ここがヘンだよ、電ファミニコゲーマー 〜格闘ゲーム死闘編〜

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※関連記事:
ここがヘンだよ電ファミニコゲーマー 〜場外乱闘編〜
ここがヘンだよ電ファミニコゲーマー 〜補足編〜

●はじめに

「電ファミニコゲーマー」(以下「電ファミ」)という新興ウェブメディアがあります。
最近だと東浩紀さん率いる「ゲンロン」に絡んで、いろいろ話題になったりしていますね。

この電ファミ、ゲーマーの中には「良質なメディア」として評価する声も高く、ゲンロンとのバトル(?)では、「さすがは電ファミ!」的な声も多く聞かれました。

まぁ一部のゲーマーの間でゲンロンが嫌われすぎているので、相対的にそういう声が多く聞こえてくるのかもしれませんが、どうも電ファミを過剰に評価している人が多い気がして、個人的に危ういものを感じます。

さて、この電ファミ、本当に良質なメディアなんでしょうか?
ぼくはぶっちゃけ、「ゲンロン」と同じような危うさを感じています。
「意識高い系だけど、事実関係の確認などが比較的大ざっぱ」だと思うんですよね。

今日調べ物の最中、たまたま電ファミの記事が目についたので、軽く読み流していたのですが、よくよく読むとけっこうひどい。
目についた記事というのは、こちらですなんですけど↓。


『ストII』で格闘ゲームを生んだ伝説の男、西谷亮が挑むジャンルの再構築──『FIGHTING EX LAYER』にアリカが社運をかけて臨む理由
http://news.denfaminicogamer.jp/interview/171212

『ストリートファイターII』や『ファイナルファイト』など、ゲーム史上に残る傑作を生み出した西谷亮さんに、『鉄拳』シリーズの統括を務めてきた原田勝弘さんがインタビューする、という内容の記事。
タイトルを見るとわくわくしますね。

この記事、西谷さんと原田さんの発言に関していえば、特におかしいところはありません(少なくとも、ぼくの目からは)
なんですけど、電ファミ編集部がつけている記事中の注釈。これはかなりヤバいです。
けっこうな数のウソ・大げさ・紛らわしいポイントがあるんですよね。

以下、例を挙げながら見ていきたいと思います。


●ざっと目についたところを指摘

※本記事中の画像は、いずれも電ファミニコゲーマーの記事をキャプチャしたものです。

【1】恥ずかしい度:あたたた
まず、『ダブルドラゴン』について言及した箇所です。

画像1

いきなりしょーもないツッコミで恐縮なのですが……キャプションの最後の文を見てください。

画像左がPlayStation 4 アーケードアーカイブス版のプレイ画面。

とありますが、画像左とは……? 画像は1枚しかありませんが……?
画像右はどこにいったのでしょうか? いまは亡き『ゲーメスト』の画像芸を彷彿とさせます。
「見よ! 三段でこの減り!(※肝心の体力バーが映っていない)」的なアレ。

【2】恥ずかしい度:あたたた
はい、次。「『ストリートファイターII』では、前方ジャンプよりもバックジャンプのほうが飛距離が長かった」という話をしている箇所です。

画像2

非常にどうでもいい話なのですが、『ストII』で「相手の跳び蹴りに対し、バックジャンプで避ける」という動きは(皆無とは言いませんが)、あまりやらないと思います。
ここのキャプションは、「バックジャンプのほうが移動距離が長いので、距離を取って仕切り直しがしやすいんですよ」という趣旨のものにしたほうが適切だと思います。

まぁこれはわりとどうでもいい話です。読者を誤解させる、無茶苦茶なキャプションではありますが……。
このインタビュー記事をまとめた人は、「前方ジャンプよりバックジャンプのほうが移動距離が長い」調整の、どこに西谷さんの慧眼があるのか、まったく理解していないのではないか……と思いました。

【3】恥ずかしい度:あたたたたたたた
次はなかなかすごいですよ。
格闘ゲームにおける、「中段」の概念に言及した箇所。

画像3

これ、何書いているか理解できますか……? ぼくはちょっと厳しいです。

※中段……上段ガードでは防げるが、しゃがみガードでは防げない技のこと。

まずは「上段ガード」という耳慣れない言葉に「?」ですよね。
そのすぐ後ろに、「しゃがみガード」と書いているのに、なぜ「立ちガード」ではなく「上段ガード」と書くのか??


