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温泉街のストリップという花火

某ボツ原稿です。時間がないなかなのでボツでしょうがないなと思いつつも、もう少しクオリティを上げられたかなと思うと悔しいですね

愛媛県は松山。重要文化財である道後温泉本館からたった200mしか離れていない場所。近くには居酒屋やスナック、風俗店が入ったビルなどがある。

女性の顔写真が多数飾られた白い建物のまわりを、私はうろうろと歩いていた。おおよそ3往復ぐらいゆっくりとあたりを歩いたあと、私は意を決して中に入ったそこは、四国唯一のストリップ劇場「ニュー道後ミュージック」である。

* * *

サブカル趣味から、秘宝館やアングラスポットに行くことが好きだった私。あるとき、インターネットで温泉街のストリップの訪問レポートを見つけて、「いつか温泉街のストリップ劇場に行ってみたい」とあこがれの気持ちを持っていた。

学生時代、当時松山に住んでいた友達がもうすぐ引っ越すというので、その前に遊びに行く計画を立てた。松山といえば道後温泉。どうやら近くにストリップ劇場があるらしいという情報を見つけた。

劇場のWebサイトには「カップル・ご夫婦・女性のグループさんご来場多数」と書かれている。どうやら女性が行ってもいいところのようだ。

私一人で乗り込むか、女友達を誘うか……。迷った挙げ句、前入りして道後温泉近くのゲストハウスに泊まり、一人で劇場に乗り込むことにしたのである。

勇気を出して中に入った劇場。前方にステージがあり、真ん中に向かって花道が張り出し、その先には丸い形をしたサブステージ(これを盆という)がある。丸いステージを取り囲むように椅子が並び、そして後方にも椅子が並んでいる。

中にはすでに数名のお客さんがいた。後ろの方の席に遠慮がちに座っていると、おそらく地元の常連っぽいおじいちゃんが「こっちおいで」と手招きをする。「こっちのほうが見やすいから」と呼ばれて座ったのは、丸いステージにかぶりつきの席だ。

「何が起こるんだろう」と内心ドキドキしながら、いよいよ始まるステージ。踊り子さんは、最初は衣装を着た状態で出てきて、オリジナルのダンスを見せたあと、衣装をチェンジしたり、焦らしたりしながら服を脱いでいく。その後、曲がしっとりしとした感じに変わると、裸やそれに近い状態で、脚を上げたり、身体を反らせたりしてポーズを決めるパートになり、ポーズが上手く決まったときには大きな拍手が沸き起こる。踊り子さんによって、演目は、アイドル風のかわいらしいものから、大人びたものまでさまざまで、服を脱いだあとも、いやらしいというよりただただ美しかった。

踊り子さんがポーズを決めるたび、観客の注目が踊り子さんの身体に集中し、拍手が起こる。まるで花火大会で打ち上げ花火が決まった瞬間と似ていると感じた。

ショーが終わると、その後写真コーナーになり、どうやら有料で写真撮影ができるようだ。写真撮影が終わると、アンコールのようなちょっとしたパフォーマンスがあり、一人あたりの出番が終了するという流れだ。

2人目の踊り子さんの写真コーナーのときは、私も勇気を出して行ってみた。

「わぁ、女の子だ〜♥」

とニコニコと迎え入れてくれて、「どんな感じで撮りますか?」と聞いてくださったので、私はとっさに「じゃあ、ラブラブな感じで……」と言った。するとギュッとハグをして2ショットを撮ってくださった。最初は「女性が行っても迷惑なのでは……」と心配だったが、歓迎してくださってホッとしたとともに素直に嬉しかった。

劇場の雰囲気にも慣れ「ストリップって楽しいな〜」と思いながら鑑賞していると、旅館の浴衣を着た若い男性の団体客が入ってきて、酔っ払った勢いで、「ウェーイ! ウェーイ!」とうるさい声を上げながら調子を崩した手拍子をしている。

「うるさいなあ」と睨みつけ、どうにかならないものかと思っていたら、しっとりした雰囲気のなか、踊り子さんがポーズを決めるときには、すっかりとおとなしくなり、「ほぉぉぉぉ〜」と感嘆の声がもれそうな様子で、真剣に拍手をしていた。踊り子さんの美しさがウェイな観光客をも魅了することに、同じ女性として誇らしい気持ちをもった。

* * *

ストリップ劇場初体験は、自分の中でもいい思い出で、当時撮った写真をときどき見返しては思い出に浸っていた。あの時から4年たち、ご縁があり東京の劇場に足を運ぶようになってからは、すっかりストリップにハマってしまい、いわゆる「スト女(ストリップ好きの女子)」の一人となった。

そんな私は、もう閉館してしまったところも含めて全国22か所のすべての劇場を回り、全国の劇場をイラストと言葉で紹介するZINEをつくるまでのファンとなった。

これらの活動すべてはニュー道後ミュージックから始まった。いつか再訪したいと思いながらも、なかなか実現できずにいた。

そんななか、Twitterで流れてきたのは劇場の悲痛な叫び。新型コロナウイルスの影響で観光客が激減し、劇場のお客さんの入りにも深刻な影響が出ているというのである。

ストリップ劇場は、一度閉館すると風営法の関係で二度と復活することが難しい。

私がストリップ劇場に定期的に脚を運ぶようになってから、年に1館のペースで失われている。

劇場を応援するためのクラウドファンディングが始まった。

ストリップという世界を教えてくれた劇場に恩返しをしたく、劇場存続の火を灯し続けたく、わずかばかりの支援をした。

この火がやがて大きな打ち上げ花火となりますように。


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