2024年(令和6年度)神戸大学法学研究科(神大ロー既修)受験記(再現答案あり)


はじめに

2023年の11月18日実施の神大ローの試験を受けてきました。その前週あたりから風邪をひいて寝込み、受験自体も危ぶまれる中で何とか試験会場に乗り込み、無事に合格することができましたので神戸大受験記を書いておこうと思います。

参考までに私のスペック
・関西の国公立大法学部卒業
・GPA不明。足切りの心配はしなかったけれど多分あまりよくはないです
・ここ数年は法律に触れることなく時が流れていた(それまでは自分なりに頑張っていたつもり)
・2022年8月(昨年)、思い立って関西の私立ロースクール(既修)に出願したものの勉強のための時間が取れず無勉で突撃、怪文書答案を作成し合格。しかし、諸事情で進学を断念し関西の国公立ローに出願することに
・2023年3月頃に上記私大ローの進学を断念したものの、その後諸事情により勉強に取り組める状況になく、関西国公立ローの勉強を開始したのは神大ローの試験から1か月と3週間前(私大ロー合格から断念までの間はぼちぼち勉強していましたが、主に短答用)
(諸事情については、今後別記事で触れるかもしれません)
・今年度のロー入試は阪大ローと神大ローを受験していずれも合格
ということで、寝込んでいた日を除くとだいたい1か月半で神大入試期間に突入しました。無勉で私立ロー(4科目の試験でした)に受かれたんだから、7科目の試験もこのくらいの期間があれば足りるっしょ、という見通しでした(甘い)。
恐らく、他の受験生はもう少しロー対策に時間を使えていることかと思いますので、そういう意味でも無謀な計画だったと今では猛省しています。善い受験生も悪い受験生も真似しない方がいいです。

勉強方法(大枠)

時間がないので、やれることはあまり多くありません。そこで方法として採用したのが、ローの過去問を可能な限り解いてそこで出た論点については最低限抑えるようにする、という作戦でした。実際に解いたのは、合格再現答案・構成をアップロードして下さっている方の多い京大ロー5年分、受験予定だった神大ロー5年分、同じく受験予定だった阪大ロー5年7回分(B日程のある年が2回あったので7回)、同じく受験予定だった大阪公立大学ロー5年分です(なお、京大ローは受験予定なし、大阪公立大ローは直前に体調不良につき受験回避しました)。
過去問に出てない問題はノータッチとかハイリスクだろ」案件なのですが、例えば憲法1科目で人権分野21問、統治分野11問と考えるとまあ何とかなりそうな気がしませんか?私はしました。
という訳で、過去問と心中するつもりで1か月半勉強をしました。結論からいうと、過去問で検討したものと同じあるいは似た問題が出た場面もあれば、ヤマが外れて重傷ということもありました。神大ローに関しては過去問検討がかなり役に立った印象もありますし、結果も合格でしたので、過去問検討は重要なのだろうなと思います。
過去問のみ、というやり方は人にそうおすすめできるものではないと思いますが、時間がない方にも過去問優先でやることをお勧めします。

勉強方法(小枠)

試験勉強界隈?でも一定の支持があるポモドーロテクニックを利用して勉強をしていました。ご存じのない方は詳しくは「ポモドーロテクニック」でググっていただければと思いますが、私の場合は25分集中する→3分休憩→25分集中→3分休憩…のスパンでやっていました。
そして、答案構成や再現答案をnoteやブログにアップしておられた方のその内容を大いに参考にさせて頂きました。これがなければ過去問検討も半分出来たか怪しい感じなので、先人の合格者各位にはこの場を借りて心より御礼申し上げます。そういった感謝の意味も込めて、答案構成を私も下部に作成しております。とはいえ、出来栄え的に気恥ずかしさがあることから、軽い閲覧制限を付けるという趣旨で有料設定にさせて頂きます。ご興味のある方はご覧いただけると幸いです。
また、阪大入試で不法領得の意思という超基本事項の定義が飛ぶという失態をかました反省を活かして「試験直前にこれだけは絶対におさえておく事項各科目10個」をピックアップし、すぐ見られるように打ち込んだものを出力して試験直前まで参照していました。この中からいくつか出題もあり、大いに助かったので、個人的におすすめしておきます。

