『ラブ、デス&ロボット』が面白かった話(1)

Netflixオリジナル作品の『ラブ、デス&ロボット』(『Love,Death & Robots』)が面白かったので、各話の概要や感想をつらつら書き綴っていこう、という趣旨です。

『ラブ、デス&ロボット』とは?

Netflixが製作・配信する全18編のオムニバス作品集。
1話完結タイプで、各話で映像の方向性はバラバラ。作品種別はアニメということになっているが、おそらく実写も一部混じっている……はず。
フォトリアルな3Dアニメもあれば、レトロタッチの作品もありと、バリエーションに富んでいるのが特徴だ。
収録時間も作品によってバラバラで、6分から16分程度と大きな幅がある。

作品ジャンルは、SFやホラーがメイン。
コミカルな作品もあればブラックなものもあるが、全体的に悪趣味な傾向。映像も総じて「刺激的」で、エログロ耐性の低い人は気を付けた方が良いかもしれない。

全18編のうち、ほとんどの作品が小説を原作に採っており、ジョン・スコルジーやケン・リュウ、アルステア・レナルズといった、日本でも有名な作家の作品が多い。

各話紹介&感想

●第1話 ソニーの切り札(原題:Sonnie's Edge)

近未来っぽいダークな世界。人間の脳と凶悪なモンスターをリンクさせ、戦わせる闇闘技場が舞台。
主人公は、闘技場で連戦連勝中の女戦士ソニー。彼女の強さには、ある「秘密」があった。

見どころは、練り込まれた脚本と、モンスター同士のド迫力バトル。
主人公ソニーの「切り札(秘密)」自体にはさほど意外性はないんだけど、秘密が明かされるまでの過程の見せ方が抜群に上手い。
この回は、見終わったらもう一回最初から見直してみてほしい。初見だと、ついついソニーの陰惨な過去にばかり目が行くと思うけれど、よくよく見ると序盤から伏線張りまくり。

原作は、イギリスのSF作家ピーター・F・ハミルトンの短編小説『Sonnie's Edge』。
短編集『A Second Chance at Eden』に収録されているらしい。
邦訳はされていない。

ピーター・F・ハミルトンは、イギリス本国では売れている作家らしいのだが、日本での知名度は今一つ。
過去に東京創元社から、代表作の《グレッグ・マンデル》三部作の第一部に当たる『マインドスター・ライジング』の邦訳が刊行されているが、第二部以降は音沙汰ナシ。
売れなかったのだろうな……。

●第2話 ロボット・トリオ(原題:Three Robots)

人間が滅び去った後の世界が舞台。
姿形も性格も異なる三体のロボットがともにに旅をし、かつて存在した人間たちの文明を想像していく。
ロボットたちが持っている人間の知識は断片的。それゆえに、会話は常にトンチンカン。荒廃した世界と、とぼけたロボットたちのやりとりのギャップが楽しい。

原作はジョン・スコルジーの短編『Three Robots Experience Objects Left Behind From the Era of Humans for the First Time』らしい。『Robots vs. Fairies』というアンソロジーに収録されているそうだ。
以下、当該アンソロジーに関する、スコルジー自身の解説。執筆者の中には、ケン・リュウ(後述)の名前もある。
https://whatever.scalzi.com/2018/01/09/robots-vs-fairies-is-here/

ジョン・スコルジーは日本でも人気のある作家で、邦訳も多数出版されている。
代表作は、75歳以上の老人が新しい体を得てエイリアンと戦うミリタリーSF『老人と宇宙』シリーズ(ハヤカワ文庫JA)など。

スコルジーはファンの間では猫好きとして知られ、SNSにちょくちょく猫の写真をアップしているが、本作も彼の愛猫家的な側面が重要な要素になっている。
ねこはちゃんと撫でてあげないとね。

●第3話 目撃者(原題:The Witness)

