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結婚したい女たち/木花薫

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妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
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#女友達

30 結婚したい女たち 裏切り

お琴の婚約者朋輝の実家は農家だ。土をいじるのが好きな朋輝は農業をしたいけれど実家の農業は兄が継いだ。朋輝は弾かれるように地元を離れて農作業の放浪の旅に出た。季節労働の募集をしている果樹園や野菜農園を巡って日本各地を転々としたのだ。

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29 結婚したい女たち 裏切り

それから二週間後の秋の終りを感じる十一月下旬。降りそうで降らない雲が空に居座り昼間なのにどんよりと暗い日曜日だった。

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24 結婚したい女たち 香の選択

 香が戻るとお琴と一花は折り畳みの小さな木の台に料理を置いて向かい合って座っていた。「香はここ」とお琴に言われて座らされたのは、二人の座っている切株のような椅子とは違って手すりと背もたれの付いた立派な椅子だった。「お誕生日席だ」と笑うお琴に続いて「それ壮太君が作ったんだよ」と一花が言った。平日に壮太と一緒になった時にこの机と椅子を持って来たんだそうだ。「えーすごい座り心地めっちゃいいよ」と驚く香に一花は続けた。

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22 結婚したい女たち お琴の選択

町から車で三十分走ると野生の木々が生い茂る東中之村(ひがしなかのむら)という村がある。そこで大々的に苺のハウス栽培をしている杉野夫妻が農業をいろんな人に体験してもらいたいと使っていない畑二面を農業体験用に開放している。三人が参加した日はほかにも十人ほどいてほとんどは家族連れで農薬を使わない安全な自然農法だけあって小さな子ども連れが多かった。

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20 結婚したい女たち 一花の家

景色をひとしきり楽しんだ香とお琴がダイニングに戻るとやっぱり一花の元気がない。 「一花どした?」 とお琴が心配して声をかけた。それで気づいた香も、 「顔色悪いよ」 と一花をみつめた。 「最近いそがしくてあんまり寝てなくて」 言葉少なな一花の目の先のリビングにはたくさんの本が乱雑に置いてあった。開かれたページには人体図のイラストが載っている。ヨガのポーズをより深く理解するために一花は解剖学の本で骨格筋の勉強をしているのだ。

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19結婚したい女たち 一花の家

「ミーちゃんに会って変わったって言うのさ、その月星座?のこともあるかもしんないけど猫って神の使いって言われてたんだよ。古代エジプトで」

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18 結婚したい女たち 一花の家

香はマンションの六階にいる。一花のヨガのレッスンを受け終ったところだ。お琴はシャワーを浴びているが香はたいして汗をかかなかったのでシャワーは遠慮した。着替え終わるとヨガの部屋を出てリビングへ歩いた。玄関から奥へ伸びた廊下には右手にヨガの部屋と寝室があり左手に今お琴がシャワーを浴びている浴室とトイレとランドリーがある。その廊下を歩く香は(一花の住んでいるところはどんなとこだろう)とドキドキしながら突き当りのドアを開けた。左側にはリビングが右側にはダイニングとカウンターキッチンが

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14 結婚したい女たち 不都合な現実 香 

市の中心街の西にある閑静な住宅地。そこに香は住んでいる。

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13 結婚したい女たち 不都合な現実 一花

ヨガルームの準備が終わると一花はリビングへ戻った。そしてリビングのローテーブルの脇でヨガの動画を見ながらポーズをとり始めた。

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12 結婚したい女たち 不都合な現実 一花

市内の中央にある九階建てのマンションに一花は一人で住んでいる。

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11 結婚したい女たち 不都合な現実

(ヨガウェアを買わなきゃ!) お琴は最後のパンを口へ放り込んだ。

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5 結婚したい女たち  一花の憂鬱

「いつにしよっかな」 一花は自宅マンションのリビングでスケジュール帳をめくった。結婚していた当時から使っている三人掛けの大きなソファ。その上に足も上げて座り込み膝の上に手帳を置いてウキウキと山登りの日程を立てている。

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4 結婚したい女たち ―出会い―

体型もパーソナルカラーも性格も何もかもが違うけれど一緒にいると楽しくて仕方がない。お琴にとって一花と香とランチを食べながら話すこの時間はとても大きい。月一、多い時は隔週で会ってしまう。もちろん招集するのはお琴だ。(大人になってからこんなに仲のいい友だちができるなんて。婚活をしていてよかった)などと思ってしまう。と言うのもこの三人が出会ったのは婚活パーティーでだった。運命の男に出会おうと気合いを入れて参加したのだけど、運命の女たちに出会ってしまった。

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3 結婚したい女たち プロローグ

重たい沈黙を破って一花が言った。 「今日のお琴なんか違うよね。メイク変えた?」

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