「偏差指数」を使って、出雲駅伝と箱根予選会を振り返る
暑かった夏も一段落し、秋のロードシーズンを迎えました。実業団はMGCを終え、高校生は全国駅伝の県予選が始まり、大学長距離は三大駅伝を筆頭とした駅伝シーズンが始まりました。
その内、今回は出雲駅伝と箱根駅伝予選会にフォーカスを充てます。
例の如く数字遊びをするのですが。
今回は、標準偏差を用いて、各選手が対象区間の平均値と比べてどれだけ速く(遅く)走ったかを分析していきます。
出雲駅伝は各区間ごと、
箱根駅伝予選会は上位300位の平均を計算し、
それぞれから算出した標準偏差を元にして、各校の課題と収穫を読み取ってみようと思います。なお、時間の都合上、関東の大学長距離に限定します。
出雲駅伝(10月9日開催)
上位結果
まずは、出雲駅伝の結果から。
偏差指数
続いて、各区間の結果から算出した偏差指数(※)を載せます。
偏差指数0.00=平均値と同じくらい、指数1.00=平均より偏差1個分飛び抜けて速い、と考えて頂ければ幸いです。なおタイムを整数化する過程で、そのまま計算するとマイナスとなってしまうので、プラスに反転させています。
※偏差指数【-(区間個人タイム-区間平均タイム)÷標準偏差】
複数区で持続した勢い
結果は以上のようになりました。出雲駅伝では21チーム(1区のみ20チーム)を対象に各区間ごとに計算しました。関東の大学だけでなく、全出場チームを対象としています。
まず、駒澤大が唯一のオール緑色と、全ての区間で偏差1個分以上飛び抜けていた、まさしく圧倒的な力を見せつけた事が分かります。1区篠原倖太朗と2区佐藤圭汰で共に区間賞を獲得しても勢いが衰えなかったのが凄まじいです。
次に、2位の創価大は3~5区(L.カミナ、山森龍暁、吉田響)、3位の城西大は2~4区(山中秀真、V.キムタイ、林晃耀)で後続を引き離した事で表彰台に躍進し、共にこの大会の学校最高位を更新しました。
伸びを欠いた4位以下
4位以下は…2区以降やや爆発力を欠いた國學院大、最初から不安定だった青山学院大、3区石塚陽士でよもや躓いた早稲田大、1区浦田優斗が失速も意地は見せた中央大、下位安定に留まった東洋大と法政大、唯一2度伸びなかった順天堂大、といったところでしょうか。
偏差に注目すると、10.4キロと距離の長い6区が80秒と最もばらけてました。スタートの1区(8.0キロ)と、ある程度距離が進んだ4区(6.2キロ)と5区(6.4キロ)の偏差が50秒前後で同じくらいなのが面白い所でしょうか。1区は終盤まで大集団で進む事が多いので、ばらけが少ないのは目視通りと言えるのかもしれません。
箱根駅伝予選会(10月14日開催)
結果
箱根駅伝予選会の総合成績は↑をご覧ください。
通過校と偏差指数
今年度は記念大会の年で通過校が通常より多い13校に増えています。通過校と次点の東京国際大、合わせて14校の偏差指数を以下に並べました。
上位300位の平均は1時間04分15秒、標準偏差は65.13秒でした。
なお、前回大会は1時間05分18秒、標準偏差79.95秒だったので、全体的に速い展開でなおかつ接戦だったようです。
上位通過校の分析
2位通過の明治大、4位通過の日体大はチーム10番目まで平均タイムより速く走りました。トップで通過した大東文化大は、留学生P.ワンジルの途中棄権というアクシデントがありながら1位通過を果たしました。この3校の総合力の高さが分かります。
日大のキップケメイは1時間00分16秒で個人優勝を果たし、日大の5位通過&4年ぶりの本選進出に大いに貢献しました。偏差指数は3.66と、他校のエース2人分の破格の走りを見せたとも言えそうです。
8位通過の国士舘大はP.カマウが1時間01分31秒で個人6位、偏差指数は2.51でした。ここ数年と比べて上の順位でボーダーラインに掠らず通過を果たしました。留学生以外にも戦力が増しているかもしれません。
通過/敗退を分けた「エース」
エースの際立った走りで通過したのは日大、国士舘大に加えて東京農業大、駿河台大、山梨学院大の5校でした。
驚いたのが1時間01分42秒の9位(偏差指数2.34)に入った前田和磨です。大学ルーキーながら東京農業大を14大会ぶりの全日本大学駅伝出場、10年ぶりの箱根駅伝出場にも導きました。スーパールーキーが近年予選通過が出来なかった大学から出てくるのは末恐ろしいです。華の2区デビューなるでしょうか。
12位通過の駿河台大は下馬評の低さを覆して2年ぶりの出場を果たしました。去年走ったM.ゴッドフリーとの別の留学生S.レヤイマンが1時間01分56秒の10位(偏差指数2.13)と好走し通過を果たしました。
山梨学院大はハラハラものでした。J.ムトゥクが個人3位の1時間00分46秒、北村惇生も1時間02分23秒で個人18位(それぞれ偏差指数3.20と1.71)に入り、9番目以降が失速する中でこの2人の貯金が大いに活きました。
東京農業大の並木寧音、駿河台大の新山舜心、そして山梨学院大の北村惇生。この3人はチーム2番手かつ好成績を残したという共通点があります。並木は29位、新山は30位、北村は18位と、チーム2番手が上位通過した大東文化大や明治大らに劣らない順位でゴールしたのが予選突破の要因と考えてます。
東京農業大、駿河台大、山梨学院大の3校に比べると、東京国際大は転倒のあったL.エティーリに加え、チーム2番手が1時間03分02秒に留まるなど思うように貯金を作れず、12位駿河台大に10秒、13位山梨学院大に3秒及ばず本戦出場を逃す結果となってしまいました。
まとめ
以上、出雲駅伝と箱根駅伝予選会の結果について指数化して講評してみました。つたない文章でしたが、高評価を頂けると嬉しいです。
より上位を目指すには、エース1人の力だけではなく、エースを支える複数人の主力が爆発的な走りを見せつける事が重要なのかもしれません。
怪我や故障でベストメンバーを組めないレースも多々ありそうですが、今組めるbestなメンバーでミスの少ない走りをする事も上位進出に向けては欠かせません。
今日は以上です。次回は全日本大学駅伝で今回と同じような講評を行おうと思っています。ご試読ありがとうございました。
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