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「好きなことは仕事にしたくない」学生さんへ|消耗しない働き方

 半年間、女子大に通ってました。そこで学生さんと語り合ったときの話です。「好きなことは仕事にしたくない」って思うんですって。
 彼女たちが言うこと、なんとなくだけど理解ができた。なんとなくしか理解できなかった。
 そんなふうに思わせちゃった大人の責任を考えた。そんな話です。
(2022年11月22日加筆・修正しました)

 就職する前、働く前から消耗しちゃってる。先行き不透明な中で働いて生きていくの。うん大変だ。ちょっと楽になりたいね。

■大学生とキャリアとの話をしました

 2019年半年間、40代後半の私は女子大のキャンパスに通っていました。一度社会人になった人のためのリカレント教育課程というものです。
 大学を卒業して25年ぶりの通学です。真面目に毎日、学校に行ったのは中学生以来でしょう。

 現役学生が自主運営する勉強会がありました。勉強会のメンバーさんが「これまでのキャリアを話してくれるリカレント生はいませんか」って誘ってくれました。
 25年間、市役所で働き続けて退職したばかり。「公務員の仕事に興味がある人がいたら」って手を上げました。
 6人くらいかな。学生さんが集まってくれました。

■「好きなことは仕事にしたくないんです」って

 2回生から4回生、そして大学院生。学生さんそれぞれに就職をどう考えてるの、って聞きました。

 そしたら、一人の学生さんが言うんです。「好きなことは仕事にしたくない」って。他の学生さんも、わかる、わかるってうなずきました。
 どうやら「好きなことでも仕事にしたら苦痛になる。苦痛になって嫌いになりたくないから好きなことは仕事にしたくない」ということ。らしいです。

 市役所では、華やかな仕事も地味な仕事も切実な仕事も理不尽な仕事もあった。いろんな仕事をしたけれど基本的には楽しかったな。なんて気楽に話した後でした。私、けっこうなショックを受けました。

 そんなに思ちゃうほど仕事って嫌、なんや。

■そういえば我が家でも言っていた

 私には学生さんと同じ世代の娘がいます。かつて娘2人に「公務員の仕事も悪くないよ」って言ったことがあるんです。どんな仕事に就きたいの、って文脈で。

 そしたら娘、思いもよらぬ答えを返してきました。
 「今さらよく言うわ」ですって。

 どうやら母は仕事のグチをいっぱい言ってたみたいです。疲れて帰って来る母。休日になると思いっきり寝坊してだらだら過ごす母。その姿を見てたんですね、娘達。

 母のグチを聞き、へとへとな姿を見てしまったらおんなじ仕事に就こうとは思わない。だよね。

 グチだけじゃなくって、やりがいとか、がんばった話とか、お客さんに褒められた自慢とかも話してたと思うんですよ。なのに、ねー。

 公務員になってほしかったのに、と、そういうことではないですよ。公務員だけが疲れるんでもないしね。
 母の日常の姿が子どもの仕事観に意図せぬ影響を与えていた、与えてしまっていたってのが、ただただ悲しいんです。

■子どもに本を読ませるには親が読む

 「『おはよう』って言わないお父さんが『あいさつをしなさい』っていくら言ってもあいさつする子には育ちません。本を読まないお母さんが『本を読みなさい』っていくら教えても本を読む習慣は育ちません」かつて子育てセミナーで「もっともだ」と思って聞きました。

 そうなんです。学生さん達はお父さんやお母さんや身近にいる人の姿を見て育っています。身近な人だけでなく、テレビに映る大人たち、メディアで表現される「仕事で消耗しきってる大人」を見て育ってます。そして仕事をする姿を思い描きます。

 働き出す前から仕事に消耗してしまってるんです。母たちのため息一つ、グチ一つが娘たちを消耗させてしまったんです。

■後悔は置いといて、消耗しない働き方

 働く人が消耗しない働き方を手に入れられるように。将来を担う子どもたちにも消耗しない働き方がつながるように。

 働くことで得られるのはお給料だけではありません。仕事の一つひとつが誰かの仕事と関係し合って、影響し合って世の中が動きます。仕事の失敗や成功が経験となって自分を育ててくれる側面もあります。

 社会の成り立ちの中の、小さな歯車一つひとつの存在と役割、その貢献を感じたいし、感じて欲しい。自分がそれを感じながら働くには。誰もにそれを感じてもらえる環境を作るには。

 簡単に書けることでもできることでもないでしょう。具体が示せない結びになってしまいましたが。私に今、できることを思って書いています。

 

 

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