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日商簿記検定3級攻略⑥~有形固定資産~

1 はじめに

 今回で6回目の記事掲載となりました。今回は有形固定資産ということで、取得時の会計処理から、決算時の処理まで非常に重要なテーマとなっております。特に減価償却の手続は、会計ならではの論点となります。

2 有形固定資産の定義

 有形固定資産とは営業活動のために長期に渡り使用する目的で保有​される財産​で、大別すると建物、工具器具備品、機械装置​等の「償却性資産」と土地、建設仮勘定等の「非償却資産」に分類されます。前者は減価償却を行うもの​で、後者は減価償却を行わないもの​となります。

3 取得時の会計処理~取得原価の算定~

 有形固定資産の取得原価は購入代価に付随費用を加算した額​となります。付随費用の例として以下のものとなります。
 例 引取運賃 購入手数料 設置費用​ 仲介手数料 登記費用 
   不動産取得税​ 自動車取得税​ 

 ※ 費用として処理することもできる科目​ 
   登記費用 不動産取得税 自動車取得税

例題

問1-1 ㈱Aは10月1日に土地を4,000,000円で取得し、購入
        代金は普通預金から振り込んだ。

問1-2 ㈱Aは12月1日に建物を4,000,000円で取得し、購入
    代金は翌月の1日に支払い購入手数料(購入代金の10
    %)は現金で支払った。

問1-3 ㈱Aは2月1日にパソコンを4,000,000円で取得し、購
    入代金は小切手を振り出し、送料20,000円は現金で支払った。

4 減価償却

 減価償却とは、適正な期間損益計算のため、有形固定資産の取得原価を耐用​期間における各事業年度に費用として配分する手続です。​
 適正な期間損益計算を行う理由​は、企業は債権者、株主及び官公庁等の利害関係者に適正に処理された貸借対照表、損益計算書等の財務情報を提供する必要があります。そこで資産計上された有形固定資産を利用することで得られる収益​と費用を対応させて適正な期間損益計算を行います。
 減価償却は一定の方法によって規則的に行います。これを「正規の減価償却」と言います。​恣意的に減価償却の方法その都度変更することによって利​益操作を行うことが可能となってしまうために一定の方法によって規則的に行います。

5 定額法

 減価償却の一定の方法について、3級の範囲では、「定額法」のみ出題範囲ですので、この記事では定額法(間接法)のみを説明していきます。

計算方法 (取得原価-残存価額)÷耐用年数​
残存価額 耐用年数が経過したあとの資産の価値​
計算例 
・ 取得原価 4,000,000円(建物)
・​ 残存価額 10%​
・ 耐用年数 10年​​
減価償却費⇒(4,000,000-400,000)÷10=360,000​
仕訳⇒(借)減価償却費 360,000 (貸)減価償却累計額 360,000

6 決算整理

 減価償却費は期末まで所有している償却資産に対し、当期に獲得した​収益に対応した費用を計算します。​したがって会計期間の途中で取得した償却資産については月割で計算​を行います。​

計算例 会計期間 4/1~3/31 減価償却費 600,000円
    取得日 12/1​
    600,000×4/12=200,000​
    ⇒1年(12カ月)のうち、12/1~3/31使用(4カ月)

例題

問2 ㈱AはX5.12/1にパソコン400,000円を取得。決算整理を
  行う​(定額法 間接法 耐用年数 10年 残存価額 10%)​​

7 売却時の会計処理

 帳簿価額(取得価額-減価償却累計額-売却時までの減価償却費)から売却代金の差額を固定資産売却益(損)として計上​する。固定資産売却益(損)は当期の特別損益計算書に計上​​​する。

例題 

問3 ㈱Aは車両をX5.11/30に3,500,000円で売却した。売却代
  金は翌月​1日に受け取る。(取得原価4,000,000円 減価
  償却累計額​ 720,000円
  定額法 間接法 耐用年数5年 残存価額10%


8 資本的支出と収益的支出

 固定資産に対する支出には「資本的支出」と「収益支出」が
あります。​
 資本的支出・・・固定資産の価値を高めるための支出​
        ⇒取得原価に加算する。​
 収益的支出・・・固定資産の機能を維持するための支出​
        ⇒修繕費として処理​

例題

問4-1 建物の価値を高める修繕を行い、代金10,000円を現
    金で支払った​

問4-2 建物の保守点検を業者に依頼し、10,000円の請求を
    受けた。​支払いは、手形を振り出した。​​

9 おわりに

 いかがでしたが。今回は減価償却という期間損益計算の原理がわかっていると、今後の決算整理における会計処理がスムーズに理解できます。何度も申し上げますが、簿記は繰り返しになります。何度も読み返しても構いません。繰り返し例題を解いて、ご自身の頭に処理方法を定着させてください。次回は純資産についての会計処理となります。楽しみにお待ちください。

例題解答​

答1-1 
(借) 土地 4,000,000 (貸) 普通預金 4,000,000

答1-2 
(借) 建物 4,400,000 (貸) 未払金 4,000,000​
                 現金  400,000
答1-3 
(借) 備品 4,020,000 (貸) 当座預金 4,000,000​
                現  金 20,000

答2
(借)減価償却費 12,000 (貸)備品減価償却累計額 
                12,000
   計算過程​(400,000-40,000)÷10×4/12=12,000
答3
(借)車両減価償却累計額 720,000 (貸)車両 4,000,000​
   減価償却費     480,000    固定資産売却益
                     700,000
   未収金      3,500,000
   計算過程 減価償却費 (4,000,000-400,000)
               ÷5×8/12=480,000​
   固定資産売却益 貸借差額​

答4-1
(借)建物 10,000 (貸)現金 10,000
答4-2
(借)修繕費 10,000 (貸)営業外支払手形 10,000 ​

     


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