ふつう、2D格闘ゲームでは「上段ガード」という言い方はしません。
「上段」、「中段」、「下段」といった言葉ですが、これらは、たとえば「中段の肘」といった感じで、攻撃の属性を示すときに用いられますが、ガードの属性を示すときには使いません。
そして、ガードの属性は「しゃがみガード」「立ちガード」(作品によっては「空中ガード」なんかもありますが)といったように、「キャラクターの姿勢(状態)+ガード」という書き方が一般的です。
このキャプションでは上記のような使い分けをしていないため、意味不明な内容になっています。

次の文章も、なんだかおかしいです。

2D格闘ゲームにおいては一般的に「上段」、「中段」、「下段」の3種類があり、「上段」は立ち状態での攻撃とガード、「下段」は足払いなどの攻撃と、しゃがみ状態でのガードを指す。

そもそも何を書いているのか文意が取りにくいのですが、とりあえずこの「上段」「中段」「下段」の説明は不正確です。

2D格闘ゲームにおいては、

・中段=立ちガードで防げるが、しゃがみガードでは防げない攻撃
・下段=しゃがみガードで防げるが、立ちガードでは防げない攻撃

……というのが、最大公約数的な定義だと思います。


「上段」という語は、人によって定義がまちまちなのですが、古くから2D格闘ゲームをプレイしている人の間では、「立ちガードでもしゃがみガードでも防げる攻撃」を指すことが多いと思われます。
3Dメインの人は、「しゃがみ状態の相手に当たらない攻撃」を指して「上段」ということも多いですね。

▼参考
https://kakuge.com/wiki/pages/%E4%B8%8A%E6%AE%B5%E5%88%A4%E5%AE%9A

あと、下段の説明に「足払いなどの攻撃と」とありますが、これも不正確な表現。
足払いだろうが跳び蹴りだろうが、しゃがみガード可&立ちガード不可の攻撃を「下段」と呼びますし、立ちガードできる攻撃を「下段」と呼ぶことは通常ありません。
モーションが足払いだろうがなんだろうが、立ちガードで防げる攻撃は下段ではありませんし、初代『サムライスピリッツ』の千両狂死郎の垂直ジャンプ強蹴りは下段です。

上段攻撃はしゃがみガードでは防げず、逆に下段攻撃は上段ガードでは防げない。

この文章も変ですね。
「上段攻撃は」は、「中段攻撃は」の誤字だと思われます。

1993年の初代『バーチャファイター』で初めて「中段」技が導入されたことにより、上記の意味で用いられるようになった。

……という文章についても、一言補足しておきます。
より正確を期すなら「1993年の初代『バーチャファイター』で初めて「中段」技という呼称が導入されたことにより、上記の意味で用いられるようになった。」としたほうが、誤解が生まれにくいでしょう。
細かいことなので、どうでも良いといえばどうでもいいのですが、「立ち状態から出せるしゃがみ不能技を導入したのは『バーチャファイター』」という誤解をする人が現れそうな気がするので。

みんなもっと『龍虎の拳』の先進性について話題にした方が良いよ!

【4】恥ずかしい度:あたたた
次。『飛龍の拳』シリーズに関する部分。

画像4

飛龍の拳……カルチャーブレーンより発売された格闘ゲーム、およびそのシリーズ。第1作目の『北派少林 飛龍の拳』は1985年にアーケードで販売された。

細かいようですが、『北派少林 飛龍の拳』の時点では、カルチャーブレーンという社名ではない気がします(※あまり自信ないですが……)。

また、『北派少林 飛龍の拳』はタイトル画面でタイトーの名前が出るので、おそらく販社はタイトーだと思うんですよね。
「カルチャーブレーンより発売された」という表現は、本当に正しいんでしょうかね?
(このへんの話は昔の業界人とかに聞かないと実情がよくわからないので、断言しにくいのですが、たぶん違います)

まぁ大筋では『飛龍の拳』シリーズを作ったり売ったりしていたところ=カルチャーブレーンで間違いないとは思いますし、細かいことに突っ込むのはバカバカしいとは思うのですが、気になったので念のため。
というのも、その前後で言及されている『空手道』や『ファイティングファンタジー』は、開発会社と販売会社を分けて書いてあるんですよね。なぜ『飛龍の拳』だけこんな大ざっぱで不正確な表記になっているんですか?

