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過ごしたい場を作る[Footwork & Network vol.24 No.3]

 この春休み、まちづくりやまち使いを楽しむ人たちにたくさん出会うことができた。そしてそこで自分が感じた価値観や思いについて自分の地元町である埼玉県宮代町で3/18,19に行われた「わわわ!トウブコ」でのことを中心に書きたいと思う。

 今までいろんなまちづくりイベントに参加したり、遊びに行ったりしたが今回のイベントを通して一つの重要だと思う価値観が見えてきた。それは「まちづくり、場づくりでは自分が過ごしたいと思う場を自分で作ることが良い」ということである。例えば、自分の家や部屋をデザインする時に「ここに○○を置こう、××を作ろう」などと考えて業者に依頼したり、作ったりすることがあると思う。これはまちづくりも同じで自分が過ごしたい場を作って過ごしたい過ごし方をしていいのだ。そしてこの楽しみ方ができるとまちやその場はとても楽しくなる!ということをこの3月に実感した。

わわわ!トウブコについて振り返る〜パークレットの準備を通して〜

チラシに掲載されている通り,当日は多くの仕掛けやイベントがあったがこの記事では「パークレット」空間を中心に振り返っていきたい

 まず「わわわ!トウブコ」についてだが、わくわくロードと呼ばれる駅前からの道を歩きたくなる空間にするというわくわくロード事業を推進するため、役場と無印を中心にイベントの検討会が秋頃に設立され実施された社会実験的なまちづくりイベントである。

 検討会には役場のまちづくり課の方や無印や東部鉄道の職員、近隣の大学教授や学生、東武動物公園の職員、そして地元を愛する多様な町民たちなど幅広い人たちが参加しており、自分も1月に屋台を出したときのようにご縁で無印の方から声をかけていただき、12月ごろから検討会に参加した。それまでこのような会に出たことがなかったので町民にオープンでいいなと感じたり、自主的に参加している町民が多かったので熱いまちだなと思ったことを覚えている。

 パークレット空間はそんな検討会で提案されたたくさんの案の内の一つだった。
 歩道を広げることで歩いたりのんびり過ごしたくなるまちを作る、将来的には両側の歩道でこの空間を作ることへの第一歩としてこのような車道にはみ出た空間が生まれた。
 とても挑戦的な案なのだが、自分はこの案の言い出しっぺが検討会に自主的に参加している町の設計士の方だったことに驚いたのを覚えている。また、この試みを実現するために役場の方も歩道を広げるための警察協議をするなど役場のまちづくりへの本気度にも驚いた。
 そして、何よりもこの空間が行政や企業だけでなく彼のように自主的に検討会に参加している町民や学生(特に日本工業大学の木工サークル)たちによって作られたことに感動した。
 土台部分やコンクリートの支柱部分などは専門業者が手掛けたが、竹を切り倒し、割き、柵を作る工程や、廃材パレット(フォークリフトで運ぶあれ)を利用して腰掛けやテーブルを作る部分などは先述の検討会メンバー、特に木工サークルや設計士の方など技術や知識を持つ人たち中心で手がけた。


歩道を広げたような空間
中にはテーブルやストリートファニチャー

 もちろん自分をはじめ専門知識や技術を持たない人間もいたが、その場合はみんなできる限りのことをやってパークレットを作った。しかし、自分は技術や知識で貢献できないことに悔しさを感じたり、足手まといかもとも思い検討会での自分の存在意義が無いような気もしていたが、知識や技術が無くてもできることをやる他の検討会メンバーを見て勇気を貰った。また、この組織は技術や知識がないような人を爪弾き者にするような経済合理性だけで動くコミュニティでもなかったため、会議やパークレット作りに気分良く通うことができたようにも思う。そしてこれは自分のような知識や技術もない人間でも気持ちだけあればまちへの関わりしろを作ることができるという証明にもなったのではないか。
 また、できる人だけで作るのは簡単なのかもしれないが、今回のように多くの人がまちと関わりを持つことができるという点ではみんなで作るということやその緩さがよかったと思う。特にまちという多様な人間が集まる社会ではみんなにチャンスや関わりしろがあるということが重要なのではないか。今回の検討会はその点でも良い意味で緩くまちと関わることができる素敵なコミュニティだったと思う。  

竹を狩りにみんなで町の竹林に
切れ目をいれてしまえば
縦に割くのは意外と簡単でした
円弧になってる部分はフォークリフトなどで運ぶ
使わなくなったパレットで
奇跡的な縁で現れた救世主
日工大の木工サークル
設計士さんたちの構想を見事に形にしてしまう
技術力にびっくり
すごい!ほんとに!!





