マガジンのカバー画像

結婚したい女たち/木花薫

55
妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
運営しているクリエイター

#結婚生活

39 結婚したい女たち 決断

「だから言ったのよ、そんな女と結婚するなって。父親が誰だかわからないなんて凶暴なのは父親がやくざだからじゃないの?」

有料
100

38 結婚したい女たち 告白

木下秀雄四十三歳は大きく息を吸った。ゆっくり吐くと一枚の紙を手に部屋を出てキッチンへ行った。夕食の片づけをしている一花に「話がある」と声をかけたのだけど「見てわかるでしょ今忙しいの。あとにしてよ」と素気無く言い返された。昔の一花なら子どもの頃飼っていた犬のように「なに?」と駆け寄ってきたのに。結婚してすっかり変わってしまった一花。 四年前に新入社員として入社して来た時は名前の如く花が咲いているように美しかった。ラッキーなことに部署が同じで話をする機会はいくらでもあった。年齢

有料
100

37 結婚したい女たち 告白

一花の通い始めた診療クリニックには託児サービスがある。しかし診察の三十分間でさえ一花は英雄を預けたくなかった。預けている間に虐待がばれるかもしれない。心配で診察を受けるどころではない。しかし先生からは預けるように指示された。夫婦関係の破綻によるノイローゼの治療なのだから診察の内容は夫婦関係を赤裸々に語ることになる。いくら二歳といえども聞かせるような話の内容ではないと言うのだ。渋る一花だったが、 「何か預けたくない理由があるんですか」 と単刀直入に訊かれてこれ以上ごねたら疑われ

有料
100

36 結婚したい女たち 告白

 どこもかしこもクリスマスの飾りが煌びやかでサンタの心躍る音楽が流れている。だけど心の落ち着かない年の暮れ。英雄の月に一度の通院は回を重ねて三回目の診察でのことだった。

有料
100