【5】恥ずかしい度:-
次は、間違いの指摘ではありません。

画像5

「SNKが制作した」というふわっとした表現はまぁどうでも良いとして(プレイモア時代もまとめてSNKと呼んだって良いでしょう)。
主に江戸時代の天明〜寛政期を舞台とした」と書いて、それとなく『剣客異聞録 甦りし蒼紅の刃 サムライスピリッツ新章』をハブりにいくのはやめてあげたほうがいいと思うな! 悪意を感じるぞ!
「江戸時代を舞台にした」で良いんじゃないっすか、そこは……。
ダメですか……?

それはともかく、ここで『サムライスピリッツ』シリーズ全体の話をする必要は全くないので、初代『サムライスピリッツ』の話だけすれば良いと思います。
インタビューに出てくるのは初代『サムライスピリッツ』だけなのですから、当該作の先進性について補足すべきだと思います。

【6】恥ずかしい度:あたたたた
次も細かい指摘ですが。

画像6

ここの西谷さんの発言は、シリーズとしての『ギルティギア』を指していると思われます。
というも、初代『ギルティギア』の段階では、キャラクターの個性は強いものの、「キャラクターそのものに独自のシステムが積んで」いるとは言えないんですね。
この傾向が顕著になるのは、ジョニー(特殊アイコン持ち)、紗夢(同)、梅喧(特異なガードキャンセル持ち)、ヴェノム(特殊な飛び道具)、闇慈(ガードポイント)といったキャラが追加された『ギルティギアX』からです
ザトーなどの旧キャラも、『X』からは前作とはまったく違う性能になりましたしね。

というわけで、ここで初代『ギルティギア』を引き合いに出すのは適切ではないでしょう。実際にゲームに触ってれば、違和感を覚えるべき部分です。
ここは画像&キャプションを最新作の『Xrd』にしたほうが良いんじゃないでしょうか。
西谷さんの言う特徴が一番はっきり出ているのは、やはり最新作でしょうから。

あと基本的な校正ミスだと思いますが、タイトルの表記の揺れと、発表年の齟齬が発生しています。
本文では「『ギルティギア』(1998)」となっているのに、キャプションでは「1999年、PlayStation向けに発売された『GUILTY GEAR』がシリーズ第1作目となる」と書かれてしまっています。

【7】恥ずかしい度:あたたたた
次は、「原田さん、そこはツッコまなくていいんですか……?」案件です。

画像7

三島一八は、初代『鉄拳』の主人公であり、シリーズ通しての重要人物ではありますが、「鉄拳シリーズの主人公」と言われると、多くのファンが首をかしげるでしょう。
『鉄拳2』では父親の三島平八が主人公、『3』以降は息子の風間仁が主人公である、というのが一般的な認識じゃないでしょうか(『7』のリリース時に、仁はプレイアブルキャラにいなかったですけどね……)。

最終的な判断は原田さんに任せるしかないですが……まぁ間違いと言って良いと思います。

過去のインタビューで、原田さんが「『鉄拳6BR』の主人公はラースじゃなくて仁」などと言及しているのは見たことがありますが(というかぼく自身がインタビューで原田さんに直接聞いて『アルカディア』で記事にした記憶がある)、「シリーズ通しての主人公は●●」のような明言は、したことはないんじゃないのかな……?

あったら自分の不勉強です。すみません。

【8】恥ずかしい度:あたたたた
次は『スト2ダッシュ』のダブルニーハメ(記事中では「ベガハメ」)に関する記述。

画像8

相手にステージ端を背負わせ、しゃがみ中キック→立ち中キック→“ダブルニープレス”(←タメ→+K)のループにより、ガードをし続けるしかない状況に追い込むことができた。

「しゃがみ中キック→立ち中キック→ダブルニープレス」も確かに強力な連係なのですが、一般的に「ダッシュのベガのハメ」といえば「しゃがみ中パンチ→立ち中キック→ダブルニープレス」のことを指すと思います。
「しゃがみ中パンチ→立ち中キック」の部分が連続ガードなのでエグいんですよね。
人によっては、ダブルニープレスを軸にした強力な連係全般を指して「ダブルニーハメ」と呼ぶこともありますが、「しゃがみ中キック→立ち中キック→ダブルニープレス」のみを指してそう呼ぶ人は(ほぼ)いないと思います。

あと、ダブルニーを使った連係は画面端だろうが画面中央だろうが脱出困難なので、「相手にステージ端を背負わせ」は不要でしょう。
また、「ガードをし続けるしかない状況に追い込むことができた。」も、誤解を招く表現です。キャラによっては、ベガ側が完璧だと本当にハマるのかもしれませんが、一応、割り込みできなくもないです。
……ミスったら死ねるだけで。

