あなたと私
「あなた、本当に大丈夫なの?」
「もちろんさ。今月帰還したシャトルのメンバーの報告だと、酸素も豊富で人間が生きていくには最適な環境ということらしいぞ」
「そういうことじゃなくて、あなたの政治生命にも関わることなのよ。」
「君には心配ばかりかけて申し訳ないとおもっている。だけど、この事業は私の夢でもある生まれながらの貧富の差をなくす社会の第一歩になるはずだ。移住した人が平等に宇宙の果ての先の星で1からリ・スタートする。平等であると同時に努力が認められる社会でもあるんだ。」
「私はあなたを信じているわ。」
「ありがとう。今晩は乾杯しよう」
あなたと出会ったのはもう30年前。21才のあなたと私は19才。よくあるキャンパスで出会い交際が始まった。
あなたが設計事務所に就職が決まった日に、学生結婚。子供を授かった年に独立。
私の32才の誕生日、プレゼントくれた後に「政治家を目指す」と言われたときは本当にびっくりした。
建築士と政治家の2束のわらじになって11年のあなたが45才になった年に、ペケーニョアモール党の党首になるなんてね。今でも信じられない感じ。
*
ついに旅立つ日がやってきました。
この日を待ち望んでいたけど、結果は現政権に追い出される形になっての旅立ち。
予算もほとんどゼロになったし、あなたが築きあげてきた会社の財産をすべて積み込むことになってしまった。
でも私はずっとあなたを信じています。
「あなた、今日この日集まってくれた方々に何か話してください」
「ああ、皆さん、私達に賛同下さり本当にありがとうございます。今日私達は偉大な一歩を踏み出します。この混沌とした社会から、新たな社会をつくる第一歩になる記念すべき日です。最低限の生活するに必要な居住空間と食料はこの5年間で充分確保しています。星に着いたら、私達が街も社会もゼロから皆さんと一緒につくっていきましょう。戦争も貧富の差もないそんな街づくりに協力してください。」
拍手と歓声が鳴り響いた。
「さあ!宇宙の果ての先の星にたびだちましょう!」
私はあなたの腕をとりギュッと手を繋いだ。
そう、あなたが21才、私が19才で出会ったときのように…
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