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生い立ち③

3回目は ~父との記憶です


私が小学校の3、4年生だったころの
夏休み中の話になります


父の実家の近くには
そこそこ大きくて きれいな川がありました

その川でよく父と祖父が川魚を釣りに行くのが
夏休み中の毎年恒例行事のようになっていて
私も浅瀬で川あそびをするのを
とても楽しみにしていました

独りで誰とも話さずに
もくもくと小石を積み上げたり
川のせせらぎか気持ちよくて
すっごく楽しかったですね

田舎なので誰とも会わず
大自然をひとりじめにできました

わたしはそのせいか
海よりも川のほうが好きだと
いまでも感じるくらいです


川遊びをしているそばは
魚が逃げてしまうからと

父や祖父は私とは離れ
それぞれ別のポイントに行き
釣りをしていました

私は遠くから二人の様子を交互に見ては

(まだ釣ってるー)と確認したり

自分だけ車に戻ってジュースを飲んだり
自由にしており

私の方が飽きるほど二人は釣りが大好きで
夢中でした



ふと、

おじいちゃんを見ると
釣り竿の先端が引っ張られて川下の方へ

トントントンと

歩いているように見えました

なんだろうと目で追っていると
あれよあれよとそのまま
川の流れに足を取られるようにして
水中へと
姿を消してしまったんです!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

じーっと見ていた私は一瞬何が起きたのか
分かりませんでした


しかしすぐに これは大変だ!!と気づき
父に知らせなければと動きました

大きな川石に足を取られながら
必死で父が釣っているポイントへと
向かったんです

そこで大きな声で叫びました

パパー!!

一瞬こちらを向いてまた直る

父は釣りを途中でやめたくないので
こちらに来てくれない

結構な深さのあるポイントに
胴長を履いて立っていましたので
私が父の間近までは
行けそうもありませんでした

(え?来てくれないの?
 おじいちゃん どうしよう 
 間違いだったかもしれない
 戻ってみよう)

そして戻るのですが
やっぱりおじいちゃんの姿はなく
流されたと確認する

もう一度父のところへ行く

「パパー!おじいちゃん!」

「おじいちゃんがいなくなった!」

おじいちゃん と言ったことで
おじいちゃんがどうかしたのかと
やっと父がこちらに来てくれました

近くに来たところで
私はおじいちゃんが川の中に
入って行っちゃったと説明し
流されたと分かった父は
血相を変えて急ぎ出し

「なんでもっと早く言わないの!」

と私に一言 言いました

(いや、言ったよ、呼んだじゃない!)と
心の中で必死に訴えようとする


でこぼこ道を大急ぎで

砂埃をあげて車が走る


帰宅すると
実家にいた従兄弟のお兄さんたちが
一緒にもう一度現場に行って
泳げるお兄さん達は消防の人達が来る前に
潜って探していました

流れがきつくて行けない 見えない
と言っていたのを覚えています


それから、、、

父の実家は 盆地なので
夏はもの凄く暑いところです

ギラギラとした太陽が照り付けて
蝉がやかましいほどに鳴くなか

スニーカーを履いたまま川に入り
ずぶ濡れになった靴が
あっという間に
カラッカラに乾くほどだったのですが


何というか
いとも簡単にそうなったという事実に
強烈にひきつけられてしまい

私は それをじっと見つめていました

おじいちゃんのこと=ショックな出来事
が起こっているのに
スニーカーに目を取られる自分

スニーカーを見ることで
ショックを紛らわしたかったのか

なんだかおかしいような
半笑いみたいな自分がそこにいて、、、


子供ながらになんかちょっと
変な感じだなと思ってました

笑って誤魔化す 逃げたい
ということなのか


私って なんかそういう所あるんですが

ショックなことがあると
ダメなところで笑いたくなったり
空気読まずに
あえてへらへらしたくなる


闇に引きずられたくないんですよね



祖父が発見されるまで
実家と川と慌ただしく何度か行き来しました

最後に目撃したのは私だからと
警察の人に話を聞かれたりしました

一旦 家に戻った時には

祖母が 「もう死んだ」と言って
祖父の布団などを用意(片付け?)
し始めており、

誰かが「おばあちゃんなんでそんなこと
するの、まだわからないでしょ!」
と言ってたりしたこと

父の代わりにわたしが事情を話そうと
自宅のほうに電話をいれると
あいにく母不在で
姉が電話口に出たのですが

相変わらずの対応の冷たさで
物凄いショックだったこと

(は?だからどうした?どうしろって?)

みたいな感じだったんですよ!!
泣くわたし、、、
本当に姉のことは信じられませんでした!!




祖父は見つかりました

父は泣きながら

「おじいちゃんごめんなーごめんなー」

と言っていました

翌日には頭を坊主に刈っていて
母も翌日駆けつけてくれました


その後の
お通夜、お葬式などは全く覚えていません
母が来て安心したのもあると思います



その日 その時の

強烈な日差しと蝉の声

川の流れる音

おじいちゃんが消える瞬間

大きな川辺の石や

父の顔色が一瞬にして変わった様子

カラッカラに乾いたスニーカー

楽しかった一人の川遊びが

モノトーンになった感じ

昨日のことのように覚えています



父との記憶といって

まずはこの事をという想いがあり
書かせていただきました



父は現在も元気です

百歳まで長生きしてほしいと思います

母にできなかった孝行をさせてください

どうか私にその機会をお与えください

どうぞ元気で一日でも永く

健康でいてください



お読みくださりありがとうございました



次回は生い立ち④ 〜思春期、15歳のころ〜

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