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【詩】男の子猫と女の子猫の対話

ぼくたちは友達だった
友達以上の関係だった
鏡のような水面に
お互いの姿を映しあい
理解と幸せを感じていた

あたしも幸せだった
夢見るようで
でも
本当のこと
忘れられない出来事の数々

ぼくたちには何もかもがあった
手にしていた
忘却さえも
未来も
失われることも

あたしには苦しみもあった
言えなかったこと
今も言えないこと
それぞれにあって
悲しみをかみしめている

冬の丘の一本の立木が
永遠に眠れないように
ぼくも眠れない
眠れないから
忘れることはできない

あたしはこうして
輝く瞳を月の姿に似せ
星のめぐりにゆだねている
野生の中の精緻な誘惑
自然の法則に隷従されて

多くを共有した
思い出は積み重なった
大人の経験もした
ぼくたちは子供のままで
それでも愛は知っている

あたしの愛はこころの愛
まるで遠い出来事のよう
あなたがいるから決して
嘘になんかならない
偽りになんかならない

ぼくは君のためなら
この大切な宝石のような
ぴかぴかのひげをすべて
捧げてもいいんだ
失うものなんて何もないんだ

あたしには失うものがある
すべてを捧げてきたから
それはあなたそのもの
だから今は
このきらきらをあげる

こうしてほほを寄せ合うと
愛しくなる
ぼくの君への愛は
深くなる
キスしていい?

ほほを寄せ合う前に
どうしてもひげとひげが
触れてしまう
あたしにはできない
キスなんて

あたしたちは猫
キスなんて似合わない