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【詩】手に入らない

手に入らない
望んでも手に入らなくて
人間はおろか
猫ですら
手に入らなくて

誰もが欲しがっていて

幸せ

ぼくは本当は
幸せなんて
望んではいないんだ
望んでなくはないけど
それはもう望みようがなくて

ぼくは愛されてきた
誰よりも愛されてきた
大切にされた
優しくされた

ぼくを守ってくれた人々
ぼくを慈しんでくれた人々

なのに

ぼくはこうして
夢見ることをやめ
現実世界の中で
ひとりでいる

手に入らないもの

幸せ?

きっとそれは

共有

そうなんだ

猫には
人間には絶対真似出来ない
共有の方法がある

お互いが頬を寄せ合い
お互いのひげを触れさせれば
どんなことだって
共有できる
どんなことだって
楽しいこと
嬉しいこと
涙を流した悲しみ
どうしようもない怒り
そして
絶望さえも

手に入らないもの?

そうだ

ぼくはもうどんな感情だって
ひとりで噛み締めなきゃいけない

本当は
人間だって
猫だって
手に入らないんだ