高校生クイズ2020参戦記その6

※この感想文はHuluのディレクターズカット版を観ながら、ツイッターでツイートしたことを織り交ぜつつ書いています。本編及びディレクターズカット版のネタバレを含むのでお気をつけください。
前書き6

時間があるときにぼちぼち書いていこうと思ってた参戦記、気がつけば春。なんでこんなに長スパン連載してるの? ただでさえ読みにくい文章なのにこんなに期間開けてどうするの? 読んでくれてるクイズファンの人(まだいると信じたい)に申し訳ないと思わないの? このままだと完結する前に高校生クイズ2021の発表来ちゃうよ? 最終回に「ーーーすべてがはじまる」っていうコーナータイトルで今後の高校生クイズの展望について語るっていう計画完全に頓挫してるよ?

という自虐ネタを挟んだところで、何とかそれなりのクオリティを保った文章を書き上げなければならないのですが……

正直、書きたくない。参戦記自体を書きたくないわけではありません。むしろ決勝は早く書きたい。では何を書きたくないのか。答えはここ、準決勝です。

テレビ版ではこの部分がカットされ、Hulu版のみの放送となっているので、存在を忘れていた方ももしかしたらいるかもしれません。勝ち進んだ1回戦〜4回戦、負けたものの清々しい気持ちで終われた決勝戦と違い、この準決勝は勝ったのにお通夜ムードになるという悲惨な戦いでした。本音を言うとあまり積極的に思い出したくはないのですが、『第40回高校生クイズ』を語る上で蔑ろにしてはいけないラウンドだというのも事実。避けては通れないのです。橋だけに。

激寒ギャグで場を整えたところで、本編です。どうぞ。

(思い出したくないの影響なのか、今までの回と比較して、心なしか内容が薄いです。というか指示出しが宗像君だったので僕目線だと言えることが減ってます。ご了承ください)


画像1

↑美術部の妹が描いてくれた

ブリッジ・オブ・グローリー

何がグローリーだこの野郎ぅぁぁぁぁ!!!!

失礼、取り乱しました。


何度目かの顔合わせ。今までの回に比べれば数えるほどしかない顔合わせでしょう。敗北した広島大付属に思いをはせつつ、突然準決勝が始まりました。「ここまで来れると思ってなかった」は本心です。もっと勝ち気でいけ。1日戦い抜いて(待ち続けて)へとへとなのに、ここから1時間のシンキングタイムはドSもいいとこですよ。

そして本編では語られなかった超重要情報。

「もしここで1チームしか橋を渡ることができなかった場合、敗者復活戦や決勝戦は行わず、橋を渡ることに成功した1校を優勝校とする」

この一文を認知してるかどうかで見方やプレッシャーがまったく変ってきます。準決勝が決勝になるという、高校生クイズ史どころかクイズ史そのもので見ても前代未聞な処置が行われるところでしたよ。


ルール概要や使えるもの一覧(番組曰く「ホームセンターで買えるもの」なので例年とほぼ同じと考えていいはず。その他、ネジなどの工具は別に用意されていた)、橋付近の間取りや、さらにはJO1の皆さんの身長・体重まで、必要な情報が送られてくる。が、疲れで全然頭が回らない。3回戦と違ってやれることが多すぎるから逆に何していいか分からない。アイテムはほぼ必須になってくるであろう綿ロープから、荷締めベルトなる高校生には見慣れないものまで。放送された他にもいくつかアイテムがあり(発泡スチロールでできた小さなボールとかいう本当に意味不明なものまであった)、しかもどれが想定解になっているかが分からないのですべてのアイテムに対して疑心暗鬼状態に。

禁止事項は「スタート台から降りて作業すること」「橋の下に物を置いて橋脚を作ること」の2つ。要するに「橋の下は奈落になってる」みたいなイメージで考えればよかったのですが、ここで若干の思い違いをしたことが僕を正解から遠ざけることになってしまいました。(後述)

補足をすると、リモートなので当然、こちらが伝えたアイデアをスタッフさんに実現してもらう形になっています。そのため、こちらが知り得ない情報については番組側で改善してくれます。例えば僕たちの板付きソリは、ソリの強度を知ることができない僕たちのアイデアそのまま、スタッフさんがソリを板で補強してくれたことで完成したものです。