まぁミスらなくてもいずれは削り死ぬので、割り込みを狙うしかないんですけど、ベガ側も立ち中キック後のダブルニーを出さなかったり、しゃがみ弱キック等の下段技を混ぜたりしてくるので、かなりエグい読み合いが発生しますね。
とりあえず、「ガードをし続けるしかない状況」という表現は、明確に間違いです。

このキャプションですが、書き手がヘンに「知ってる感」を出そうとして、逆に知識のなさを露呈してしまったパターンに見えてしまい、読んでて背筋がムズムズしました。

【9】恥ずかしい度:あたたたたたたた
次。『スト2』ザンギエフのレバー一回転コマンド(記事中では「一周コマンド」)に関する部分。

画像9

いわゆる「立ちスクリュー」に関する記述ですが、なんだか説明がおかしいです。

これの起点を2時方向(↗)などにし、11時のあたり(↖)まで回転したところで攻撃ボタンを押すことによって成立させるものが、「立ちスクリュー」と呼ばれる。

呼ばないと思います。
人によって定義の揺れはありますが、一般的には「立ち状態から出すスクリューパイルドライバー」の総称が広義の「立ちスクリュー」です。
狭義の「立ちスクリュー」はいろいろあると思いますが(西谷さんは狭義=限定的な意味で用いています)、ここで挙げられている定義はかなりヘン。

あと、この注釈に機作入れているコマンドだと、事前に何か動作を挟まないとジャンプが出ます。
『スト2』ザンギエフのジャンプ移行は、ある攻略サイトによれば5フレーム。↗を入力して5フレーム以内に、残りのコマンドを完成させるのは至難の業だと思います。人間の手じゃまず無理です。

そもそも、コマンドをわざわざ上方向(↗)から始めるのが意味不明です。→や←から始めたほうが効率的ですよね?

最初、「↗」は「→」の誤植かなと思ったのですが、わざわざ「2時方向」と書いているので、誤植じゃないんでしょうね……。

何から何まで意味不明! 勘弁してほしい!
これ書いたヤツ誰だよ、出てこいよ。
いますぐそのコマンドで立ちスクリュー出してみてよ……。

さて、ここで西谷さんがここで言っている立ちスクリューは、前後の文脈から「ジャンプや攻撃を経由せず、地上でスクリューパイルドライバーを出す」ことだと推測できます。
ですので、キャプションの代案を出すなら、

・『スト2』に登場するザンギエフのスクリューパイルドライバーのコマンドは"レバー一回転+パンチボタン"。『スト2』では、レバーを上方向(↖・↑・↗)に入れるとジャンプしてしまうため、ジャンプを経由せずにスクリューパイルドライバーを出すのは不可能に見える。しかし、実際はコマンドを若干省略することが可能であったため、たとえば"レバーを三時方向(→)から時計回りに半回転させ、その直後に↑とパンチボタンを入力"といったコマンドでも出せた。

……といった感じでしょうか。

対象読者をどのレベルに想定するかで書き方は変わってくると思いますが、上の代案は、我ながら悪くないと思います。

えー、あと蛇足ですが。
「攻撃ボタンを押すことによって成立させるもの」という文章には、実は問題点が二つあります。

まず、スクリューパイルドライバーのコマンドは「レバー一回転+パンチボタン」です。攻撃ボタンなら何でも出るわけじゃありません。というか、上ではちゃんとパンチボタンって書いているのに、なんでここは攻撃ボタンになっているのか……? なぜ不必要に表記を揺らしますか?

次に、『スト2』はボタンを押したときだけではなく、はなしたときにも必殺技のコマンド入力が発生します。

つまり、パンチボタンを押したままにしておき、レバー一回転後にパンチボタンをはなすことでも、スクリューパイルドライバーを出すことができるんですね。これは「はなしスクリュー」といって、『スト2ターボ』までは有効なテクニックでした(『スーパースト2』以降でもこの入力方法は可能ですが、投げ失敗ポーズが追加されたため有効性は下がりました)。

なので、ここは「攻撃ボタンを押す」ではなく、「パンチボタンを入力する」が適切な表現となります。まぁどうでもいいと言えばどうでもいいのですが、なんで電ファミの記事はこんなに表記が揺れるんですかね。