ここが特徴的だよ神大入試

六法

まず六法が持ち込み式ということですね。他のロースクールは基本的に六法貸与式だと思うのですが、神大は持ち込み式です。
事前に受験票と共に受験者心得なるものが送られてきたのですがそこにはこんな風に書かれています。

試験においては,募集要項に示した六法1冊(書き込みのないものに限る。年度は問わない。)の持ち込みを認めます。なお,本学では六法の貸与はいたしません。
持ち込み可能な六法:「デイリー六法」(三省堂),「ポケット六法」(有斐閣),「司法試験用六法」(第一法規/ぎょうせい)
・氏名以外の文字が1文字でも書かれていれば,書き込みのある六法(不正行為)とみなします。各種の印(〇・×・△など)や学籍番号の記載も含みます。線を引くことは書き込みとはみなしません。
・インデックス(持ち込み可能な六法付属のものも含む)や付箋等のついた六法は持ち込むことができません。
(中略)
試験当日は,昼食を持参してください。(食堂・売店は休業中のため,学内で昼食や六法を購入することはできません。また、近くに購入できる店はありません。

2024(令和6)年度 神戸大学 法科大学院 入学試験 既修者一般入試・3年次生特別入試・法曹コース制特別入試開放選抜 受験者心得より引用

このやり方の恐ろしい所は、当日うっかり六法を忘れたらその時点で試験が終わる、ということです(六法抜きで試験を受けきるのはさすがに苦しいと思います)。受験票を忘れても試験を受けることはできるでしょうが、六法を忘れたらほぼ終わりです。受験者心得に書いてあることは本当で、神大からすぐ足を延ばせる六法を売っている本屋・売店はありません。また、試験で使用できる六法も3種類なので、受験される方はよくよくご注意ください。
しかし六法持ち込み可で、線を引くのはOKというルールなので、事前に仕込みをしておくことはできる所がいい所かなとは思います。私は、試験勉強開始前に神大受験用に六法を一冊買い(ちなみにポケット六法でした)、過去問検討の過程で登場した条文に線を引いていっていました。例えば会社法の条文の中に紛れている定義を目立つように蛍光ペンでマーキングしたり、論証を展開すべき文言の横に青いラインを引いておく、などある程度ルール化して書き込んでおいたおかげで、試験の時にそのラインに助けられました。

立地・アクセス等

端的にいうと山の中です。六甲山の登山口よりも高い所にキャンパスがあるので、最寄り駅であるJR六甲道もしくは阪急六甲からバス・タクシーを使うか、登山(歩き)の三択になるかと思います。試験終了後の下山時はともかくとして、試験前に登山をするのは体力を消耗するのであまりお勧めはできません(体力に自信があればこの限りではないと思いますが)。
私は神大試験の一週間ほど前から体調を崩して寝込んでおり、当日の受験すら危ぶまれたこともあり、登山は避けました。また、バスの運行ルートがJR六甲道→阪急六甲→神大といった感じになっているのですが、私は阪急ルート経由なので、バスに乗ると座れない可能性が高く、体調不良の中で体力を温存するために阪急六甲からはタクシーを使いました。事前に予約していたので、当日はスムーズに乗れたのですが、予約をしていなくてもタクシー乗り場周辺にはタクシーが停まっていたので、阪急六甲からタクシーを検討されている方はご参考になさってください。
なお、11月下旬ではありましたが、山の中ということもあり、試験場は結構寒かったです。体調が悪かったせいなのかもしれませんが(暖房は節電のためなのか、一定以上の温度にできない仕様だったようなので、寒いと言っても空調で暖かくはなりません。寒さに弱い方はひざ掛けやカイロなどを持って行った方がいいと思います)。法律以外の内容でも色々試されるのが神大ロー受験ということのようです。