イベント当日


 たくさんの人が汗をかいて完成させたパークレット空間だがイベント当日の雰囲気も最高だった。それは自分達で作った過ごしたいと思う場をメンバー自身が楽しんでいたからだと思う。

 土曜は生憎の雨だったが「わわわ!トウブコ」は雨天決行

 自分は午前中に草加の松原団地のマルシェイベント、「ピクニグッド ソウカマツバラ」の設営を手伝ってから東武公に向かった。草加は宮代よりも人口も多ければ経済規模も違う。それは事前にわかっていたが、イベントが始まると雨にも関わらず傘をさしてでも足を運ぶ人の多さにびっくりすると同時に肌でその規模の違いを知った。
 果たして宮代はどうなんだという気持ちで電車に乗って東武動物公園駅に向かったが、パークレットがある広場で楽しそうに過ごしているメンバーたちを見て経済規模がどうのという考えは吹き飛んだ。宮代では「自分達の理想のまちを自分達で作り、楽しく過ごす」というまちづくりにおいて理想のような空間ができていた。
 広場では雨が降っていて寒いからと焚き火をする人もいれば、そこで自分のような焼き芋をやりたいという奴もいたりと焚き火を中心にみんなが思い思いに過ごす場が生まれており、文字通り焚き火的空間が生まれていた。
 雨が止んだ夜も鍋を持ち寄った方を中心にパークレット空間で鍋会が行われた。本当だったら車道だった空間でのんびり鍋をするという不思議で素敵な空間が生まれていた。
 確かに都市と比べれば経済規模は小さいかもしれないが秘めているパワーはとてつもないということを感じた。

 焚き火の時間も鍋の時間も一人が「自分が過ごしたい場を自分で作った」結果に生まれた場だった。

雨でも焚き火に当たれば寒くない
リアル焚火的空間
焼き芋
作り方も教えてもらいました
イベント後パークレットで鍋会


 翌日、日曜は快晴

 土曜はほぼ検討会のメンバーしかいなかった広場だが、晴れたおかげか子供から大人まで人でいっぱいだった。スラックラインで遊ぶ子どもやベンチで休憩する人、芝で寝転がる人などみんなが誰に言われずとも土曜の自分達のように思い思いにその場を過ごしていた。

土曜の雨が嘘のよう
素敵なストリートファニチャーは木工サークル作
すごい…!

 先日、知人の誘いで旧中川の水辺イベントに訪れた。川沿いにマルシェが広がるだけでなく、実際に川で船やカヤックに乗れたり水辺を身近に感じることができる仕掛けがあるイベントだった。その際に知ったのだが旧中川をはじめ多くの河川では届出なしでパドルボートなどに乗って自由に河川を楽しむことができるそうだ。それを聞いて率直に「やっていいんだ」と思ったのを覚えているが、今回のイベントでもパークレットや焚き火を通してたくさんの「やっていいんだ」を感じることができたと同時に公共空間での過ごし方に対する固定観念が覆された。

 もちろん危険だからやらないという選択もあるが何もやらなかったら東武公や河川でのイベントのような楽しい空間は実現しなかったはずだ。
 まちを面白くするにはまずまちを自分ゴトとして捉えたり、まちで自分が過ごしたい場を実現してみようとしたり、楽しいまちづかいをすることがいいまちづくりにもつながるのだと思う。そしてその輪や場に多くの同士が集うことでさらに素敵なまち・場が生まれるのだと今回の検討会に参加して感じた。
 また、このような素敵な場が生まれたのは検討会が100%経済合理的な組織ではなくたくさんの人が関われる緩さがあったからだとも思う。自分がまち・場づくりをするときはこのような組織を作ってチャレンジしてみたい。また、この場での時間を大切に今後も活動していきたい。

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