入院2日目

5月21日(木)手術前日。今朝は午前4時に目が覚めた。
消灯が午後9時だったというのもあるが、ベッドが固いせいで、背中や腰が痛くて寝ていられなかったというのが実態だ。
同室の人が手術後で、痛みで眠れないようで、何度か部屋を出入りしていたのもある。看護師さんも何度か来ていた。明日は我が身と思う。

とはいえ、6時まではベッドで過ごす。6時に電気がつくので、それで晴れて起床できる。
7時過ぎ、朝食のアナウンスが入る。今朝からは繊維食だ。
もちろん美味しいものではないが、しかたない。
食べ終えてしばらくすると、看護師さんがバイタルチェックにやってくる。
12時にお昼。繊維食。
午後2時には液状の下剤を飲む。ちょっと甘い。
それから、予約していたシャワーを浴びる。2日ぶりなので嬉しい。こんなに気持ちの良いものとは。
部屋に戻ると、主治医から説明があるので、診察室へ行くように言われる。説明は10分ほど。手術中は腸をずらすために頭側を下げるというのと、腹腔鏡手術では、お腹にガスをいれて膨らませるという話が印象的だった。
心配される腸の癒着は術後1週間が峠とのこと。防ぐコツは、良く歩くことと、腹8分目の食事。腸を動かすことがとにかく大事らしい。
傷は腹腔鏡なら4か所。うち1か所はお臍なので、あまり目立たないらしいが、お臍を切る、というのが不思議だった。
部屋に戻りぐうたらしていると、看護師さんが下剤の効果の確認に来る。音沙汰なしと伝えると、温かいタオルを持ってきてくれた。お腹に当てるといいらしい。
しばらくぼんやりテレビなどを眺めていると、今度は麻酔科のドクターがやってきて、全身麻酔の説明を受ける。
目覚めた後の吐き気は3人に1人くらいあるものらしい。以前の手術ではとにかく吐き気が辛かった記憶があるが、私は1/3だったわけか。前回のことを伝えると、なにやらメモしていたので、少しは改善することを祈るばかりだ。
正直、手術中のことは無意識なのであまり気にしていない。大変なのは術後だ。主治医も「そりゃあまぁ痛いよ。少しとはいえ、お腹を切るわけだから」と言っていた。その痛みと、麻酔による吐き気や頭痛、そういったものの方がよほど辛いのは経験済みだ。

ここは術前後の患者の部屋なので、隣の人は今日手術だったらしいことが分かる。
入れ替わり立ち替わり医師や看護師がやってきては処置をしている。痛み止めを種類を変えながら投与されているようだが、1回飲んだら3時間とか6時間とか間隔をあける必要があるので、痛いからといってすぐに抑えられるわけでもない。大して服薬効果が感じられなくても、だ。そこは患者はもちろん、看護師さんも辛いところだろう。
戻りがてら、売店に立ち寄り、水を買う。下剤の効果を高めるためには水がいるらしい。フロアにはカップを持っていけば飲料水を無料で汲めるベンダーもあるが、ここはまとめて600ml買ってしまおう。
ベッドで水を飲みながら、LINEなど。スマートフォンは偉大な発明だ。
午後6時。夕食はいよいよ流動食。
重湯、おすまし(具なし)、コーンスープ(具なし)、野菜ジュース。重湯には「鯛みそ」が付いてきた。これは以前の入院でも見た顔だ。重湯には「鯛みそ」と決まっているのだろうか。
ただ、これを入れたからと言って重湯がさほど美味しくなるわけでもない。
唯一、コーンスープだけが美味しかった。相対的なものかもしれないが、美味しいと思えるものがあるのはありがたい。
午後7時過ぎ。従妹からLINE。いろいろ心配してくれている。やりとりの中で明日が祖父の命日であったことを思い出す。その後、幼い甥の動画を幾つか送ってくれた。1歳、歩けるようになり、納豆も食べられるようになったとのこと。老いて亡くなる命もあれば、生まれてくる新たな命もある。

病院では、とにかくその人の身体にフォーカスするので、個人の尊厳やプライバシーはあまり意識されなくなり、自分が一体の動物であることを感じる機会が多い。ここでは、みんなが丸裸にされる分、命というものの輪郭を感じる。


コロナのせいで、面会は禁止されているが、もしかすると、看護師さんたちは今の方がやりやすいのかもしれない。常に患者と気兼ねなしに向き合えるからだ。それは患者にとっても良いことのような気がする。
外部の人が入らないからか、ここは堅牢な要塞の中のようだ。
テレビのニュースを見ていても、どこか遠い場所の出来事に思えてくる。緊急事態宣言がいよいよ解除されるかも、といわれても「ふーん」という感じ。
さて、明日はいよいよ手術だ。

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