ゴルフつれづれ草 近藤経一著 ⑫

45で立派にシングル

 昔から私は考えていた。口に出して言ってもいた―それは70台はおろか、ハーフで30台すら出せなくても、何時、如何なるコースででも45以上をたたかなければ立派なシングル・プレーヤーである、と。

 そして事実、私は70台のスコアなど試合では多分一度も出したことはなく、30台でさえ、そう幾度も出してはいないにもかかわらず、当時としてはハンディキャップの辛い方だった『我孫子』で「6」を保つのに苦労はしなかったのである。

 然し、戦中から戦後にかけて10年以上、ゴルフから離れていた私は、今度始めるに当たって一切コンペティションには出ないという誓いを自分に立てたくらいでハンディキャップだとかスコアというものには、およそ無関心で来たけれども、それでも戦後の人達はいくらか強くなっているのだろうと想像していた・・・。

 所がである。たまたま最近行われた二つのアマチュアの代表的コンペティションのスコアを見て驚いたことには、アマチュアというものは今も昔と同じように弱いものであることを知ったのである。
 そのコンペティションの一つは報知新聞社が行った全国のクラブ・チャンピオンを集めてのものであるが、大事にとっておいた切抜きをなくして、いま手許に確たる資料はないが、私の記憶では50人近い出場者中2ラウンドを150台、つまり70台を出した人は5、6人にすぎず、しかもそれらの人々は殆んどすべて学生の時からゴルフをやっていた者で、その他の中年から始めた連中に至っては大部分が80台も多い方に近く、中には90以上をたたいた人さえ何人かいる・・・が、あれで、恐らく彼等は皆シングルも低い方のハンディを持っているのであろう。それが出る所へ出るとあのざまである。

 もう一つの方は資料が手許にあるから間違いはないが、関東以北のクラブが7つずつ、10のブロックに分かれて、8人ずつの選手(?)を出し、あちこちのコースでプレーしたのであるから、前者よりももっと有力な例記になると思われるが、参加者624人(2クラス欠席のためか)中、飯能でやって『武蔵』が6人(内3人アメリカ人)という大量生産をしているのを入れて、150台で廻っている人は20人を出ず(この方も御多聞に洩れず、その大部分は学生上りのプレーヤーである)、しかも、8人中、上位7人のスコアをとったらしいが、その平均が一人当たり170(1ラウンド85)の所が過半数の34。
 中でも35歳以下の入会を認めない小金井以下、8つのクラブに至っては上位の選手?が実に180(1ラウンド90)以上をたたいている……が、その彼等といえども各自のクラブに帰れば、恐らくシングル・プレーヤーとして、肩で風を切っている連中であろう。

 ところで、何故こんな意地のわるいことを書くかというと、私はこれによって一般のゴルファーに自信と勇気を持ってもらいたいと思うからである―というのは、御覧の通り「シングル」「シングル」なんていっていばっていたって、しょせんアマチュアなどというものはたかの知れたものなのだから、諸君が90たたこうが、100たたこうが、そんなことでくさる必要はない。
 自信を失うこともない、大いに勇気を出して精進してもらいたいと思うからである。
 繰り返して申し上げる。70台なんか鬼に食われてしまえ。常にハーフを40から45の間で廻われば諸君は立派なゴルファー(シングルプレーヤーといってもいい)であるということを忘れないでいただきたい。
 そしてまたそういうゴルファーが、実は一番たのもしいゴルファーだということも知ってほしいのである。

 杉本君の出場停止が、一年を待たずして、中途で解除された―これは始めから予想されたことで(私はすでにそれを予言しておいた)、ただ、何等かの口実か、きっかけがなければ、さすがにプロ協会も面目上それをやることが出来ずに弱っていた所であろう(その理由はここでは触れない)。
・・・そこへ彼がアメリカの巡回トーナメントの予選を通ったということはプロ協会にとって、まことに有難い機会が与えられたといっていいだろう。
 もともと日本では出場停止にした者を、アメリカならかまわないといって送り出したことが間違いで、送り出すなら、むしろあの時点でこの処分を解除すべきだったかと思うが、それにしても杉本が発奮一番、至難な関門を突破したことは立派であり、それによってプロ協会が、いずれは早晩取らなければならなかったこの処置を、さしたる世間の批判も受けずに取り得て当事者諸君はさぞや肩の荷をおろして、ほっとしていることであろう。
 ただ、ここで杉本君に望みたいことは、君がこのアメリカでの成功と、日本での寛大な処置とに甘え、慢心する(どうも君にはそういう心の傾向が強いように思われる)ことなく、厳に己れを持して、ゴルフ一途に専念精進してもらいたいということである。
 今こそ、君が日本の生んだ「世界に通用する」ゴルファーになれるか、なれないかの正念場である。

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