或る幕末の武士のこと
まあ歴女と言って差し支えないであろう私(でも某刀にはあまりハマれていないごめんなさい)は、幕末の事を調べたり、好きになるのはあえて避けてきた。せいぜい新選組が題材の漫画を読むくらい。司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」「新選組始末記」は読んだ。しかも函館旅の往路新幹線内で。あれは絶対周囲に誤解されたと思う…違うんです私は五稜郭の桜を見に行っただけ、青函トンネルを通りたかっただけなのです…
話が逸れたが、何故避けていたのかというと、幕末というジャンルはライトな歴史好きには敷居が高い印象だったから。半端な気持ちで好きになっても、あれもこれも調べなきゃ、絶対にお叱りの言葉が来るおっかないよう…という先入観があったからだ。現在はだいぶ緩和…というか住み分けがされているみたいだけど、未だにこの印象は強く持っている。
私は歴史関係を生業にしてるので、せめて趣味だけはこれを離れたいと思い、事実そうしてきた。なんでプライベートでまで歴史の事を考えなくてはならないのか…これは放っておくと際限無くそちらの事を考えてしまうであろう、己への防波堤でもあった。旅をしてもベクトルがそちらに傾きがちなので、状況が許せば出来るだけ離れた旅程を組んだものだ。リゾートとか。アウトドアとか。
せっかく十数年もこうした平和な環境を保ってきたのに、昨年の初夏にこれを打ち破る大事件が起きてしまった。なんと、アプリゲームの幕末キャラにドはまりしてしまったのだ。
その名は岡田以蔵。
FGOで、原案者も謎だというくらいの大人気を博したキャラクターだ。
腐りかけてもいる私は当然そっち方面のハマり方をして、十年絶ってきた同人誌の世界に逆戻りしてしまった訳だが、どうやらそれだけでは治まらなかったらしい。歴女の血が疼いたのか、史料まで漁り始めてしまったのだ。
ゲームでハマり、まずは登場する小説を読み漁った。どの作品でも様々に創作された岡田以蔵が登場して、それはそれは面白かった。とある理由から司馬氏の作品は読んでいないけれども、これはまた別の機会に。
そうこうする内に、歴史家が著した史実本に出会った。新聞記事の連載を纏めた本なので、書かれ方としては年代エピソードを分かりやすく纏めたものだけれども、史料をきちんと出した本だった。ここで創作作品とは違う岡田以蔵に出会ってしまったのだ。
まあ創作分野では大袈裟に書かれすぎだよな、と思っていたけれども、世間で史実であると言われているエピソードも全く嘘だという事を知った。面白いなと思って、この史実本に載っていた参考文献を自分でも手に入れて読んでみた。するとどうであろう、文献にしか載っていない、世間にあまり知られていない岡田以蔵がそこには居た。
これはとても面白いと思った。史実本の著者が「知られていないだけ」と某所で述べていたのはこれかと。普段はあまり文字と関係ない分野に居り、文書古記録に親しむ機会は無い。正直史料を読む事は(活字となったものでさえ)中々大変な作業だった。しかし文字で残っている。読めさえすれば記録を知る事が出来る。この面白さにハマってしまったのだ。
それから1年。高知へは5回行き、6回目の高知旅へ今度出かける。活字になっていない史料を閲覧するのが大体の目的だ。集めた書籍も関連本を含め30冊を超えた。先日は手持ちの資料を整理した同人誌まで出してしまった。しかしまだまだ熱は醒めない。調べた内容はとても論文に纏められるようなものではない勉強中の身であるが、どこかでこれを纏めて書いておきたいなと思い、こちらのnoteを使ってみる事にした。
探りながらのメモ書きになるかもしれないけど、調べた事を時々公開するつもりだ。創作分野とはまた違う岡田以蔵像を、もし興味があれば読んで頂ければな、と思う。
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