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1.蘇民将来の説話が意味するもの

 古来、日本の神々は両義性を持っていました。
それは自然そのものを神ととらえているからに他なりません。
自然は恩恵をもたらす一方、時として絶対に人間が太刀打ちできない驚異にもなります。
素戔嗚尊のように荒ぶる神が存在するのは、その表れでありましょうし、普段は穏やかな神が荒ぶることもあります。

荒魂が和魂にもなり、和魂が荒魂にもなる。

このように神からして両義性があるということは、
日本文明を一元的にかたちづくっていった根本であるのでしょう。
また、七世紀以降の神仏習合にも大きく影響していると考えられます。

八坂神社にスサノオノミコトが祭られている理由



 神仏習合において、素戔嗚尊は牛頭天王の本地とされました。
牛頭天王は織田信長が強く信仰したとも伝えられます。
牛頭天王は祇園精舎の守護神であるため、京都・東山の祇園社に祀られました。祇園社とは現在の八坂神社のことです。明治初期の神仏分離までは祇園社の名で親しまれていましたが、今、その名をとどめるのは祇園祭のみとなっています。

 また、牛頭天王は疫病の神とされたことから、蘇民将来説話の武塔天神と位置づけられるようにもなりました。
 蘇民将来の話をごく簡単に述べておきましょう。

疫病を恐れずに受け入れた結果得た宝とは?


 旅をしていた牛頭天王が裕福な家に宿泊を要望したところ断られてしまった。仕方なく別の貧しい家に頼むと快く泊めてもらえた。
 この貧しい家の主が蘇民将来だったのです。牛頭天王はお礼に珠を渡していきました。
 すると蘇民は裕福になり幸せに暮らしたという民話です。
 この物語は、そのまま疫病を恐れずに受け容れた結果、珠=免疫を与えられ、健康を損なうことなく暮らしていくことが出来た、というふうに置き換えることが出来ます。



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