さて、動かない頭で考える。出来ることが多いうえに、ローション、バランスボール、スポンジシューズ等々、到底使えるとは思えないアイテムも多い。それでもわざわざ書いてあるということはこの辺りのアイテムを使うのが想定解なのか……? いや、博打はしたくない。自分たちの思う正攻法で突破しよう。

このクイズにおける正攻法は、おそらく「橋を補強すること」。垂れ下がった橋の先を持ち上げれば補強としては効くはずだ。真上に持ち上げることはできないので斜めに持ち上げることになる。橋の先を補強するために必要なことは(多分)2つ、「何らかの力で引っ張ること」と「橋の先に何をひっかけること」。この2つをすれば「補強をした」と言えるのではなかろうか。

第一関門、「何らかの力で引っ張ること」。わずか2人の力で成人男性が渡る重量を支えるのはちと厳しい気がする。他に力を掛けれるものを探していると、土嚢が使えることに気づいた。台から降りることはできなくても、場外を使うのは構わないはずだ。ルール上問題ないことを確認し、土嚢を後ろに吊るして力を加えることにした。物理が良くわかってないのでまともに計算できないのが痛いが、そこは目をつぶろう。つぶらせて。

ここまではいい。問題の第二関門「橋の先に何かを引っ掛けること」。あまり大型な装置だと先にたどり着く前に橋が壊れてしまう。いくら丈夫な引っ掛かりを作ったとしても、作戦を実行できないことにはどうしようもない。何かいい軽さのものはないかと思案していた僕たちの目に留まったのが、そう、ソリ。ソリなら棒で少しずつ押していけば問題なく先までたどり着いてくれるはずだ。ロープをうまいこと調整できれば持ち上げられるか、いや、厳しいか、それでも他に方法はないんじゃないかと議論を重ね、このソリ作戦を実行することに決定。僕たちの願いはソリに乗せていく。

ここまで書いてわかる通り、一番怖がっているのは橋が壊れること。とりあえず実行に移すことができなければどうしようもない、実行できて初めて成功の芽が出ると考え、橋を壊さないことを最優先で作戦を考えた。

ここまでの主導は宗像君。コミュ障の僕はほんと君を誘ってよかったよ……

(完全に脳が死んでいる状態だったので「ソリとローションを使って『SASUKE』のダウンヒルジャンプみたいな要領で跳ぶ」とかいう案が頭の中を駆け巡りました。危なすぎるとかそれ以前の問題なので当然却下。他には「『ゼルダの伝説風のタクト』の「カギつめロープ」の要領で対岸にロープを引っ掛ける」とかいうトンデモ作戦も。即決で却下)

スタッフさんに作戦を伝え、この日はこれで終了。この作戦で本当に上手くいくのか、ソリじゃなくて別の装置を組んだ方が良かったんじゃないのか、他の高校はどんな策を練ったのか…… これまでの人生で経験したことのない不安を抱えながら眠りについた。

翌日、昼からの収録となり、予選も含め我が家に4度目の集合。出番は4校中最後となった。何度もトイレに行き、緊張と不安を拭えない。あまり性格の良くないことだと分かっていつつも、僕は他チームの失敗を願わずにはいられなかった。


ーーーここからしばらく観戦タイムに入りますーーー

天王寺高校

ベニヤ板作戦

僕の考える正攻法である「橋の補強」を行わず、「新たな橋を掛ける」という作戦を取った唯一のチーム。ベニヤ板だけではなく、紐で引っ張って体重を軽くするという理系なアイデア(文系目線)も合わせて実行。実際にベニヤ板に触れていれば、橋の垂れ下がりを意識していれば突破できていたかも分かりません。

1回戦から準決勝まで、圧倒的強さを見せ続けた天王寺高校。『第40回高校生クイズ』において一番強かったのは優勝した渋谷幕張ということに異論ありませんが、それ以外の49チームから最強を選ぶなら、僕は天王寺だと思っています。

渋谷幕張高校

L字型作戦

安積と同じような作戦を、さらにしっかりしたアイテムを作り実行。(安積がこれをしなかったのは、前述の通り重さで橋が壊れることを一番恐れていたため) 橋の先って意外とスペース無いんですよね。ソリですら苦戦したいやらしい隙間です。

