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若者には世界やアジアの現実を知る時間が必要

このブログ、少々ご無沙汰していたが、学生の就職活動シーズンの到来を迎え、色々と書きたいことも溜まってきた。
当社も来春採用のための会社説明会を先週から開始した。
全般的に例年より学生の就職活動は遅めになっている。
学生たちが落ち着いて、冷静に、社会のことを考える機会になるのであれば、遅くなるほうが良いのだが・・・。
果たして今の学生たちが目指す先に明るい日本は見えているのだろうか。
老婆心ながら、ふと心配になる。


最近、東大をはじめとした有力な大学が秋入学への制度変更に向けて、さまざまな議論を展開している。
この先間違いなく、大学の制度も世界標準に向かうことは、誰の目からも明らかだ。
この変更によるメリットは大きい。
その理由はグローバル人材の輩出などいくつかあるが、私が一番に挙げたいのが、間違いなく就職活動に大きな変革をもたらすことだ。
秋入学になれば自然と秋卒業になる。
今のところ企業は春入社だ。
もちろん制度変更に併せて秋入社となる企業も出てくるだろうが、全部がそうはならないと思う。
通年採用も一般化されるだろうし、若者はアジアや世界で働く時代だ。
これからの日本企業は、あらゆる国から多様な人材採用に一気に向かう。
就職活動のあり方も世界標準に適応するのも自然だ。
慌てて就職活動するよりも、例えば大学を卒業してからじっくりと社会を知り、会社を探す。
日本にもこんな時代が来るだろう。
在学中の狭い情報の範囲だけで、焦燥感に駆られ、就職活動を強いられるような今の制度は消えゆくだろう。
むしろ、私ははやくそうなるように強く期待している。


随分と以前から、学生と話をする機会には、今日本が直面している現実やアジアで起こっていることを伝えてきた。
それと、これからの世の中がどうなるかもあわせて。
今となっては、世間に溢れている情報ばかりだが、いまだに大半の学生は、“そんなことすら知らなかった、青天の霹靂だ”と言わんばかりの表情を浮かべる。


まさか、日本が今も絶好調な国だとは誰も思ってはいまい。
しかし、学生は総じて今の日本が不調だといっても、少し養生すれば治る風邪程度に思っているのだろう。
だが、実態は違う。
日本は重症だ。
放っておいたら大変なことになる。
感覚的には、今の学生は10年前、いやもしかしたら20年以上前の日本の姿を見て、幻想の中で就職活動をしているのだ。
無理もない。
余りにも社会に今起こっている現実を知る機会がないのだから・・・。


私が就職説明会などで常々話すことは、基本的には新聞やどこにでもあるメディアに出ているネタである。
それにアジアでビジネス活動をしている実体験や実感を織り交ぜて伝える。
すでに社会でビジネスしている人たちでも、日本の外を軸に考える人と、日本の中だけを軸にしている人では思考回路のギャップは大きい。
例え、経営者クラスでもそんな感じの人は多い。
仮に、日本の中を基準にしてる人であっても、昔の日本、つまり高度成長期に突入した頃の日本を知っていれば、日本の外の感覚とブレが少なくなる。
今の若者は、“今の日本”と“日本の中の目線”だけで日本の現状を掴むから、起こっている現実とのギャップがますます増大する。


今の日本が世界に誇れる姿は(反省点や問題点も多々あるが)、今アジアなどの新興国で問題視されているような環境問題などを改善してきた点にある。
働くことを考えるときに、実際、どういう人たちが日本の経済活動に関わっているかぐらいは知っておかないといけない。
日本は、第一次産業をはじめ、工場労働者などの職種をアジアや世界の労働力に頼っているという事実を若者は知らない。
世界に誇る日本の自動車ひとつがどういう人たちが関わって製品となっているのかを知らないのだ。
農業従事者の仕事も知らない。
魚を誰が獲っているかも知らない。
着物がどこで誰に作られているかを知らない。
せいぜい、日本の中で見えるのは、コンビニや居酒屋で外国人のアルバイトが増えたくらいなもの。
日本という国の経済活動は、アジアや世界の労働力によって大部分が支えられているのである。


もちろん、資本主義の営みから考えれば、安い人件費を先進国が有効に活用して、お互いが共存共栄できればそれで良い。
しかし、その構図も地球規模で見たら限界に近づいている。


多くの国が先進国を目指しはじめているのだから、安い労働力は不足して当然だ。
こんな現実の中、これからの若者が楽しく充実して働くためには何が必要なのだろうか?
何度考えても、答えはひとつ。
まずは、現実を知る。
これに尽きると思う。
今を知って、アジアや世界を知る。
そのためにまずは、日本の昔をもっと知る必要がある。
日本やアジアの10年先、20年先がどうなるかをイメージする。
ある程度見えてから社会に入る。
つまり、会社に入る。
備えあれば憂いなしなのである。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2012年3月26 日に投稿したものです。)

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