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“寄らば大樹”とは、どんな大樹?

--『“寄らば大樹”鮮明に』

これは、先日のある新聞に踊っていた見出しだ。



記事には来春就職を予定している学生にアンケートした内容が説明されている。



残念というか、やっぱりというか・・・。



記事には、この大不況下、以前よりも業績不振な大企業が増える中、より安定的に思える大企業に人気が集中したとある。



ちなみに、今、世間を騒がしている経営再建中の日航は、その就職人気度で、文系男子が前年の39位から91位、文系女子が19位から41位と大きく順位を落とした、と。


昨年末のデータだから今ならもっと低下するだろう。



まあ、これだけ日航のことが連日報道されると確かに敬遠しようと思う気持ちは理解できないでもない。



しかし、これも結局、メディアが報道する単なる結果だけで判断していることに過ぎない。



少なくとも、昨年まで日航に就職した人たちはこんな酷い状態だとは知る由も無かったのだから・・・。


いつの時代も変らないが、就職活動全体を眺めてみると、やはり、学生は社会の現実をマクロでは見通せていなくて、目の前の情報や変化のみに翻弄されているとつくづく思う。


厚生労働省の調査によると、調査を始めた1996年以降、今春卒業予定の大学生の就職内定率は過去最低になったとある。



昨年12月1日時点で、前年同期よりも7.4ポイント低下し、73.1%だったようだ。



一見こういうデータに触れると、高度成長期が始まって以来、もっとも厳しい時代が到来したようにも思える。



本当にそうなのだろうか?



確かに、厳しくはなっているだろう。



しかし、それは、大きなトレンドで見ると過去にも何度も繰り返されていることでもある。
例えば、自分事だが大学4年生の時、私が就職しようとしたゼネコン業界は
“建設冬の時代”が到来した時だった。


確か他の業界は元気だったと記憶している。


なぜか、ゼネコン業界だけが大不況に見舞われていた。


おかげで、いまの人生があるので、まったく今になっては後悔はしていないが、かくいう私も、その時はなんと不幸なことかと嘆いていたものだ。


今から思えば、自分が学生時代遊び呆けていたことを棚に上げ、あわよくば、大手ゼネコン6社にエスカレータ式に就職できると期待をしていたのだから、自分勝手な話だ。
若気のいたりとはいえ、甘かったと思う。


同級の中でも真面目に勉学に取り組んでいたわずかな優秀組は、例年通り大手ゼネコンに進んだが、私たち落ちこぼれ組は名も知らないような中堅ゼネコンに散っていったのであった。

その結果どうなったか。


私だけではなく、私の友人も多くがそのような道を歩んだのだが、必ずしも、不幸せだったかというとそうではない。
結構、皆、人生満喫しているのである。
逆に高校時代の友人などは、専門分野が定まっていない分、進路はまちまちで、親しかった友人の1人は大手志向で世界でも有名な某M電気メーカーに就職した。
また、変わり者で日航のパイロットになったのもいる。


結果どうなったか。


安定を求めて大企業に行った者、それこそ世界に羽ばたく超優良企業に就職した者。


さまざまだが、今が不幸かどうかはともかく、入社前に求めていたものと今の現実は、相当な乖離が生じているのである。

私が就職した時のような昔ならまだしも、今や、安定など探してもどこにもないのは明白だ。
そもそも、日本全体が厳しい“大しけ”に見舞われ、今にも沈没しそうな状態で、例え一見安定に見えたとしても、それは所詮、蜃気楼に過ぎないのだ。
自立して人生を歩むために、一番大切なことは、時代をあるがままに受け入れることである。

極端にいえば、戦国時代に遭遇すれば、そういう生き方をするしかない。

仮に、好景気を背景に大企業枠が広がったゆえに入社できてそれで幸せだろうか?
例年なら普通に入社できるのだが、採用枠が狭まったために、目当ての会社に入れなかったことが不幸せなのか?

現実はそのどちらでもないのである。


大企業とはいえ、“日本丸”として考えれば、木の葉のようなものだ。
自立して、時代と共に生きていく力を身につけることを先に考え、社会に一歩踏み出す。そして進路を決める。
寄らば大樹などと言われている場合ではないのである。

これからの日本に、昔言われたような大樹など皆無に等しい。
日本人は、もっともっと、パイオニアとして世界を駆け巡らないといけない時代なのである。
日本の中だけで良い業績の会社、悪い業績の会社という判断軸だけで動く時代ではない。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2010年1月27日に投稿したものです。)

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