たとえば、ちょっと上のほうにあるこういうの↓とか、すごくモヤモヤするのですが……。

画像10

「P」なのか「パンチボタン」なのか、どっちかに統一してほしい。
あと、原田さんの発言内容を補足するためのキャプションであるなら、この文章はあまりよくないと思います。
想定読者のレベルがどれくらいかにもよりますが、

「昇龍拳は出始めに無敵時間がある強力な攻撃。しかしコマンドの最初が「→」、つまり相手方向を向いているため、入力に失敗したときのリスクが大きい」

……くらいが良いじゃないでしょうか。
このキャプションを書いた人、インタビューの内容を理解していないんじゃないかな……。

どうでも良いですが。
いま文中のリンクから桜井政博さんの講演記事に飛んだのですが、そっちの注釈もなかなかモヤッとさせてくれました。

ツッコミ始めたらキリがないな。

【10】恥ずかしい度:あたたたた

さて、2ページ目にいきます。『ブレイブルー』の話ですが。

画像11

2008年にアーケードで稼働した2D格闘ゲームシリーズ。アークシステムワークスが制作・販売を手がける。

初代のアーケード版『ブレイブルー』は、AMI(すでに倒産した会社です)が販売を担当しています。
このアーケード版の公式サイトの下の方を見てください。

まぁそのへんの話はややこしいので、「アークシステムワークスが制作を手がける。」くらいの記述でふわっとさせとくのが良いでしょう。

【番外】
もう疲れてきたので、これが最後。ちょっと蛇足的な話になります。
大規模格闘ゲーム「EVO」こと、「Evolution Championship Series」の概要を解説した部分について。これは電ファミの記事に限った話ではなく、日本国内のメディアのEVO報道に対する疑念です。

画像12

アメリカ最大級の格闘ゲーム競技会である「Evolution Championship Series」のこと。1995年にニューヨークで開催された最初の大会は、40名ほどの参加者で『スーパーストリートファイターII Turbo』のみが対象だった。

これはこの記事に限った話ではないのですが、EVOの起源を1995年のニューヨークで行われた大会にしてしまって良いのか、という疑念が一つ。
EVOの中心人物であるセス・キリアンは、インタビューでこの大会をEVOの起源として語っていて、おそらく各種メディアはこのへんの発言等をソースにして95年起源説を採っているが、果たしてそれをよしとして良いのだろうか(EVOの運営側としてはそれが公式設定なのだろうけど)。
英語版Wikipediaの記事は、96年の説を採っているのが前々から気になっています(ちゃんと調べてはいない)。このあたり、公式(?)とWikipediaで説が揺れているのは、どういった経緯なんだろうか……?

「Evolution」の名前が使われ始めたのは、どうも2002年ごろらしいので、それより前の大会を「EVO」と呼んで良いのか、という疑念も。
たとえるなら、闘劇の歴史にゲーメスト杯も含めてしまうような乱暴さを感じちゃうんですよね。
個人的に「前身となる大会は95年から開かれ、徐々に規模を拡張。のちに「Evolution Championship Series」に改称し現在に至る。北米有数の大規模格闘ゲームイベントとして、世界中から注目されている。」とか、そんな感じで良いんじゃないかな、と思うのでした。


●おわりに

というわけで! 電ファミに一つの記事にあーだこーだと指摘を入れてみたわけなのですが、いかがでしたでしょうか。

重箱の隅をつつくような指摘もありつつ、わりとクリティカルな指摘がいくつかあったと思います(実のところ、まだ気になる部分はある。格ゲー小姑をなめんなよ!)。

漠然と元記事を読んで「まぁそんなもんか」と読み流していた人も、こうやって見ると「電ファミも意外と杜撰だな」と感じるんじゃないでしょうかね。
人によっては「ゲンロンのことをとやかく言う前に、自分とこの記事をもう少しちゃんと見てもバチは当たらねえんじゃねえのか……?」と思うんじゃないでしょうか。ぼくはそう思います。上段中段やら立ちスクリューやらの説明は、ちょっとひどいよ。
しょーもない誤植も、ちょこちょこあるしね。

とは言うものの、ぼくとしては「だから電ファミはクソだぜ!」などというつもりは、あまりないんですよね(「あまり」なので、多少はある)。

ただ、ネットを見ていると、電ファミのことをヘンに過剰評価、もっと言うと盲信しているような人がけっこういるみたいで、「おいおい……」と苦笑することがあるんですよね。
ぼくがこの記事を書いたのは、そういう人たちに「ちょっと待ってよ」と釘を刺したかったからです。

