅沢な時間を楽しみ尽くしたい、とそう強く願うとき、家という場所はどこまでそれをかなえてくれるだろうか。難易度は結構高い。

特別な一冊と向き合う外せない読書の時間を、外す恐れなく過ごせる「本の読める場所」

→☆このような人を受け入れるカフェになるように努力しているようです。

いくら読んでも、感想文も何も残さず(中略)頭の中だけに保存されていって、それで、死んで焼かれて灰になって、おしまい----って訳だ/だって、読むってそういうことでしょう

読書という行為を通して人生に、目印を付けながら歩いている

読書は読書として楽しんで、それ以上のことは何もしない (読書ノートをつくるとか、感想を述べるとか、ビブリオバトルをするとか)。
このあたりの考え方は、小理屈野郎とは少し違うような気がします。小理屈野郎の場合は、読書はもちろんゆったりした気分で楽しんで行います。そして読了してからおもむろにポメラを開き、読書ノートを基本的にはどの読了本についても行っていきます。そしてこの読書ノートを付けているときもかなり充実した気分になります。読了した本を振り返りながら、自分で色々な思索を行う。この時間も筆舌に尽くしがたい充実した時間 なのです。
なんだか読んで終わり、というのは小理屈野郎的にはもったいない(いじましいか)と思ってしまいます(苦笑)。
これは読書に対するスタンスの違い(善し悪しではない)と考えます。

・いわゆる「ブックカフェ」について

「本のあるカフェ」ということだけであり、それ自体に「読む」に対する態度が含まれているわけではない。

☆しっかりとした思考実験から、このような結論を著者は引き出していました。確かに例示されているもの、そして行ったことはなくても知っている・ネットで見たことのあるブックカフェ、すべてそれに当てはまります。なるほどと著者の慧眼に感じ入りました。

・長居について

→☆著者は長居が出来る、それも気兼ねなく出来る、と言うのが読書をする場所に必要な機能であると考えています。

☆それを守るために色々なルールを決めてしまう。様々な思考実験の上それを守れない人は来なくていい、と割り切ってしまう ことが今回のコンセプトの成功に大きく寄与しているのではないか、と思う。

・「読む時間」について

→☆本と関わる商品や場や催しやサービスの中に「読む時間」そのものに光を当てたものは極端に少ない と著者は考えています。
これもそうだと思います。他の商品やサービスは作り込み時に突き詰め切れていないのかも知れないと考えました。

・お店の常連の定義;ポイント制ゲーム

☆この考え方非常に面白く、また理屈にかなっている と思った。

→店の人=20ポイント
→常連・店の人と顔見知り=10ポイント
一見いちげんさん=2ポイント
→誰かと仲間になり結託するとその人のポイントが自分のポイントとして加算していく
→30ポイントを超えれば一人前(気持ちよく過ごせる)

☆このような発想が出来るから価格表に席料を入れた少し複雑なルールを作成できたのではないかと思いました。(後述します)
これ以外にも、喫茶店経営の視点から、回転数、滞留時間、顧客平均単価などについても非常に詳しく、そしてしっかりと因数分解(ほぼ素因数分解のレベルまで)して考察 しています。これについてもビジネスモデル構築になじみのある人であれば非常に興味深く読み進めていくことが出来ると思います。

・フヅクエについて

→フヅクエとは、著者の開いている「読書の出来るカフェ」の名前です。
→最初は著者も「読書を全身全霊でサポートするカフェ」 を指していると考えていたが、どうやらその活動は徐々に広がりを持ち、読書をする時間を楽しくするための活動すべてに意識が動いていっている様子。

・お品書き

これはフヅクエのホームページでも販売されています。
10ページを超える大部ではあるが、これはこの著書にも収録されています。非常に細かいがしっかりとコンセプトを理解できるようにしています。
コンセプトに共感する人にとってこのお品書きはフヅクエに入ってからのアイスブレイキングの役割を果たしてくれている ようです。
そして著者が「言葉の花束」を送る、と言う風にいうように禁止・抑制項目についてもうまく表現している と思いました。

その考えにどのような印象を持ったか?