第一次選抜に向けて

神大ローは募集要項を見た感じ、第一次選抜での足切りが無視できない程度の数毎度出ています(R5年度38人、R4年度26人、R3年度31人)。今年度の法学既修一般は受験者数が301人と定員60人の約5倍の人数になっていましたので、恐らく今年も足切りが行われていることと推察します。
とはいえ、学部成績なんかはもうどうにもならない人の方が多いと思います(この記事を読んでいらっしゃる方が神大ロー入試まであと数年ある学部生の方であれば学部成績をできるだけ上げて、TOEICなど英語の試験で好成績を修めておくことですよと言えますが)。なので、やれることは「法曹としての適性」についての作文をなおざりにしないこと、なのではないかと思います。
なお、私は外国語の能力についての証明は提出していませんので、学部成績と作文だけで一次選抜を乗り切りました。作文の方は当たり前ですが問いに答える姿勢を見せることが重要だと思って書きました。内容的には字数設定が多い阪大のステメンから枝葉を切り払って神大用にリメイクしたものなので結構楽をしているのですが、関心のある分野について書き、それにまつわる己の経験について触れ、私は世の中を少しでも良くしたいんだ!みたいな内容を、よく言えば熱く、悪く言えばややケンカ腰の文章で提出しました。
募集要項の表紙裏に求める学生像について書いてあるので、ここに沿ったことが書けた方が評価はよくなるのかもしれませんが、基本的には採点者が読んで意味が分かって、なおかつ(手抜きじゃないな)くらいの仕上がりの文章になっていればいいのではないかなと思います。

神大対策と受けてみた感想について

憲法

統治は出ないので(阪大入試が終わった後は)ノータッチでした。しかし人権の問題がどの年度も考えこませるような問題が多いのが懸念点でした。とはいえ、パーフェクトを目指すのではなく、他の受験生と比べて相対的に沈まなければいいんだと思って勉強していました。神大憲法は出題形式も年度によってバラバラですし、対策が立てづらい印象ですね。
実際の試験では何を書けばいいのかよくわからない問題が出ました。とりあえず基本的なことを書いて、著しく他の受験生に遅れを取らないように努めました。が、ちょっと遅れはとってた気がしなくもないです。

行政法

過去問からして、神大行政法は難しい論点を出す!みたいな感じではなく、行政法にありがちな、個別法を根気よく読んでいく能力を求めているのがはっきりと感じ取れていたので、個人的には論点を覚えるといった作業を事前にしなくていいので助かる問題だなという印象がありました。
試験本番は問いの意図する部分が掴み切れていない気もしつつ、例年通りの出題だったので、他の受験生に書き負けないことを意識しました。

民法

民法は過去問での難易度の波が激しい(たまにすごく難しい年がある)印象があり、難しかったら最低限、易しかったら点を落とさないことを意識して書こうと思っていました。
本番は易しめの問題とやや難しめの問題だった印象です。後者はわからないなりに書きました。

会社法

神大会社法も年度によって難易度の波が激しい(たまにすごく難しい年がある)印象を受けていました。本番は標準程度?という印象でしたが、その印象でついダラダラと書いて民法の時間が少なくなってしまったのが反省点です。(神大ローは民法会社法→憲法刑法→行政両訴の順番での試験でした)

民事訴訟法

例年難易度はそこまで高くない印象です。同じような問題が繰り返し出ているので勉強する範囲が絞れるという点では対策を立てやすい科目かと思います(神大対策何やろう?と迷っている方はまずは民訴・行政法の過去問を検討されることをお勧めします)。本番では今まで勉強した事柄から幅広くアラカルト的に出題されていました。恐らく例年と比べても難易度はやや易に属する出題だったのだと思いますが、私の場合、直前にやっていた行政法で少し時間をとってしまったのもあり割とスピード勝負になってしまい、どれだけ点を拾えているのかという所に不安が残りました(なお、再現答案を書いていて気付きましたが、設問の一つで大きなミスをしています)。

刑法

過去問では第1問がめちゃくちゃ苦手で解ける気がしなかったので、第2問で点数を稼ぐつもりでいました。
が、なんということでしょう、例年から出題傾向を変えての出題で苦手な第1問がまるっと別の問題に置き換わってくれているではありませんか!ということで命拾いしました。神大に合格できたのはこの刑法の傾向変化があったというのが最大要因な気がします。(追記:点数的にはそんなことなかったです)来年以降も今年のような出題が続くのであれば、受験生的には対策が立てやすくなっているのではないかと思います(基本刑法の設問くらい短い問題をおさえていく等)。

