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最後の返事

手持ち無沙汰でなにげなくiPhoneの連絡先をスクロールして流し見ていた。以前はよく連絡をとっていた人の名前が表示される。関係の終わりをなんとなく覚えている人もいれば、おぼろげな人もいる。なぜ連絡をとらなくなったのだろうか。よく思い出せない。

関係の終わりはいつも「返事がない」から始まる。たとえ怒りや反論や異議であっても、「返事をすること」そのものが関係を継続する意思の表れである。一方、普段は仲の良いふたりの間で、しかし特定の話題については返事がなかった場合、「その話についてはあなたとするつもりがない」という意思の表れである。

恋愛関係における「自然消滅」に顕著だが、恋愛でなくても、ある時期まで仲がよかったと思っていたはずの相手から急に距離を置かれたと感じた場合、その原因は「自分が返事をしていないこと」か、または相手が「欲しかった返事をもらえなかった」と思っている場合が多い。

そして、この「返事がないという返事」は、受け取った側にこそ深く刻まれる。返事をしなかった側にとっては、その決断は一瞬であったり、うっかり返事を忘れただけであったかもしれない。しかし、返事をしなければもう終わりなんである。

「返事がない」は、最後の返事である。

そして、関係の終わりは、「返事がない」を「返事がないという返事」として受け取った者によって確定する。

連絡先に刻まれたいくつかの名前から、わたしは「返事がないという返事」を受け取った。そしてまた別のいくつかの名前に、わたしは返事をしなかったのだろう。

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