そういう人って、「新興メディアとして、いろいろ意識高い系の記事を展開している電ファミを応援したい」的な気持ちがあるんだと思います。
でもね、応援の気持ちが盲信のレベルまで行っちゃうとそれはダメだと思うんですよ。電ファミというメディアの未来にとっても、良くないと思う。
健全な批判精神をもって見るのが良いと思います。

いや、こりゃ電ファミに限った話ではないか。
ファミ通だろうが、電撃だろうが、4gamerだろうが、AppBankだろうがGameWithだろうが、メディアに触れるときは健全な批判精神を持っていた方が良いと思うんですよね。

ぼくが書いたこの記事に対しても、そう。
本稿もいろいろツッコミどころはあると思います。

とりとめもなく書いた記事なんですけど、良い感じのオチがついたので、今日はここらで筆を置こうと思います。

最後まで読んでくれてありがとう!
みなさまに、よきゲームライフがあらんことを。チャオ!


【後日談と蛇足】

本稿で取り上げた電ファミの記事については、あまりにも初歩的なミスが目に付くため、この記事をまとめた後、電ファミに「直した方がいいですよ」という連絡を入れていました。
当時電ファミを統括していたニコニコニュースの問い合わせフォームから連絡し、電ファミ編集部に近しい人(当時編集部内にいた人や、編集部と付き合いのある人)に口頭で伝えたりもしています。

なのですが、2021年現在でも記事の間違いは放置され続けています。
問題のある各記述がなぜまずいのかを詳細に指摘し、問題を解決するための代案の具体例まで提示しているのに、なんで直さないんだろう。不思議。
編集部内に格ゲーを多少やったことがある人間が一人でもいれば、致命的な間違いだけでもサクッと修正できそうなものなのですが、格ゲーやったことある人がいないんでしょうかね。

ちなみに問い合わせフォームで連絡した際には、この記事で触れていなかった問題について具体的に指摘を行い、「キャプション(注釈)の内容が全般的にヤバいので再確認したほうがいいですよ」というようなこと書いておきました。

フォームで連絡するときに新たに指摘したのは、以下の箇所です。

スクリーンショット 2021-07-30 12.09.40

『スト2』のキャプションに間違いがあるんですが、どこが間違っているか分かりますか?

以下、答え。

パンチ、キックに各3つのボタンを割り当てるなど、現在の対戦格闘ゲームにつながるさまざまな要素の雛形を打ち立てた。

問題が大小で二つあります。

一つは、「1レバー+パンチボタン×3キックボタン×3」の『スト2』タイプの操作形式を継承した格闘ゲームが、カプコンやほかのゲームメーカーからリリースされたのは事実ですが、この操作形式が「現在の対戦格闘ゲームにつながるさまざまな要素の雛形」の一つとまで言えるかは疑問です。

カプコンのライバルメーカーであるSNKは、自社プラットフォームのネオジオを中心に作品を発表していたため、4ボタン操作のゲームが主流でした。

また、『スト2』同様、社会現象レベルのヒットとなった『バーチャファイター』シリーズや、その後にリリースされた3Dタイプのゲームは独自の操作形式を採用するケースが多いように思われます。

これが小さな問題。

次、二つめ。

電ファミの注釈を見ると、6ボタン制は『スト2』発祥だと読めてしまいますが、実際は違います。

『スト2』の前作である初代『ストリートファイター』には二つのバージョンが存在し、いわゆる「前期版」と呼ばれるものは感圧センサーを使った特殊筐体が使用されていましたが、「後期版」と呼ばれるものは6ボタンの汎用筐体で稼働していました。
▼参考:
https://www.4gamer.net/games/368/G036842/20170520002/

つまり、「パンチ、キックに各3つのボタンを割り当て」たのは、『スト2』ではなく、初代『ストリートファイター』なんですね。

なので、ここは「パンチ、キックに各3つのボタンを割り当てるなど、」を削除した方が適切だと思います。削除しても意味は通るので。


あと、ついでに些細な記述に突っ込んでおくと、

カプコンが1991年にリリースした、対戦型格闘ゲーム『ストリートファイター』の続編。

これは良くない文章です。

これだと、初代『ストリートファイター』が1991年にリリースされたようにも読めてしまいます。

「カプコンが1991年に発表した対戦型格闘ゲーム。同社が1987年に発表した『ストリートファイター』の続編にあたる。」

……とでもしたほうが、誤読を招きにくいのではないかと思いました。

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