《あいさん》からのお手紙

ドラマ版も合わせて、数回観ています。
観るごとに、前は気づかなかったけど、何気ないシーンや、セリフの中に、自分にとって効いてくる物事の発見が、次々出てくるのが、この映画の凄いところだと思っています。

むしろ、「今」観るからこそ気づくこととか。 志村が分厚い議事録を読んでいるシーンは、現実のテレビで流れてくる「口頭決済」とか、「改ざん廃棄」のワードをより、鮮明に炙り出している気がするし、香の「インド古典学を続けたかったけど、未来ないなーと思ってやめちゃって」という台詞からは、香もまた、「役に立つ」学問や、「生産性」みたいなことに苦しめられたのかもしれない...なんて想像したり。

たぶん、個人個人がそれぞれの思い当たることから、深くこの物語を味わうことができるのは、この映画(ドラマ)を作った全ての人が(それは特に渡辺あやさんの脚本だと思うのですが)、誰もが素通りできないところまで、名もなき人の感情を掬って表現しているからじゃないのかな、と思います。

そして何より音楽が好きです。バイオリンかな?キューピーがバスにのっている冒頭からあの音楽があることで、もう喉の奥がツーンとします。 もう少し、身の回りが落ち着いたら、映画館でも観たいくらいこの映画が好きです。

✉️キューピー役・須藤蓮からのお返事

あいさんへ。
お手紙ありがとうございます。

見るごとに自分にとって効いてくるものが変わるというの、すごくわかります。
僕は撮影当初脚本を読んだり芝居している時は、今思えばほとんど何にも理解してなかったです。寮が大切で大切で仕方なくて愛おしいんだっていう気持ち以外は、いろんな感想をいただいたり、チームのみんなと話しながら
(あ、、そうだったんだ、、、)ってその都度理解していきました。
お恥ずかしい限りですが、2年経ってようやく、脚本の凄さがわかってきました笑

そういえばこの間、読書や映画鑑賞というのは、みた、みてないの二元論じゃなくて、変わらないものに対して、変わり続ける私たちが向き合い続けるってことなんだとヴィヴィアン佐藤さんがおっしゃってました。

だからきっと響くところが変わるのは、ドラマの放送から今日まで僕らが変わったからだろうなって思います。

僕は昔から、変わらないってことがかっこいいことなんだって思ってました。
中学二年生から、この世界に入るまで僕はずっと金髪だったんですけど、そうやって外れていることをアイデンティティーにしてみたり、弁護士目指してる自分をアイデンティティーにしてみたり、”変わらない自分”を規定することに必死でした。

でも本当は人ってすごい勢いで変わっていくんですね。
だからこそ、大切なものが変わらずに残っていることが、僕らの心を豊かにしてくれるんですかね。

音楽最高ですよね。
しかもタイトル、夜の壁っていうんですよ。
自分のシーンにあの曲が重なってるのを初めてみたときのことが忘れられないです。

あと今でも、夜の壁を聞くだけで、僕は幸せと切なさがこみ上げてきて、どうにもならなくなっちゃいます。

この先変わり続けても、この感覚は、忘れたくないなって思ってます。

キューピーこと須藤蓮より。