近未来風の多国籍感溢れる都市が舞台。
主人公であるストリッパーの女は、ある日偶然、殺人事件を目撃。犯人の男に顔を見られた女は、追ってくる男を振り切って逃げ回るが、不思議な現象に巻き込まれていることに気づき……。

とにかく、どぎついビジュアルが魅力的な作品。ゴージャスで下品な映像が好きな人にはたまらないだろう。かなりエロい。
ゴテゴテした都市、パンチの効いたキャラデザイン、サイケデリックなストリップ・クラブなどなど、とにかく絵面がピーキー。

脚本を担当したのは、スペイン出身のアニメーション作家アルベルト・ミエルゴとある。彼のオリジナル作品のようだ。

アルベルト・ミエルゴは『トロン:ライジング』のアートディレクターや、『スパイダーバース』のコンセプトデザインを担当するなど、近年注目されているクリエーター。
公式サイトで公開されている作品には、奇抜で目を引くものが多い。本作を気に入った人は楽しめるはず。
http://www.albertomielgo.com/

●第4話 スーツ(原題:Suits)

フォトリアル調だった第3話までとは一転、デフォルメのきいたカートゥーン風の作品。

アメリカンな牧場主(農場主)が、ロボット兵器に乗って異星生物の侵略に立ち向かう話。いかにもアメリカ人が好きそうなミリタリーSFだ。
アメリカ人じゃないけど、ぼくも好きだぞ。

作中に登場するアメリカンどものデザインは親しみが持てるし、彼らが搭乗するロボットのデザインも秀逸。
ガトリング砲、ミサイル、ビーム兵器で、虫とトカゲの中間みたいなエイリアンをなぎ払うシーンは躍動感があって素晴らしい。
基本的な筋立てはシンプルながら、話の緩急が効いていて、見終わった後の満足感は高め。

原作クレジットには「Steven Lewis」とある。
米Amazon等でSteven Lewis名義の作品がないか調べてみたものの、原作は特定できず。そもそもスティーブン・ルイスという作家が複数おり、どこのスティーブンが書いたのかすら分からなかった。
Redditに本シリーズの原作出典を調べている人がいたけど、この人も答えにはたどり着けていない模様。

●第5話 魂を貪る魔物(原題:Sucker of Souls)

レトロ調(80年代風?)の絵作りが特徴のホラー作品。
考古学者の発掘隊が、とある遺跡で串刺し公ドラキュラ(らしきもの)を発見してしまい、怪物に襲われる。護衛の傭兵たちは銃と火薬で怪物に立ち向かうが……。

個人的に、なんかパッとしない作品だった。
「怪物は猫が嫌い」という設定が序盤に提示されるのに、あまり猫が活躍しないし、ラストの展開もなげやりな印象を受ける。
絵は躍動感があって良いのだが……。

原作はクリステン・クロスの小説『Sucker of Souls』。ミリタリーSF/ホラー系アンソロジー『SNAFU:Survival of the Fittest』に収録されている。

Amazon.comの著者ページや、LinkedInの登録ページによれば、クリステン・クロスはイギリス人のコピーライター。
本業の傍ら、『SNAFU』や『Steamworld』といったアンソロジーに寄稿しているそうだ。サーフィンが好きらしい。

●第6話 ヨーグルトの世界征服(原題:When the Yogurt Took Over)

ある日、ヨーグルトが自我と人間を超える思考能力を持ち、人間を支配し始めて……というバカ話。
何を言っているのか分からねえと思うが、俺も何を見せられたか分からなかった……。
なんとか話を理解しようとしがみつく視聴者を振り落とすような、物語の加速っぷりが見どころ。

原作はジョン・スコルジーの『When the Yogurt Took Over』。以下のページに全文がアップされている。短いからサクッと読めるよ。
https://whatever.scalzi.com/2010/10/02/when-the-yogurt-took-over-a-short-story/


さて、記事が長くなりそうなので、今日はここまで。
7話以降は、追って別の記事で紹介していきます。

※記事中のスクリーンショットは、本編の画像を撮影したものです。

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