→☆著者の考えにはある程度賛成だが、すべてに与することは、個人的には出来なかったです。
これは著者の考えを否定する、と言うことではなく、単に著者と小理屈野郎の読書の時間に対するスタンスの違いだけのこと だと思います。
読書というものはもちろんそれをすることによってまず豊かな気分になることが大事なファクターではあります。その内容を頭の中で(まとめをつくるなどして)反芻する、と言うのが個人的には一番楽しいところ なので、これは自分の趣味趣向と言うことで認識しておきたいと考えています。

☆フヅクエの考え方は非常にいいなと思いますが、今しているように、読み終わった本をまとめるのにはポメラを使っているがどうやらフヅクエに行ったとしたら、この行為は認められないのではないか?それは少し悲しいなあ とも思いました。
しかしこういう行為(タイピング)が禁止されているのであれば、それだけを外して読書だけをしに行けばいい 、とも考えられます。そういう意味で著者のフヅクエのコンセプトは成功しているのでは無いかと考えます。ここが喫緊の一線、これがあるからこそ著者のいう読書の環境が守られているかも知れないな、とも思った。

読書環境を整える、と言う意味で非常に深い思考実験を何度も長期間にわたって行ったことがよく分かります。著者自身非常に頭の回転がいいのだろうし、頭の良さをすべて読書環境のいいカフェをつくることに振り向けているからこそ、ここまで出来たのでは無いかと思いました。

その上で少し考えてみました。

自分に向いているのは最近出てきた「原稿執筆カフェ」か ?

こちらもネット上ではありますが調べてみました。
どうやらコワーキングスペースの様相が強くて、あまりゆっくりした時間が流れていない ようです。なかなか自分のイメージする読書をする・読書まとめをするカフェや空間は見当たらないように感じました。

印象に残ったフレーズやセンテンスは何か?

2017年、「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」が空間プロデュースおよび運営を担う公立図書館が、数万冊のダミー本および貸し出しも閲覧も出来ない大量の洋書を購入したとニュースになった

→☆CCCの考え方は本屋とか図書館とか、そういうものでは無いと思われる。しかしすごい大胆なことをしたもんだ と感心しました。

類書との違いはどこか

読書という行為を行う時間について突き詰めて考えているところ

関連する情報は何かあるか

他のブックカフェの情報、フヅクエの読書カフェ以外の活動について

  • Spotifyのプレイリストなど

Spotify上のプレイリストに載っているアンビエント音楽をかけつつ執筆していますが非常にいい感じです。これならイヤホンを付けて読書や執筆することも可能かも知れないと感じました。

#自宅フヅクエ  は現在ほぼ活動を中止中のようです。2020年にアップはあるがその後はないようです。しかしアップされた写真を見ていると、読書のゆっくりとした時間が過ぎていきそうな感じがして非常にほっとするものでした。ご興味のある方はTwitterでハッシュタグ検索してみることをおすすめします。

読了後の考察

「本を読む時間」をいかに充実させるか、と言うことで著者が色々と思考実験を含め考え抜いた上で、「読書が出来るカフェ」を著者は開きました。そこには細かいルールがあり、それも考え抜いた上に出来たもののようです。
その上で、そのカフェの概要と、今後の展望について記している。どれも読書好きの人間からすると非常に興味深い話が書かれていました。

この著書は、「読書が出来るカフェ」が出来るまでのルポ、としても読めるし、ビジネスモデルの作成経過を見ると言う面からも読めます
非常に良く出来た著書だと考えました。

まとめ

「読書の時間」というものを究極まで考え、それが自宅外で出来るようにとカフェをオープンした人の著書の書評を投稿しました。
小理屈野郎にとって、外出先の読書・執筆環境を考え直すいい機会となりました。
ちなみにトップの写真は実際のフヅクエ店内の写真のようです。


と言うことで、次回は執筆環境の番外編、外出先での執筆環境や読書の環境について思索してみたいと思います。

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