ちなみに「渡れる可能性があった」と言われたので「渡るのは難しい」と言われた安積(後述)の完全上位互換なのではと感じる方もいるかもしれませんが、渋谷幕張は渡るフェーズまで行けなかったことを考えるとそうとも言い切れないと思っています。

長野高校

かぎ爪作戦

橋を斜めではなく横に引っ張る作戦。先に行けば行くほど支える側に負担がかかってしまうのがネック。松丸さんが解説した「てこの原理が逆に働く」は常に付きまとう厄介なポイントとなりました。(一応僕の頭にもその考えはあったのですが、例によってまともな計算ができないのでちゃんと警戒できてたとは言い難いです) 一度戻さなければもしかするとと思うと、いつ勝ちが決まってもおかしくない状況です。


3チームが惜しいところまで行き、それぞれ散っていった。緊張の中を何とか待ち続け(作戦説明のときの顔色が目に見えて悪い)、ついに安積のターンだ。どうにでもなれ!

安積高校

ソリ作戦

桝さん「安積高校はここで成功すれば優勝が決まりますが、ーーー」

……はい? なんだか聞き捨てならないことが聞こえましたよ?

緊張で回っていない頭が、この発言で混乱状態に。他のチームの結果など聞けるはずもなく、正常な判断ができなくなった僕はとりあえずこの言葉を忘れることにした。


ほぼ全ての指示は宗像君に任せ、僕は基本図を見せるのに徹する。荒井さんの言った通り、3人で考えたことを信じてやるだけだ。桝さん命名「鼻フック作戦」実行!

まずはおもりである土嚢を後ろに寄せる。高さが足りなかった場合はスタッフさんが同じぐらいの力で引っ張ってもらうことになっていたが、それはしなくても大丈夫そうだ。

引っかける向きを考えてソリは裏向きにしてもらい、慎重に慎重に、少しずつ棒に押されて、小型特殊マシン・ITATSUKISORIが進んでいく。狙った通り、橋に負担は全くと言っていいほどかかっていない。特に問題なく先の方までソリが来る。

問題はここからだ。思った通りにソリが落ちるか。

ソリが橋の側面に落ちる。これだとまだ不十分だ。下まで落とさなくては。

落ちる、いや、落ちない。ゴール側の下の部分を使って引っかけるつもりが、ソリがゴールの上側に邪魔されて橋の下側に回らない。まさかソリが通らないほど狭いとは。

一度戻せれば……駄目だ。大悟さんが指摘した通りロープが食い込んでしまい戻すことが難しい。特に真ん中のロープの食い込みがひどい。ロープを振って何とか外せないが試してくれているが、外れない。思っていた計画は完全に失敗に終わった。仕方ない。スクランブルに移そう。


作戦を緊急変更。斜めに引っ張れなくとも、横に引っ張れば少しは力がかかり、橋の補強になるはずだ。正直成功するとは思えないが、方法がある限りはそれを試すしかない。ギブアップだけは絶対的NGだ。さあ、審判の時。

白岩さんが慎重に渡る、1歩、2歩…… もしかして希望を持てるのか? と思ったその時、3歩目でソリが外れた。これで僕たちの作戦は事実上破綻。失敗だ。(今映像を見ると、もしかしたら外れたソリが白岩さんに直撃していたかもしれないと考えると少し怖い。危ないことをさせて申し訳ないです) 橋の先が狭かったのが何よりの誤算だった。

専門家の白數教授によると、ソリが上手く引っかかったとしても、人が渡れるほどの力で支えることは難しかったそう。橋を壊さないことを考えすぎたゆえの失敗だ。渋谷幕張が同じような方法を使っているとは知らず、この時は自分たちが敗退チームに選ばれるだろうという絶望感でいっぱいだった。


最後のチームだったのですぐに結果発表になる。「渡れれば優勝」発言を信用していいならどのチームも成功していないことになるが、どうだ。

桝さん「橋を渡りきることができたのは……いませんでした!」

とりあえず安堵。他の3チームの違って予想できたことではあるが、もうこのラウンドで痛い目を見過ぎているため何も信じられない。本当にどのチームも成功していなかったのか。助かった。

本当に重要なのはここからだ。成功の確率が低かったうえに、かなり単純な方法を使っていた安積は「想像力が乏しい」と判断されても仕方ない。命運尽き果てたかーーー

白數教授「残念ながら決勝に進めないのはーーー」

来るな!

