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ブレイキング・ザ・コード 4/16

エニグマ暗号解読の立役者であり、AIの父であるが同性愛者であり、そのせいでホルモン注射を受けて病み、毒林檎を食べて死んだという2次元のキャラクターみたいな経歴を持つアラン・チューリングの物語。
カンバーバッチ主演の『イミテーションゲーム』では暗号解読の部分がフォーカスされて映画になってる人。

ところどころで時間移動もあるので、ネタバレを忌避する人でなければ人物をそれなりに知ってから見たほうがわかりやすいかも。嫌なら2回見ることを推奨。

クイズやってるといろんな前振りでよく出てくるし、イギリスの新紙幣に採用されたし、そもそも興味があったということでこの人の背景をかなり知ってた私は『白雪姫』の映画を観た、というくだりで死に方の伏線来ちゃー!と静かにテンションが上がった。

この作品のチューリングはいわゆるギフテッドだと思われる神経質でわがままで嘘がつけない人物であり、大学時代の親友だった男を忘れられず、同性愛をこじらした中年男性として描かれている。
暗号解読研究所でもエンジニアに手を出し、大学教授になってからは前科がある青年を家に招き入れたり、国内ではもう無理になると海外の青年と関係を持ったり、かなり奔放に男遊びをしている。
暗号解読研究所の同期の女性と付き合ったこともあったが、結局別れてしまった。逮捕されて釈放されたのちに彼女と結婚して子どもを作ってれば良かったと本人に冗談半分にぼやく場面も見られる。
実際、体の関係を持つことはできなくても同じ話題で盛り上がれて、彼という人間を正面から受け止め、愛してくれる彼女と結婚できていたら、と思わなくもない。
一方、本人も言っていたが、若い頃の彼にその選択肢を選ぶことはできなかったのだろうとは思う。そして、研究所に呼ばれるほど才能のある人物である彼女が結婚したらただの専業主婦になっているのもリアルで悲しいところだ。

基本的にこの作品で大人は1幕ではアランにとって、煩い存在として登場する。
母親は友達にいつもこの子はのけ者にしてくるし、変な行動をするし、とかアランが言われたくないと思っていることを全部言ってしまうタイプ。彼女は悪気はないのだろうし、アランの性格にかなり難があるのは事実だが、本人のいる前でその人の愚痴を言うのは人の気持ちを配慮できていない証拠だな、と思ってしまう。
2幕では支えてくれる存在になるため、私の母は2幕まで見れば印象が変わると言っていたが、正直、彼女は旦那を失い、一人になったことで自立する必要があり、人間的に成長したためにアランの話を正面から受け止められるようになったのかな、と。
昔のままだったら自分のしたい話だけをして同性愛者なんて話信じないか、追い出すか、信じるけど治す方法探すか、そのへんの選択肢をとるのが関の山だと思う。

そして、警察はアランがうっかり存在を隠した結果、何度も呼び出したり、家を訪問した挙句、同性愛者だとバレる羽目になると、私こそが法で、聞いてしまったものは引っ込められない、と融通の利かない発言をするなど、The お役所仕事な人間として登場する。しかし、一方で黙秘権等々の説明をしっかりすることもなく、都合よく地位を使っている感が不快。

一方、2幕での政府関係者の男は全て遠回しに脅してくる様が恐ろしい。ただ、彼の言動と行動は常に一致しており、威圧的でもあるが、非常に大人らしい大人であるため、私にとっての不快度は低かった。

結局、ホルモン注射の影響もあるのか、ギリシャに行った際に現地の青年に好きだった男性の姿を見て、帰ってきた実験場で毒林檎を食べて死んで終わる。私的には精神を病んだ結果、ファンタジックな死に方を選んでみたのかな、と思ったが、そこに関しては人によって解釈が異なりそう。

水田さん演じるロンはクズさと危なっかしさをはらんだ青年で、この人を飼いたいって人結構いるんだろうな、と思った。安定したヒモはそれはそれで楽しいけど、不安定なヒモは自分が支えてあげなきゃいけないとかいうズレた使命感に駆らせてくれるから。

とにかく、私はここまででないにしろ、アランと似た神経質さを持ち合わせているので、感情移入してしまってイライラしたのもあり、なかなかに疲れた。

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