ショートショート「アボカドかアボガドか」
山田は最近散歩をすることにはまっていた。そして、この散歩ではスマホを家に置いていくことにしていた。
スマホを持っていると、つい見てしまい散歩に集中できなくなってしまう。また、自分の家が役所の近くにあり、迷ったとしても最悪交番で聞けば何とかなると思っていたからである。
その日も、スマホを持たずに歩いていると山田の頭を「あれ?アボカドだっけ?いや、アボガド?」という疑問が過った。
すれ違った女性の紙袋の中にそれが一杯に入っていたからである。紙袋いっぱいのそれも気にはなりそうだが、山田はそれには気を留めなかった。
最初は帰ったら調べれば良いと思っていたが、段々気になってきて散歩に集中出来ない。そこで山田は一回立ち止まって頭の中で考えてみることにした。
「アボカドだよな。でも待てよ、あんなに丸いのにカドっておかしくないか。じゃあ、ガドの場合はどうなる?ガドガドガド。ガードか?結構固いしなあいつ。あれ?固い?硬い?どっちだ?やばい、疑問が止まらない。そもそも、アボカドかアボガドのどちらなのか?アボガト、アボカト、アホガド。いや、落ち着け。アボカドかアボガドのどちらかだ」
山田の頭の中は、アボカドとアボガド、硬いと固いで一杯になってしまった。スーパーで確認しようにも近くにあるのはコンビニばかり。
仕方なく山田は家に帰り、 スマホで調べてみると疑問は解消された。すっきりした面持ちで再び歩き出すと、違う疑問が頭を過る。
「あれ、野菜だっけ?いや、果物か?」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?