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【詩】ひげのない猫
何を望まれるのでしょう
それなら方法が一つあります
ひげのない猫を探し出すのです
そうすればあなた様のお望みは
きっとかなえられることとなりましょう
なんだってさ
へえ
それで
猫は?
もちろん
人間たちはひげのない猫を
探し始めたさ
猫なんだけどさ
☆
ひげのない猫
この地球上に必ずいる
きっと今もどこかで歩いてる
誇り高く
傲慢に
優雅にその一歩一歩を
人間たちに捕まえられるなんて
これっぽっちも思ってない
☆
人間はさかしい知恵を持っている
それを使ってみたくなる
ある者はわなを仕掛ける
ひげのない猫はやって来なかった
仕掛けた者は終わることのない時を
ひたすら待ち続ける
ある者はあらゆる猫の行動を調べる
猫の行動を予想するため
ひげのない猫の行動は予想できなかった
ひげのある猫でさえ行動を予想できなかった
捕まえることができない
目撃情報さえない
むなしい日々が続く
ひげのない猫への渇望が
一層強くなる
☆
ひげのない猫を捕まえることができないなら
ひげのない猫を作ればいい
簡単なこと
男は鋏を手にする
どうしたのあなた
顔に傷なんか作って
ひっかき傷みたいだけど
またなんかバカなことやったんじゃない
そういえばさっき
うちの猫
怒ったような唸り声をあげていたわね
☆
ひげのない猫なんて
どこにもいやしないんだ
つくることだって出来やしないんだ
☆
猫にはひげがある
ひげのない猫は
人間の妄想が生み出した産物
幸せになれるとか
望みがかなえられとか
嘘猫
架空猫
偶像猫
それでも
人間たちは
欲しく思うものらしい
ひげのない猫は
滑稽で
美しい