見出し画像

見送るって愛だな

今日の夕方忙しい?
突然入った彼からのLINE通知
こんな時間に珍しい
返事をしたい気持ちをぐっとこらえて昼休みまで待とうとしたら、もう1通、通知が届く

夕方少し会えないかな
こんなことは初めてだった
付き合い始めて(いつもこの言い方でいいんかなと悩む)から、こんなLINEはなかった

お疲れ様 夕方って何時ごろ?
冷静を装ってみた
人気の少ない通路にあるトイレにこもり
「マジかよ」って言葉が漏れる

何時に仕事終わる?その頃に合わせてどう?
なんということだ
本当に会うつもりだと思って冷静さは飛んだ
こんな日に限ってメイクは薄いし
メイク道具も最低限しかない
有り合わせでも、この素材(顔)で勝負するしかない

定時終わりにどこで会う?
お茶でもどうですか?

これはたまげた
午後の仕事、絶対に定時15分前に全て終わらせてやる、残り3時間の私は超無敵
暗示をかけて実際に仕事はすこぶる捗った

お疲れ様でした〜とご挨拶
社員たちは、さあこれから本番というような死んだ眼差しで見つめる先はパソコン
私の見つめる先は近くのカフェだ

すでに彼はいた
車を隣に停めてお互いに顔を合わせ降りる

「癒されたくて」
と言った彼の言葉に恥ずかしさが隠せなくて
マフラーから目しかでないほど深く巻きなおした

多忙に多忙を重ねていた彼は既に被災地にも赴いていた
でも、いつまでこの支援が必要なのかみんなも手探りの中で期限も決められないこと
もしかしたら、次は帯で行かないといけないかもしれない…の言葉に私という立場は何も言えない

ただ
心配であることを伝えた

すぐに時間はすぎる
日常に帰る時間になってしまった
私は母親に、彼は残りの仕事をしに戻る時間

周りの目も気になるとき
彼は握手をして別れる
今日もそのパターンだった
駐車場は少し薄暗いが人も車も往来している
隠れる場所もない
この握手がどんなことを意味してるんだろうか
それぞれの職場の近くのカフェなのでバレのリスクは高い
だから手を繋ぐこともハグもキスもできない
それでも最後に触れたいと思う彼の気持ちなんだろうなあって思うと嬉しくて恥ずかしくてまた自分のマフラーに顔を埋めたくなった

「急に会いたいなんて言うから別れ話かと思った」「もしそんな雰囲気だったら早く帰ろうかと思った」って笑いながら伝えたら、彼も笑いながら「それはないなぁー」って

会いたいから会いたいって伝えた
タイミングが合ったから会えた
とてもシンプル
なのに
とても簡単には成し得ないこと
それは婚外だから…なのかな?

次に会える約束はできないからもうしなかった
落ち着いたら美味しいご飯をゆっくり食べに行こうねって伝えたら、心なしか「いつその日が来るかわからないなあ」って言いたそうな表情をしながらも、頷く彼

いつもは彼が見送ってくれる
車の停まってる位置もあって
先に見送った

見送るって愛だなって思った
気をつけてねって思って見送る
無理しないでねって願って見送る
また会いたいって思って見送る

愛だなんてこんな関係で成り立つわけないし
そんな幻想的な言葉を出すのも変だなと思う
痛々しいBBAにはなりたくない
でも、勝手に1人で愛を感じるのも悪くない

思っているより彼は私が好きなんだ
そして同じく、私も彼が好きなんだ





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?