白數教授「ーーー天王寺高校さんです」

勝ち残った。尽きたように見えた命運がか細く残っていた。力が抜けてうなだれる僕に対し、荒井さんがかけてくれた言葉が忘れられない。

「大和田君!私たちは勝ったんだから胸を張らないと!」

その言葉を聞いてはっとした。今一番落ち込んでいるのは、間違いなく天王寺だ。天王寺が持っていない権利を持っているならば、僕たちは胸を張らなくてはならない。勝者は気高くあらねばならないのだ。本当に荒井さんにはメンタル面で助けられっぱなしだ。

震えつつも姿勢を戻す。少なくともカメラが回っている間は崩してはいけない。それが勝者としての敬意だ。


今回はここで反省タイム。

勝因は、偶然とはいえ「渋谷幕張と同じような方法を使ったこと」、これに尽きると思います。渋谷幕張は上手くいくと思われる方法を考えたが、それを実行するには至らなかった。安積は部分的に作戦を実行したが、成功する確率は低かった。どちらにも良い点・悪い点があり、どちらかを判定負けにするという判断は少し難しいです。1校だけ敗退という形に救われました。(こう書いてはいますが、これは結果論で2校のどちらかが選ばれる可能性も否定できなく、危なかったことは事実です。それに、安積は作戦を実行したと言っても部分的なものだったので、もし僕が2択で選べと言われたら安積を敗退にしていたと思います)

逆に天王寺の敗因は、不幸にも他の3チームと別のアプローチだったことに違いありません。ただ、ベニヤ板を縦にして成功していればその時点で優勝だったので、結果的に1番優勝に近くもあり1番敗退に近くもある作戦でした。


ここで模範解答の発表。使われたのは、気になってはいたけど使いどころが分からないので無視していた荷締めベルト。「吊り橋のようなもの」「吊り橋のような構造」ではなく、真に吊り橋を作っていく。言われてみれば、一点だけで支えられる吊り橋なんかそうそう存在しない。しかも、少しずつ進みながら作れば段々先に行けるのだ。ここでようやくルールの誤認に気づいた。そうか、台から降りることが出来ないだけで橋を進みながら作業することは可能なのか! (余談ですが、僕は2019の県決勝もルール誤認で敗退しています。学習しろ) こうして完成した吊り橋は、あれだけ脆かった橋の先でジャンプをしても問題ないほどに頑丈になっていた。同じ吊り橋でここまで変わるのか。

天王寺の模範解答、というか正解がアイデアとしてあったことで驚く。確かにこんな時間がかかる方法がテレビで模範解答として採用されているとは思わないが、結局それは僕たちの思い込みに過ぎなかった。判定勝ち・判定負けという僅かな差、天王寺は本当に優勝していてもおかしくなかった。


(実際の時間軸ではここである話があったのですが、僕のとある都合からその内容は次回に回させていただきます)


休憩に入る。気持ちは相変わらず沈んだままだ。それでもこのタイミングを逃すわけにはいかない。僕はマイク越しに天王寺に声をかけた。

「また来年高校生クイズで会いましょう」

頭が真っ白になりつつあったので、声の掛け方が正しいかは今でも分からない。けど、話さずにはいられなかった。僕たちは高校生クイズでつながった。ならば、勝ち残れるかは分からないけど、来年もう1度高校生クイズで会おう。それを伝えたことだけは未だに間違っていなかったと思っている。

偶然にも、安積も天王寺も長野も渋谷幕張もみんな2年生だ。広島大付属も1年生。それなら、受験だったり何だったりで忙しくはなるけど、また「高校生クイズ」という舞台で再開できることを信じたい。来年こそみんなで同じ場所に集まって、今年できなかった分まで仲良くなろうじゃないか。


激闘を経て、僕たちは決勝に進出した。ここまで来たからには目指すは優勝のみだ。

総括6

言いたいことについては文中で全部話しつくしましたね。1個だけ抜けてる話は次回。

次回、ついに完結編です。

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