マガジンのカバー画像

結婚したい女たち/木花薫

55
妥協なんてしないアラサー女三人の物語。立野香(たつのかおり)、一花(いちか)、お琴(こと)は生まれも育ちも違うが婚活で親友になる。お互いを羨み切磋琢磨するが運命の歯車が回り始め……
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

24 結婚したい女たち 香の選択

 香が戻るとお琴と一花は折り畳みの小さな木の台に料理を置いて向かい合って座っていた。「香はここ」とお琴に言われて座らされたのは、二人の座っている切株のような椅子とは違って手すりと背もたれの付いた立派な椅子だった。「お誕生日席だ」と笑うお琴に続いて「それ壮太君が作ったんだよ」と一花が言った。平日に壮太と一緒になった時にこの机と椅子を持って来たんだそうだ。「えーすごい座り心地めっちゃいいよ」と驚く香に一花は続けた。

有料
100

23 結婚したい女たち 香の選択

(私も行きたくない) お琴から「次の畑は行けない」とLINEが来た香は強くそう思った。

有料
100

22 結婚したい女たち お琴の選択

町から車で三十分走ると野生の木々が生い茂る東中之村(ひがしなかのむら)という村がある。そこで大々的に苺のハウス栽培をしている杉野夫妻が農業をいろんな人に体験してもらいたいと使っていない畑二面を農業体験用に開放している。三人が参加した日はほかにも十人ほどいてほとんどは家族連れで農薬を使わない安全な自然農法だけあって小さな子ども連れが多かった。

有料
100

21 結婚したい女たち お琴の選択

駅前のビルの三階にある結婚相談所Love&Peace(ラブアンドピース)。そこのコーディネーター桜(さくら)咲(えみ)子(こ)は我が目を疑った。今目の前にいるのは三年前に入会した水野(みずの)琴音(ことね)のはずだ。しかしあの野暮ったい容姿は消え失せて明るく柔らかい印象になっている。同じ人物とは思えない。最近すっかり活動をしなくなっていたらこれだ。婚活以外で男ができて結婚が決まったのだろう。突然面談しに来たのはその報告をしにきたにちがいない。桜は何を言われても平気な顔でいられ

有料
100