そして彼は来なかった
この星での最後の食事は、ため息と共に独りの食事となった。
彼となら“宇宙の果ての先の星”でも楽しくやっていけるとおもってた。
でも彼が今日こないこともわかってた。
でも私は決めたんだ、あの星で生活するって。
「ホットコーヒーお待たせしました」
「ありがとう」
あれ?コーヒーってこんなに美味しかったかな。
この星で最後に口にした食事は、味気ない気持ちとは裏腹に想い出深い口当たりだった。
「さあ、いこう!」
彼女は自分自身に言い聞かせるように、あえて言葉を口にして椅子から立ち上がった。
*
「はやくしろ!」
「はいっ!今いきます!」
今日も猛烈に暑い。温暖化で気温が上昇していると言われていた時代がある意味懐かしい。
外気の熱をエネルギーに変える技術が導入されてから、温暖化は国レベルで推進されている。今は僕らのような外の世界で仕事する者たちと、それの恩恵で快適な生活をおくる内の世界で生活する者とくっきり優劣がついている。
「一緒に宇宙の果ての先の星で新たな生活しましょう」
その約束の出発日は今日だ。
僕は結局ロケット空港に行かなかった。
いつものように起床して、いつもの時間に会社に出勤した。もうこの段階で彼女との約束は果たせない、彼女とももう逢えない。
僕が選んだ決断だから仕方ない。
*
「フライト時間が遅れましたこと、誠にお詫び申し上げます」
フライト時間が遅れるとアナウンスがあった時、ふと彼がギリギリで私のもとに来てくれるかもなんて期待してしまった。
「大変お待たせしました。これより当機は『宇宙の果ての先の星』へと参ります。フライト予定時間は約5年〜10年になります。ごゆっくりおくつろぎ下さい」
バイバイ….
彼女は心の中で彼に向かって呟いた
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