青い珊瑚礁

①プロローグ
カランコロン「いらっしゃいませ」
男の大きくもなく小さくもなく程よい感じに聞こえてくる声が響き渡る
店内は薄暗くバーテンダーが1人シェイカーを振りながら接客をする
薄暗い空間と店内のBGMから溢れ出る大人な雰囲気のあるバーである
有名な店では無いが常連客であろうと思われる人達で賑わっている。
店員も1人だけのようだ愛想がよくどこか親近感のある顔立ち
イケメンと言われるほど顔が整っているわけでもないが
小柄だからなのかどこか女っぽく優しい中性的な雰囲気を出している。
「俺初めて会った時本当に女の子かと思ってよー」
薄暗い店内と酔っ払ってる客からしたら本当にそう見えてしまうのだろう
「おっちゃんその話し何回目です?」笑い声が響き渡る
店員の受け答えも慣れたものである
近すぎず遠すぎず。とてもアットホームな態度もあり。
常連の客がいるのだろうと席に着くまでに感じられるそんな空間である。
「おねえさんごめんね、遅くなって。おしぼりとこれメニューね?」
「ありがとう」そんな雰囲気に常連になりそうだなとふと心の中で思った樹里。
樹里がここに来たのに理由などない。合コンが終わり良い感じの男がおらず。
お酒も控えていた為飲み足りなく。回りは男達と二次会に行くということで解散したのだが
終電までの時間つぶしになるかな?くらいの感覚である。
社会人になって3年特に変わったことをしてるわけでもなく
至って普通の生活をして来た。身長は女子の割には高く可愛いというよりかは
キレイと表現するのが似合う女性であった。
あまりバーなどに来たことはないのかメニューを選ぶのに困っていた。
「スティンガー?マンハッタン・・・?」
お酒も詳しいとは程遠いせいぜい学生時代に居酒屋でバイトしてた時の知識だ
カシスオレンジ、ジントニックこの辺までは理解と知識が追いつくが
それ以外のものになるとからっきしダメなようだ。
「もしかしてあまりこーいったお店にこられませんか?」
店員が声をかけてくる「あ・・はい、なんていうかこー難しいんですね」
「最初はみんなそうですよ何が入ってるかわからないまま頼まれる方もいますしね」
と笑いかける店員に対し樹里は「そうなんですね」と少し恥ずかしそうに目を伏せた
「せっかくなのでよく映画とかである感じにやりましょうか?」
「はい?」キョトンとする樹里、それもそうだそんなこと言われても
答え方がわからないし「はいじゃあわたしの気分は・・・」などと
答えれるはずもない。どー答えるのが正解なのか頭を悩ませていると
店員は何も言わずにじっと彼女を見つめた
透き通るどこか子供じみたそんな目が彼女を吸い寄せる。
「青、海岸、空、海」彼は一体何を言ってるのだろう?
「あの・・・」樹里の言葉を遮るように「分かりました待っててくださいね」
店員は手慣れた手つきでお酒を作り出す。あまりの手際の良さに見惚れてしまうほどだった。
シャカシャカシャカと氷と中の液体が心地いいリズムで音を立てる
そーっとグラスの中に注がれる青緑色の液体。カラカラと音を鳴らすシェイカー
音も立てないくらいにそっと中に沈められるチェリーを眺めていたら…
「どうぞ」店員の声で目が覚めた「あのこれは?」
「あなたをイメージして作りましたカクテルで青い珊瑚礁と言います」
「あっ…ありがとう」そういって口に含むとなんとも表現のし難い
例えるならば海、海の中を泳いでいるようなイメージに取り憑かれた
「美味しい」彼女の口から出た一言はそれだけだった。
新しい出会いと素敵な店を見つけたという事実に酷く感動した樹里であった。
②付き合い

カランコロン「いらっしゃいませ」
「どうも…あれ?」樹里は驚いた

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