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結婚したい女たち/木花薫

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妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
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#アラサー女子

小説「結婚したい女たち」にいただいた感想をまとめました!

 連載中の「梅すだれ」をお読みいただきありがとうございます。肥後の国に長居してしまい、なんとか甲斐の国へ戻そうとしていたのに今は紀国へ行っちゃってます。桜が咲く頃までには肥後へ戻しますし肥後を出たいとも思っています。夏には熱々のお千代ちゃんの恋の物語をお届けできるように、遅筆ではありますが書いて参りますので、どうぞ最後までお付き合いよろしくお願い申し上げます。  ところで昨年出版しました処女作「結婚したい女たち」。婚活で知り合って親友になったアラサー女三人の結婚への顛末を書

創作大賞応募作品 結婚したい女たち

1 結婚したい女たち プロローグ 「ここの石焼きパスタがホントにおいしいんだって!」  私、立野香は緊急事態宣言中にもかかわらず、友だち二人とパスタを食べに来た。美味しいお店に目がないお琴一推しのパスタ屋へ。 「やっぱ少ないね。ランチタイムはカウンターも満員になるのに。」  細長い店内は、右側に厨房とカウンターがあり、左側の壁に沿ってテーブル席が三つ、そして奥のくぼんだスペースにもうひとつテーブル席があった。カウンター席のお客さんは一つ空けてぽつんぽつんと距離をとって

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45 結婚したい女たち エピローグ

「実はね、結婚することになったの」 ミーちゃんがいないまま迎えた秋分の日。高級フレンチレストランでランチのコース料理を食べながら香が言うと「おめでとう」とお琴と一花が予定調和にお祝いの言葉を言った。

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25 結婚したい女たち 一花の選択

「あれ一人?今日はあの二人来ないの?」 と嬉しそうな実紀に一花は、 「二人とも予定が入っちゃったみたいで」 と平気を装って答えた。しかし週末なのに一人で三人分の畝を世話するのはまるで平日のようだと寂しさを感じずにはいられない。偶然二人とも来られなかっただけ。頭ではそう思おうとしても何故だか胸騒ぎがする。丸かった三人の仲が歪(いびつ)な形に変わり始めているようで。そこへ「ネコは?」と信二がミーちゃんを探しに来た。

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24 結婚したい女たち 香の選択

 香が戻るとお琴と一花は折り畳みの小さな木の台に料理を置いて向かい合って座っていた。「香はここ」とお琴に言われて座らされたのは、二人の座っている切株のような椅子とは違って手すりと背もたれの付いた立派な椅子だった。「お誕生日席だ」と笑うお琴に続いて「それ壮太君が作ったんだよ」と一花が言った。平日に壮太と一緒になった時にこの机と椅子を持って来たんだそうだ。「えーすごい座り心地めっちゃいいよ」と驚く香に一花は続けた。

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23 結婚したい女たち 香の選択

(私も行きたくない) お琴から「次の畑は行けない」とLINEが来た香は強くそう思った。

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22 結婚したい女たち お琴の選択

町から車で三十分走ると野生の木々が生い茂る東中之村(ひがしなかのむら)という村がある。そこで大々的に苺のハウス栽培をしている杉野夫妻が農業をいろんな人に体験してもらいたいと使っていない畑二面を農業体験用に開放している。三人が参加した日はほかにも十人ほどいてほとんどは家族連れで農薬を使わない安全な自然農法だけあって小さな子ども連れが多かった。

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21 結婚したい女たち お琴の選択

駅前のビルの三階にある結婚相談所Love&Peace(ラブアンドピース)。そこのコーディネーター桜(さくら)咲(えみ)子(こ)は我が目を疑った。今目の前にいるのは三年前に入会した水野(みずの)琴音(ことね)のはずだ。しかしあの野暮ったい容姿は消え失せて明るく柔らかい印象になっている。同じ人物とは思えない。最近すっかり活動をしなくなっていたらこれだ。婚活以外で男ができて結婚が決まったのだろう。突然面談しに来たのはその報告をしにきたにちがいない。桜は何を言われても平気な顔でいられ

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20 結婚したい女たち 一花の家

景色をひとしきり楽しんだ香とお琴がダイニングに戻るとやっぱり一花の元気がない。 「一花どした?」 とお琴が心配して声をかけた。それで気づいた香も、 「顔色悪いよ」 と一花をみつめた。 「最近いそがしくてあんまり寝てなくて」 言葉少なな一花の目の先のリビングにはたくさんの本が乱雑に置いてあった。開かれたページには人体図のイラストが載っている。ヨガのポーズをより深く理解するために一花は解剖学の本で骨格筋の勉強をしているのだ。

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19結婚したい女たち 一花の家

「ミーちゃんに会って変わったって言うのさ、その月星座?のこともあるかもしんないけど猫って神の使いって言われてたんだよ。古代エジプトで」

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18 結婚したい女たち 一花の家

香はマンションの六階にいる。一花のヨガのレッスンを受け終ったところだ。お琴はシャワーを浴びているが香はたいして汗をかかなかったのでシャワーは遠慮した。着替え終わるとヨガの部屋を出てリビングへ歩いた。玄関から奥へ伸びた廊下には右手にヨガの部屋と寝室があり左手に今お琴がシャワーを浴びている浴室とトイレとランドリーがある。その廊下を歩く香は(一花の住んでいるところはどんなとこだろう)とドキドキしながら突き当りのドアを開けた。左側にはリビングが右側にはダイニングとカウンターキッチンが

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17結婚したい女たち 不都合な現実 香

 そして今この地上三千メートルにも香の居場所はなかった。日本一高い富士の山の上で気の沈む香に比奈ちゃんはダメ押しの「香ちゃんて全然変わらないよね。昔のまんま」を言ったのだ。香にとって「変わらない」は「大人になれない」ということ。実家で両親と暮らす香は家事をしているとは言え子どもの頃と同じような気分になっている。暗い表情の香に比奈ちゃんは手を振りながら慌てて付け足した。

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16結婚したい女たち 不都合な現実 香

次のイベントまでの長い休日は結衣ちゃんと遊んで過ごすことが多かった。

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15 結婚したい女たち 不都合な現実 香

しかしウキウキで行った初めての山登りだったけど人生最大の試練と思えるほどに過酷だった。

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