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#15 人馬一体の境地!


馬の勉強のために本を探した

乗馬を始めたばかりの頃、級検定のためのテキストである「レッツエンジョイライディング ウェスタン乗馬」を購入した。

馬の種類、性質や取り扱い、馬具や馬装について、さらに馬の病気、ウエスタン乗馬の競技などについての網羅的な解説書で、筆記試験はこのテキストの範囲から出されることになっている。
簡潔な説明なので、暗記はしやすいのだが、内容を深く理解しようとすると少し物足りない。


ネットで検索したりして、乗馬関係の入門書を探してみた。

購入したのが、このnoteでも記事を執筆されている、三木田輝明氏による本

『馬を楽しむ乗馬術 人と馬が一体となる「馬楽」のすすめ』

という本だ。
音を楽しむ音楽になぞらえて
馬を楽しむ「馬楽ばがく※」を勧めている。

※著者の三木田さんの造語で「ばがく」と読むそうだ。

乗馬を経験している方の悩みに回答する形式でいろいろ知識を教えてくださる実用本でありながら、「馬に乗ることそのものを楽しみませんか?」という乗馬の根幹に関わる哲学を教えてくれる本だ。

馬術部に所属する学生さんからの悩みに対する回答が個別的なアドバイスの形式で書いてある。このような技能的な指導も多いのだが、この本を貫いているのは、「競技のための鍛錬や練習の積み重ねも大事だけど、もっと馬に乗るということを楽しみながらやりませんか」という主張だと感じた。


「人馬一体」とはいったい何?

この本に出てきた言葉で「人馬一体」という言葉がある。
乗馬関係者の間では、乗馬の理想形を表現する一般名詞なのだろうか。
よくわからないけど乗馬初心者(というか馬装もまともにできない素人)の自分には、とても魅力のあるキラキラした言葉に思えた。

だが、初心者のうちは馬場で練習をしていても、外乗していても、自分が馬を制御しているという自信は全く生まれなかった。
いつまでも「お馬さんに乗せられているお客さん」の感じから脱却できないでいたのだ。

八ヶ岳へ

そんな状況の時期に、山梨県北杜市にある
カナディアンキャンプ八ヶ岳へ外乗に出かける機会があった。

カナディアンキャンプ九州と同じ系列の乗馬クラブである。しかし行き慣れていないクラブだったので、気分的にはよそのクラブにお邪魔するような感覚だった。

晩秋のその日
予約時間帯にはたまたま、他の外乗の予約が無かったのでガイドさんと1対1の外乗になった。

たぶんこの時のガイドさんは、
このお客がどのレベルの技術を持っているのかを測りながら、外乗をスタートしたのだと思う。そして、「まあ、ある程度にはコントロールできている」と思ったのだろう。

比較的広い道で駈歩を出させてくれた。
そして駈歩の発進と維持には問題がないレベルだと判断してくれたようだった。

試練の坂道


外乗が進み、長い登り坂の細い道の下に来た。

「ここから、長い登り坂になります。途中で一度止まりますが、ここを駈歩で上がりましょう。いけそうですか?」と聞かれた。

九州の宗像では、比較的平坦なコースが多く、農道で長い駈歩を出した経験はあったが、今日のコースは細い山道を馬で登るようなコースで、傾斜も急だった。
しかも、その登りの道は人の頭ぐらいの大きさの石がゴロゴロと露出している。もし馬が石に乗り上げて滑ったら転ぶ可能性もありそうな荒れた道だ。
正直なところ、ここを駈歩で登るのかと思うと、少し怖い感じがあったが、この客なら大丈夫そうだと思ってもらえたことが嬉しかった。

「はい。お願いします」と答えていた

ガイドさんは
「馬の頭が下がりすぎないように、手綱は短く持って、頭を引き上げるようにしましょう。じゃあ行きます」と言い、馬をスタートさせた。

自分が乗っている馬も、先行馬の気配に合わせてスタートする。

ガイド馬はかなりのスピードで走っていく。
自分の馬も遅れないようにスピードを上げて駈歩で付いていく。

ドクンドクン
アドレナリン全開だ。
心臓が反応してきてる。

登り坂の馬の走りを邪魔しないように
前傾してバランスをとる。

馬は凸凹の細い坂道をぐんぐん登っていく。

カーブでは多少のコース修正はしたが、もう馬の足元を見ていちいちコースを修正する余裕はない。

滑ったら馬ごと倒れる。
だが、馬はしっかりと岩を避けながら
ぐんぐん走り続けてくれている。


登り坂なのに、なんて速さの駈歩だ!
速度は落ちない。
馬はすごいな!
そんなことを考えながら夢中で乗っていた。

その時だ。

自分の中に不思議な感覚が生まれた


馬を制御しているのではなく
馬の走りを邪魔をしないように
ひたすらバランスをとるだけの自分

馬の反撞に逆らわず
馬が動きやすいように動きに合わせて
ただ馬の上に居る

そんな存在の自分

時間が止まった感覚
音は聞こえるのに
まるですべてが静まり返ったように感じる
景色がスローモーションで動いてる

その時エンドルフィンが湧き上がってきた
なんだこれ?
最高の気分!

「これが人馬一体なのか?」

馬を信じてスピードは馬に任せる
コースどりも最小限に
馬の走りを信じて馬に身を任せる

この時、駈歩の速度に対する恐怖感は消え去っていた。
馬の息遣いと、躍動する馬の動き以外は自分の意識から消えていった。

長い登りの駈歩がゴールに到達した時
息を荒くしている馬と
息が切れてゼーゼーしている自分がいた。

無事に駆け上がってくれた愛おしさに
馬の首を何度も叩いて褒めた。

 

🏇
上手く表現できていないかもしれないが、
自分の拙い経験の中で、
初めて
「馬と一体になれた!」と感じた出来事だ。

もっと、経験を積んだライダーからみたら、
こんな程度では人馬一体ではないよと
言われてしまうかもしれない。

だが、自分の中では、
これが「人馬一体」の境地であるし、
これを体験するために馬に乗っているのだと思えた。

馬を信じ
馬の動きに追従し
馬を邪魔しない

そして馬の気持ちを感じることができたら
レッスンであれ、練習であれ、外乗でも
馬を楽しむことができるような気がする

つづく

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最後まで読んでいただき感謝🥲です。
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