日商簿記検定3級攻略⑦~純資産~
1 はじめに
第2回目の記事で純資産は資産と負債の差額と説明しました。その純資産の中にもさまざまな勘定科目がありますが、日商簿記検定3級の範囲内で覚えるべき勘定科目を説明していきます。
2 資本金
資本金は、出資者が会社に払い込んだ金額を基礎として設定される一定の金額です。資本金には以下のとおりいくつかの原則があります。
① 資本維持の原則
資本金の額に相当する財産をが維持されなければならな
い。
② 資本不変の原則
資本金の額を会社が事由に減少させることはできない。
③ 資本充実の原則出資が行われる際、資本金の額に相
当する財産が実際に会社に拠出されなければならない。
④ 資本確定の原則
定款で資本金の額を確定し、予定された資本金の額
に相当する財産が拠出されなければ、会社の設立や増
資の効力が生じないとする原則。
3 資本金の払込み~株式を発行して、会社運営するための資金を集める~
株式とは、株式会社が発行するもので、会社運営にあたり、必要とする多額の資金を少額にわけたものと考えられます。その株式を何口かにわけて買手に購入してもらい、その購入代金で会社を運営します。この払い込まれた金額が資本金、払い込んだ買い手を「出資者」といいますとなります。株式の払込みは事前に決めておいた金融機関に「発起人」や「引受人」が引き受けた株式の払込金額の全額を履行することで払込みが完了となります。
発起人・・・会社を設立しようとした本人
引受人・・・発起人以外の出資者
この出資が現金預金であったり、事務所、備品等の有形固定資産になったりと収益を生む資産となります。また借入れによる現金預金から商品の仕入れや給料、修繕費等の費用に使われ、会社が稼働していきます。この資本金から生み出す収益の割合や資産と負債の割合によって、会社の財務健全性や収益性を投資家や、債権者が判断します。
4 会社設立時の会計処理
会社設立にあたり、発起人等からの出資が必要となります。発起人のみによって設立されるものを「発起設立」、発起人が出資者を募集し、その出資を引き受けた引受人とで会社を設立することを「募集設立」と言います。日商簿記検定3級の範囲では現金預金が出資元になります。出資時の仕訳は貸方に「資本金」を記載。払込金額をそのまま記載し、借方は当座預金、現金等問題文に従いましょう。
例題
問1 ㈱Aは設立にあたり、株式100株を、1株あたり、100円
で発行し、出資者から全株式の払い込みを受け、当座預金
に入金された。
答1(借)当座預金 10,000 (貸)資本金 10,000
5-1 繰越利益剰余金
繰越利益剰余金とは当期の純利益を貸借対照表に振り替えるときの勘定科目で利益を次期以降に繰り越し、配当金の支払いや利益準備金に積み立てます。
5-2 会計処理
前提 当期の損益
売上原価 70,000 売上 100,000
支払利息 500 受取利息 1,000
減価償却費 10,000 雑収入 1,000
① 決算整理(損益勘定に振替時)
(借) 売上 100,000 (貸)損益 102,000
受取利息 1,000
雑収入 1,000
損益 80,500 売上原価 70,000
支払利息 500
減価償却費 10,000
② 損益の残高を繰越利益剰余金に振り替える
(借)損益 21,500 (貸)繰越利益剰余金 21,500
6 利益剰余金
利益剰余金とは将来見込まれる多額の支出や損失の発生に備えて準備金勘定として、貸借対照表の純資産の部に積み立てるものです。
会計処理として、3級の範囲では繰越利益剰余金を利益準備金に振り替える処理のみ出題されます。
7 剰余金の配当
株主総会等の決議で会社の資本剰余金又は利益剰余金を株主に配る手続です。
仕訳例 株主総会で繰越利益剰余金100,000円について以下の
ように決議された。
配当金・・・50,000円
利益準備金の積立て10,000
(借)繰越利益剰余金 60,000 (貸)未払配当金 50,000
利益準備金 10,000
未払配当金の当座預金から支払った(内、20%は源泉所
得税・住民税)
(借)未払配当金 50,000 (貸)預り金 10,000
当座預金 40,000
(借)未払配当金 50,000 (貸)預り金 10,000
当座預金 40,000
8 おわりに
今回は、簿記というよりは、会社法へのアプローチに重きを置きました。3級の範囲では、あまり純資産について深く追求しておりませんので、勘定科目さえ覚えていただければ、難しくありません。次回は税金についての記事で述べさせていただきます。
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