音楽、はじめます

先日、所属している音楽団体の演奏会がおこなわれた。

私個人としてのホールでの本番は実に3年ぶりで、
その意味で気が引き締まる気持ちがあったが、
また別の意味で人生で「初めて」の経験でもあった。

これまでのホールでの演奏経験と言えば、
・吹奏楽コンクール
・吹奏楽サークル時代の定期演奏会
がある。
思えば、この経験の中で、演奏後に本質的に音楽というものに向き合っていたことはなかったのだ、と今思う。
コンクール後にはコンクールの結果が、
定演後には先輩や自分の引退や、仲間と演奏した思い出が興味の対象だった。

でも今回、引退も"結果"もないホールでの演奏を経て、
私は純粋に自分にとっての「音楽」について考えることになった。

まず、私はホールでの演奏において普段の練習よりもうまく行くという経験を幾度かしてきた。
その理由は、自分の音がホールによって増強されることでテンションが上がるという単純なことだと思う。
高校生のころ、自分の音が校舎前の広場に満ちている状態が好きで、いちばんに個人練を始めていたことを思い出した。これもそうだったのだと思う。

ここではじめて、ホールでの演奏会は奏者(少なくとも私)にとってとても特別で、「一区切りとなるもの」なのかもしれないと思い当たった。

そして気づいたのは、これまでの自分の音楽への向き合いかたはとても短期的であったということだ。
次の練習までにここをさらわなければならない、
次の演奏会までにこのソロをうまく吹けるようにならなければならない、
次の演奏会に乗るのか、
この曲を吹くかどうか、...
練習会単位、(ホール以外で行うもの含め)演奏会単位の考え方だった。
その場その場で、音楽を続けることを選択し、期間を延長し続けていただけだった。

しかし今回、ホールでの演奏会が一区切りとなるものである可能性に思い当たったことで、さらにそれより大きな単位、「人生」で音楽と向き合う可能性に気付いた。
つまり、今までのように「今演奏会を控えている」とか「かつてユーフォニウムを吹いていた期間がある」という捉え方をするのではなく、
私は音楽をする人間であると定義し、ひとつひとつの経験をその文脈においていくということである。
今までのように「この曲は好きなので、やろうと思います」「その後続けるかは後で決めます」ではなく、常に死ぬまで音楽をやるという前提があるということである。
そして、その選択肢に対して、ワクワクしている自分がいる。

これから、人生をもって音楽と向き合っていこうと思う。
みやこ、音楽はじめます。





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