マガジンのカバー画像

結婚したい女たち/木花薫

55
妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
運営しているクリエイター

#小学生

24 結婚したい女たち 香の選択

 香が戻るとお琴と一花は折り畳みの小さな木の台に料理を置いて向かい合って座っていた。「香はここ」とお琴に言われて座らされたのは、二人の座っている切株のような椅子とは違って手すりと背もたれの付いた立派な椅子だった。「お誕生日席だ」と笑うお琴に続いて「それ壮太君が作ったんだよ」と一花が言った。平日に壮太と一緒になった時にこの机と椅子を持って来たんだそうだ。「えーすごい座り心地めっちゃいいよ」と驚く香に一花は続けた。

有料
100

23 結婚したい女たち 香の選択

(私も行きたくない) お琴から「次の畑は行けない」とLINEが来た香は強くそう思った。

有料
100

21 結婚したい女たち お琴の選択

駅前のビルの三階にある結婚相談所Love&Peace(ラブアンドピース)。そこのコーディネーター桜(さくら)咲(えみ)子(こ)は我が目を疑った。今目の前にいるのは三年前に入会した水野(みずの)琴音(ことね)のはずだ。しかしあの野暮ったい容姿は消え失せて明るく柔らかい印象になっている。同じ人物とは思えない。最近すっかり活動をしなくなっていたらこれだ。婚活以外で男ができて結婚が決まったのだろう。突然面談しに来たのはその報告をしにきたにちがいない。桜は何を言われても平気な顔でいられ

有料
100

10 結婚したい女たち 不都合な現実

 勤務先の小学校から二㎞離れた場所で田んぼの隣にあるアパートにお琴は住んでいる。学校で子どもたちと騒がしい時間を過ごしても寝室とリビングと小さなキッチンのついたこの静かな部屋がお琴の疲れをいやしてくれる。

有料
100