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【詩】自然が後退する

春の朝
聞こえて来ていた
カッコウの声が
いつの頃からか
聞こえなくなる

近くの丘には
クロユリとスズランの花が咲いていた
でも
すっかり宅地になってしまった

自然が後退する
ぼくたちから遠去かる

夜の星も
街の光に
見辛くなってきた

そういえば
あの美しい瑠璃色の紋を持つ
カラスアゲハはいったい
どこに行ってしまったのだろう

空高く飛んでいた
オニヤンマは

誰のものでもない空き地で
昆虫を追いかけていた
子供たち

自然が後退するとともに
消えていった
子供たちの姿

子供たちが
管理された空間で
遊ぶことを否定はしないけれど

自然には危険があるから

幾度か危険を
感じたことはある

自然が後退する前に