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おろかものとおろかもの 31

「—はい、そうです。被験者は今は意識を失っています。
ええ、そうです。拘束具を付けて。今はベッドに寝かせている状態です。

私は―何も被害はありません。隊員からも、彼からも。引き続き検証実験を続けることは可能です。
―今回の件に関しては、突発的な出来事が原因で、イレギュラーな発現とはまだ断定できかねます。自己防衛のための行動だったといえます。
―ええ、判断はまだ時期尚早かと思います。
―そうです。問題はありません。
―地区の情勢は非常に流動的ですが、このままいわきで複数の被験者の監視及び検診を続けることは問題ありません。スタッフの増員は、出して頂けるのであればそれは嬉しいですね。これから先、私一人でまた肉塊を片付けることになるのであればね。

隊員たちはここの将官に断って、MIA扱いにしてもらっています。
まだこの場所が平穏であると思われていることが望ましい、という判断です。

―やはり、ラボにいたときのようには上手くいかないものですね。人間相手だものね。
何か変化がありましたら、報告します。では、また。」

佐藤直樹はいまだ暗闇の中にいた。

現代版 打海文三『応化クロニクル』を書こうとふと思いたち、書きだしました。支援・応援は私の励みとなります。気が向いたら、気の迷いに、よろしくお願いします。