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【詩】ひげのない猫

何を望まれるのでしょう
それなら方法が一つあります
ひげのない猫を探し出すのです
そうすればあなた様のお望みは
きっとかなえられることとなりましょう

なんだってさ

へえ
それで
猫は?

もちろん
人間たちはひげのない猫を
探し始めたさ
猫なんだけどさ

ひげのない猫
この地球上に必ずいる
きっと今もどこかで歩いてる

誇り高く
傲慢に

優雅にその一歩一歩を

人間たちに捕まえられるなんて
これっぽっちも思ってない

人間はさかしい知恵を持っている
それを使ってみたくなる

ある者はわなを仕掛ける
ひげのない猫はやって来なかった
仕掛けた者は終わることのない時を
ひたすら待ち続ける

ある者はあらゆる猫の行動を調べる
猫の行動を予想するため
ひげのない猫の行動は予想できなかった
ひげのある猫でさえ行動を予想できなかった

捕まえることができない
目撃情報さえない
むなしい日々が続く
ひげのない猫への渇望が
一層強くなる

ひげのない猫を捕まえることができないなら
ひげのない猫を作ればいい
簡単なこと

男は鋏を手にする

どうしたのあなた
顔に傷なんか作って
ひっかき傷みたいだけど
またなんかバカなことやったんじゃない
そういえばさっき
うちの猫
怒ったような唸り声をあげていたわね

ひげのない猫なんて
どこにもいやしないんだ
つくることだって出来やしないんだ

猫にはひげがある
ひげのない猫は
人間の妄想が生み出した産物
幸せになれるとか
望みがかなえられとか

嘘猫
架空猫
偶像猫

それでも
人間たちは
欲しく思うものらしい

ひげのない猫は
滑稽で
美しい