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季節をたべる

「これ、いま食べる?持って帰ってもどちらでもいいよ。」

ビックリした。
そして、
「えっと、いま食べます!ありがとうございます!」
と答えた。

前日の夜、知り合いのごはん屋さんのInstagramの投稿を見ながら

"明日買いに行こっかな。"

と思っていた よもぎだいふく が、ラップに包まって私の左手に乗っていた。


職場ではときどきこんな感じのことがある。

それは、シフォンケーキのこともあったし、
スコーンやわらび餅だったり、
天然酵母のパンや山菜おこわとかもあった。

わが家のお餅好きな娘が一時期学校に通わなくなっていた頃は不思議なくらいに(娘のお餅好きは言ってなかったのにな。)バリエーション豊かなつきたてお餅の差し入れが多かった。

それらは全部、職場のユカさんの手づくりだ。


職場の立ち上げメンバーである60代のユカさんは、職場の誰よりも仕事に厳しくていつも細部にまで目が行き届いてる。

"安心、安全、おいしさ"
に対しては妥協しないぞ!の姿勢があまりにも潔くて。

ちょっと極端じゃないかな…と思う時があっても結局ユカさんのリーダーシップについていきたくなってしまう。(単純に私が子分氣質なだけか?)

職場で作るお弁当は、出来上がったおかずを必ずユカさんに味見をしてもらいOKが出てからじゃないとお弁当に詰められない。
(ユカさんが作ったものも、他の人に味見してもらってOKが出たらお弁当に詰めていく。)

味の調整だったり、焼き色だったり、
「うーん。今日のほうれん草、ちょっと茹ですぎたんじゃない?色がいまいちだよ。」
とか(これは2日前に言われたばかり…)。

そこから、どうやったら良くなるかな、までを一緒に考えてくれたり指示をしてくれるのがユカさんの優しいところだなと思う。
(でも、そこからめちゃ急いでやらないといけないからバタバタ😂 ちなみにほうれん草の色に関して私のできる事は「次は氣をつけます!」しかなかった…🙏)

妥協なく言ってもらえるのはもちろんありがたい中で(何せ言われないとずっと氣付かないタイプ)たまに、

「あ!すっごくおいしいね!」

とか言われるとすごく嬉しい。

わたしは単純な人だ。

「私とmiyaちゃんは結構味覚が似てると思う。」

と言われたのも嬉しかった。

カッチリとしたレシピがあまり無いのがうちの職場の面白いところであり、
不思議なところで。
最初はすごく困ったところなんだけど(今も。)🫨

"暑い日だからちょっとさっぱり目の味付けにする"とか、
"新玉ねぎだから甘みとシャキシャキ感のこしたかんじがいいかな"…とか。
ほんと、家で作ってるみたいだなと思う。

そして、定期的に思う。

"あー、お母さんと一緒に料理したかったなぁ。"
って思ってた小さい頃の私の願いが消化されていくようだな…みたいな事を。

実家の母に電話をする時には、メインは子どもたちの近況のおもしろ話だけど、
職場の話も聞いてほしくなってペラペラと喋ってしまう。

認知機能がだいぶ低下しているから母とはその時だけのやり取りになるけれど、毎回結構2人で盛り上がる。

「私が小さい頃はさ、お母さんこんなの作ってくれてたよね。」

「えー!そんなのもしてたかな?作った本人も忘れてるのにあんたよく覚えてるねぇ…。
あら、でもそうやね、、そう言われてみればつくってたわぁ。
今じゃ手間がかかるのをさっぱりやらなくなっちゃったけど、あの頃は色々やってたねー。
美味しいのもそうじゃないのもあったけど🤭
楽しかったよね。」

会話を続けていると"食" に詳しい昔からの母らしさが感じられる。
楽しいし、じわっとうれしい感覚が広がってくる。

今年は春の"蕗"が高値だったからあまり職場で扱う機会がなくて残念だった。

旬の時期に蕗を大量に皮剥きしていると、台所で母と一緒に手を黒くしながらやってた事を思い出す。

毎年思い出すんだから、小さいわたしはとても楽しかったんだろうな。

家の中の色んな変化で、お母さんと一緒に台所で食事のことをする時間はパタリと途切れた。

そんなこと、大したことじゃない
って さびしく思う氣持ちに名前をつけないように見ないようにしていたけれど。

実際にそれからの私の生活にそんなに支障があったわけではないし、短大で栄養学の授業で調理をしてもどちらかと言えばスムーズにできる方だったし楽しいと感じられるくらいには余裕があった。
ひとり暮らしでの自炊も不便は無かったし、友だちを呼んで作ったご飯を食べてもらう事も全く苦にならなかった。

小さな頃の台所での時間は、私をそのくらいには育ててくれていたんだと思う。

本当は充分だったのかもしれない。

さびしい と名前をつけたのはちょっと求めすぎな私の欲だったのかもしれないな。

埋まってくると、ちょっと余裕が出てくる。
自分のことがちょっと客観的に見えてくる氣がする。
お母さんの楽しそうにしてた台所の風景が浮かんでくる。

この記事を途中まで書いていたのが4月の中旬。
だいぶ時期がずれました😂

冷蔵庫の横にある赤紫蘇の束。
せっかく買ってきたのにボールの水に付けたまま💦
今日は出来なかったけど、明日はきっと紫蘇ジュースにしよう🌻
林檎酢と、氷砂糖と…。
去年は作らなかったけど、子どもたちはまだおいしいって飲んでくれるかなぁ〜。


☆yuraneさんのお写真をお借りしました。
綺麗なお写真ありがとうございます。
よもぎ餅をいつか作ってみたい…。

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