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携帯料金値下げについて思うこと

ついに携帯大手3社の新プランが揃い踏み、価格はほぼほぼ確定した寡占市場の中で通話を含めるか等のオプションを巡る争いが繰り広げられているが、筆者にはタイミングや他の法案との兼ね合いに思うところが幾つかある。この記事ではそれらについて5Gの特徴や必要性を交えながら言及していく。

まず、値下げは当然消費者にとっては良いことである。時代が進むにつれて通信容量の増大は必至であり、GBあたりの単価が安くなることはユーザーを通信制限のストレスから解放する。今回の価格改定は中容量帯と呼ばれる1人月20GBのプランで大体3000円なので、これに移行する人のほとんどが料金は据え置きか微増で容量が倍になる、或いは無制限プランは不必要だったので半額になる、といった感覚だろう。ただ、もう一つ移行する大きな動機がある。

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iPhone 12を筆頭とする5G対応端末を活かすには5G回線が必要だ。

それが20年後半に出揃ったiPhone 12をはじめとする5Gデバイスだ。これらのポテンシャルを最大限発揮するには5Gの基地局を持った回線主、つまり大手3キャリアか楽天モバイルが欠かせない状況になっている。というのも、5Gで回線が速くなるのに伴って、月額制という形態の上では共に容量が増えるのが自然であり、格安SIMと呼ばれるMVNOの扱う低容量帯とは相性が悪いからだ。こういった事情を鑑みると、今回の一連の値下げは「普段からWiFi環境下で動画コンテンツなどを多く消化する一般的なユーザーに向けて、WiFi環境外でも多少、同程度のユーザーエクスペリエンスが得られるようになる値上げ」と捉えても相違ないはずである。これはまさに、行動心理学でよく用いられる松竹梅を設定し、竹を選びやすくする手法だろう。

筆者がこういった穿った見方をするのにはきちんとワケがある。それは、筆者自身が先に述べた一般的なユーザーであるにもかかわらずその恩恵を享受できそうにないからだ。その理由を後述しよう。

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総務省は19年6月、大手キャリアにおける2年縛り問題を解決するために解約金を1000円以下、端末値下げ代金を2万円以下に制限すべく法改正することに決めた。ここで問題なのは後者である。元々日本はiPhoneやGalaxy、Xperiaなどのハイエンド機種が市場を牽引しており、筆者を含め多くの人々は確かに2年縛りにまんまとハマっていたが、それはハイエンド機種を使う上で通信品質も一番良く、大手キャリアで端末を半額ほどで手に入れるのがコスト面、パフォーマンス面ともに最善手であったためだ。それがよりにもよって5G元年と呼ばれた20年直前に廃止され、5G端末を安く手に入れる方法は減り、加えて各種キャリアは法を違反しないように4年契約にして2年で返却すれば残り半分の代金を支払わずに済むという新手の技を生み出した。この結果がユーザーのためと施行された端末料金値下げ制限の効用をよく物語っている。

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そして、その法改正の目的であった「公正な競争環境の整備」が行われた後、またもや総務省の圧力によって引き起こされたのが今回の「値下げ競争」である。ここでは例としてdocomoのahamoを挙げさせてもらうが、ahamoは以前までdocomo回線から乗り換えた場合、docomoの契約年数がリセットされる仕様だった(現在は修正済み)。ここから分かる通り、元々この中容量プランはキャリアとは別に、格安SIMのような扱いで市場に出る予定だったということだ。つまりこのプランが意味するところは松竹梅の竹ではなく、あくまで格安SIMの最上位、プレミアムプランであったことを意味する。これはソフトバンクのLINEMOも改称前はSoftBank on LINEで、ソフトバンクと提携して格安SIMを提供するLINEモバイル母体で運用するつもりだったことからも明らかで、3社共通である。はたして「公正な競争環境の整備」はMVNOを食い潰し、多様なプランを一直線上に並べることを目指していたのだろうか。

はたしてこの値下げは、一体誰のためのものなのだろうか。

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