刑事訴訟法

過去問:毎年捜査と伝聞証拠から出すよ!
私:よしきた、特に伝聞証拠は毎年毎年同じようなことが聞かれているから得点チャンスだぜ!
とか思ってたのに伝聞証拠ができなかったんだよなあ、これが……本当にこの点は不覚です。勉強方法(小枠)の所で書いた「試験直前にこれだけは絶対におさえておく事項各科目10個」に伝聞証拠も無論ピックアップしていたので伝聞証拠の定義などは書けたのですが、そこから伝聞証拠にあたるか否かの検討の手順が飛びました。事前の練習であんなにやっていたのに?!神大過去問ではマジで毎年出ているのに?!と自分でも答案を書きながら(書けなくて)笑ってしまいました。しかしおそらく私のような受験生がそれなりにいるがゆえに恐らく来年以降も伝聞証拠は出るのでしょう……

追記(得点開示)(一部)

入試成績の開示を神戸大学の方で勝手にやってくれていたので、一部開示しておきます。順位は再現答案の方に一緒に載せておきますのでここでは割愛。
憲法 20/50
民法 54/100
会社法 45/50
刑法 52/100
行政法 50/50
民事訴訟法 40/50
刑事訴訟法 17/50
下3法(会社、民訴、行政)に救われて合格していたことが判明しました。刑法の傾向変化はあまり合否に影響は与えていないのかもしれません…
なお、行政法が満点という結果になっておりますが、合格者の開示状況を見ていると他にも満点の方が散見されるので、すごく出来がいいという訳でもないようです。

(6月15日:追記の追記)

ネット上をさまよっていたところ、私より総合順位が14上の方の試験科目の点数が開示されている画像を見かけました。私とあんまり点数変わらなくない?と思って計算したところ、私の方が総合得点が11点上だったということがわかりました。つまり、私のステメンか学部成績がよほど悪かったということかと思います……全体順位については再現答案の方で記載しておりますので、ご興味のある方はステメン・学部成績がなかったら何位くらいだったのか計算(正確にはわかりませんが)してみてみると面白いかもしれません。まあ、要するに、過去問を中心に勉強しておけば、(足切りさえ回避できれば)ステメンや学部成績はなんとでもなるってことなので、学部成績が振るわなかったり、ステメン自信ない…という方も過去問中心に勉強して、筆記試験で挽回してもらえればと思います。

いったんまとめ

神大ローは過去問と似た出題をする科目が比較的多く、対策が立てやすい学校だったな、という印象です。無論、刑法のように出題傾向を変えてくることもあるのでしょうが。私の合格は刑法の波乱のおかげなのでこう書くのもなんですが、(追記:刑法のおかげではなく、純粋に出題傾向が一貫していた民訴行政の過去問検討の賜物なので)基本的には波乱には期待せず、過去問を堅実にやればやるほど合格に近づけるのではないかなと思います(ちなみに神大ローの学生さんは堅実にやるべきことをまじめに積み上げるタイプの方が多いみたいです。入試で求められていることをこなせるタイプが多いということでしょうね)。

ちなみに

神大ローの1か月と3週間前から勉強を始めたと上で書きましたが、勉強時間を記録していました。180時間でした。51日間で180時間……うち寝込んだ日が1週間ほどあったとはいえ短くない?って感じですが、最善を尽くしてこの勉強時間、この結果だと思えばコスパよしといえるのかもしれません。

以下は神大ロー既修者試験の再現答案構成部分です。とはいえ、分からなかった部分は構成などせずに適当な自由演技を繰り広げましたので記憶頼りで再現率が悪かったりしますので、その点ご承知おきの上でご覧ください。
なお、誰でも気軽にみられる状況だとお粗末な部分も多く恥ずかしいので閲覧制限をかけるという意味で有料にしております。閲覧のために課金のお手続きをされた場合にも返金は致しておりませんのでご了承ください。

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